第113話 建築士

「じゃあ皆さんこちらに並んでお待ちくださいね、文字のわかる方は先に記入できるところをお願いします。」


 笑顔で住民達と接するララ。うん、流石は次期看板嬢候補、手際もしっかりしており頼もしい。


 ガンッ


 かと思えば俺には面談前に湯呑にお水を用意してくれるのはいいがご立腹なのは明白だった。うん、しばらくは大人しくしているか。


 面談は俺とメイスとララで取り仕切りラディッツオとエレイシアにアイテムボックスから出した盗賊達を任せてアジトの物資や地理などを整理させる。


 ユキには悪いが北区で物見を任せる。スピードがあるし危機管理もプロだしな、無理しない分信頼して任せやすい。

 ステータス的にも「暗殺者」は「斥候」や「盗賊」と近くこのままそういったジョブスキルを任せて特殊工作員スペシャリストに育てるのもロマンがあるな。


 本人はいつものように文句タラタラだったが。

 まあ気持ちはわかる。物見はそれはそれで大変な仕事だからな、テントで面談やってる俺達が羨ましいのだろうと聞いてみると


「私も盗賊達コキ使う側がいいっ!」


 というドSな主張だった。

 うん、オジさんこの娘の将来が不安だよ、、


 さて仕切り直して面談を始める。


―『流浪の民』。老若男女総勢32名、皆様々な理由で街を出てここで共同生活をしていた。

 一端を見ていこう。


①商人のケース

 ライバルとの競合に敗れ借金が嵩み一発当てる覚悟で大荷物を背負って王都へ行商に出立するが道中に盗賊に合いここでコキ使われていた。

 荷物の中には貴族相手への約束の品もあり逃げ出しても街へ入れないだろうと大人しく従っていたらしい。ジョブレベルは3で目利き系のスキルは所持している。

 王都が騒がしい内は無理だが物資で困った場合ララの領地へ行商に出させるのはアリだな。


➁賭博師のケース

 王都内で違法賭博のうえ、イカサマが発覚して密告され捕縛。あえなく追放の処分を受けた。

 ジョブスキルとしてはダンジョンのボスドロップや宝箱のレアアイテム率upとクリティカル判定にもう一度クリティカル判定が加わるWクリティカルいう使えるジョブスキルがある。

 働き手としては微妙だがスキルは貰っておこう。


③書記のケース

 俺と同じジョブだがどうやら前述の賭博師に誑かされ賭博に手を出し借金を作りそれを横領で誤魔化す重罪を犯し捕まる直前に自ら夜逃げしたらしい。

 もう15年も前の話で今はもうそんな気力はなさそうだが内務を任せていくかどうかは様子見だな。


④盗賊のケース

 盗賊といっても盗賊団に属しておらず見た目お婆さんのヨボヨボでずっと昔に足を洗っているらしい。

 本人申告では何十年も前に王都を騒がせた女怪盗義賊で貴族の私腹を市民にバラまいていたとか。

 メイスに聞くと確かにそんな噂があったというし「人物鑑定」をしても何と盗賊団の奴らより高いジョブレベル6まであり今はステータス的に使用ができないらしいが「英雄譚作成」で再現してスキルはいただいておこう。


⑤建築士のケース

 うおぉ、だっ。しかもジョブレベル4の40歳でまだ働き盛り。4といえば早い人間なら独立が見えるクラスだぞ。

 何で真っ当なジョブでここまで頑張って追放なんかされてるのか軽く聞くと、


 「へへ、酒がやめられなくなっちまって。」


 なんてしょーもない理由を教えてくれた。異世界来てまでそんなリアルなダメ人間な理由でホームレスになる奴がいるなんて知りたくなかったよ、、


 当然追放されてからは強制禁酒になり立ち直っているらしいので復興の第一人者になって貰おう。

 普段の食い物すら怪しく人足がない間は当然仕事をしていなかったがこれからは盗賊達に監視をつけて手足にして働かせるか。


 『建築士』は通常スキルではなくジョブなだけあって鍛冶師や錬金術士の工房作成などもあり街の重要施設の建造が可能だ。ジョブスキルなので当然通常の建築より圧倒的に早く作れるので今後が一気に明るくなったな。

 幸い俺の街の棟梁は豪放な人でギルドの改修工事の際にジョブスキルの5と6は直接目にして見積もりの際にも話はしていたので条件はクリアしている。 

 強化して早々に俺達の家も中央区の宿などを改修して用意してもらおう。

 

 他にも戦闘職こそいないが使える支援職などの話を聞き今後の仕事を割り振っていった。

 実働年齢の人間は27名ほどだったがいる人間達で何とかしていくしかない。

 遠回りしているようだがレベルやスキルだけでなく装備、アイテム、作戦、食料物資などあらゆる面で完璧にしなければ「森」と「ダンジョン」の完全攻略には届かないだろう。

 周辺の他の「流浪の民」の情報を集め、吸収や王都とララの領地の現状の情報収集などもやっていければより明確に討伐までのスケジュールを組んでいける。


 今回レベルが上がったこともあり拠点防衛や周りの魔物を積極的にパーティーで狩っていくことで成長と生活を成立させていきたい。


 ゆっくりだが俺達は目的に向けて歩み出した。



――――――――――――――――――――――――――――――――


 実録異世界ホームレス転落記いかがだったでしょうか?

 こういうのは妄想が捗りまよすね。

 当然住民全員の設定はしておりませんので皆様もこんなジョブの人間がこんな風に道を踏み外して街を追われたんだなーなんて考えて貰えると楽しいかもしれません。


 よいアイディアがあれば是非応援コメントで教えてください。(_ _;)


 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る