第114話 実りの秋
忙しさに追われ気付けばこの街リードライトに到着してから三ヶ月が過ぎようとしていた。
季節は秋、暑さも和らぎ夜は肌寒くなってきた時期だ。気候としてはこの街は前世でいうと東北でも比較的雪が少ない仙台あたりかな、この街のさらに北の森も当然雪が降るという。
俺がずっと住んでいた街は南に砂漠もあるし雪など降ったことはなかった。
距離的に地球の地形で考えれば気候が変わり過ぎではあるのだがそこは異世界なので深く考えてもわかるわけでもないしやめておこう。
この3ヶ月、急ピッチで必要な建造物を立て直していき、ようやく目処が立ってきた。
木造よりも石造りが多い街だったので廃墟の資材を再利用できたのは大きかった。
重労働ではあったが高ステータスのラディッツオを筆頭に盗賊達にも労役を課し、また「建築士」のジョブスキルも後2人ほど住民にスキルブックで用意して俺達の住む旅館を改装した家も中々に豪華なものとなっていた。
信用ならなかった盗賊達もゴロツキとは単純なもので見た目からも迫力があり実力も十分のラディッツオにケツを蹴られながら仕事をしていると元頭領を差し置いて『ラディッツオの兄貴!』と慕いだして随分と扱いやすくなっていた。
ちなみに俺はいまだに舐められている。お前ら俺に負けたじゃねえかよ、、やはりチンピラ的には雰囲気が大事らしい。
まあ盗賊といってもこの廃墟で根城にしていてもカモなどそうそう現れず住民達を働かせるといっても多少の作物をやらせる程度でいい生活は送れていなかったようだ。
建物も良くし食料も提供してキマイラを起こさないようにコソコソと生活しなくていいというだけで随分と生活水準が上がり労役にも積極的になっていた。
そうなってからは個別に面談をして本人の意思によって証文への契約が済むと目を離しても危険がなくなり俺達も動きやすくなっていった。
もちろん全員とはいかず元頭領は反抗的な態度を崩してはいないのでこれが続けば本格的に動き出す前には処刑も視野に入れておこう。
この間、結局森からの魔物は現れなかった。
メイスに聞くと学者の論では森の魔物は春に縄張り争いが起こり外に逃げ出す魔物が出没するが夏を過ぎると安定し秋に栄養を蓄え冬に眠りにつく魔物が多いそうだ。
強い魔物ほどよく眠る、いやよく眠り長生きするから強い魔物になるのか。Sランクの魔物などは住処にとどまり侵入されない限り年中寝ているんだとか。
例外なのは35年前のその夜だけだ。
あの日いったい何が起こったのか、魔法陣の結界の綻びとの関係は?
謎は深く陰謀論じゃないがどことなく作為的な何かを感じてしまうが今の俺達が思案していても何も始まらない、できることは行動あるのみ。
森の魔物の襲撃でなければ今の俺たちなら既に問題はない。
近くを通った数体のワイバーンをこちらから狩ったり東の山へいきボアを狩ったりと魔物で食料を確保していった。
「解体」をスキルブックで教えた住民と既に覚えている俺とで魔獣をバラし料理もlvが高い俺が手伝うハメになっていた。いや俺他にもやることいっぱいで忙しいんですけどっ。
そして今日、別の食料の収穫の日だ。
実りの秋、ここに来る前に王都で種芋など複数用意していたものがこの3ヶ月で形となっていた。
随分と早い収穫だがそれもジョブ「農夫」のおかけだ。メジャーなジョブで当然のように流浪の民にも紛れていた。
農奴として虐待と過重労働を強いられ、ついに耐えかねて脱走したのだそうだ。
可哀想に、、ここではホワイトにその力を発揮してもらった。
城壁が壊れ放置されたもののこの世界の北方は土壌も気候も良く作物栽培に適している。
ハーブも栽培したので肉も穀物も皆の栄養と気力になってくれるだろう。
本格的な冬の前にまずは一つ二つ準備が整った。
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