第115話 冬の前に
収穫した農作物中心で今夜の炊き出しを用意する。このリードライトのさらに北東の山には岩塩地帯があり元はこの街の特産品だったとメイスが教えてくれたのでボア狩りと一緒に採取しておいた。
その岩塩ベースに野菜と肉を加え料理lv6の俺が味を整え皆に配ってまわる。
「こんな単純な料理でもこれだけ味わい深いのはスキルのおかげかな、最近夜は冷えてきたので老骨には助かるよ。」
「老骨だなんて、、まだまだこれからでしょう。力をつけておいてください。」
感慨に浸りながらメイスが感想を漏らす。メイスは幼少の頃しかこの街に住んでいないという、この街で獲れた作物と特産品の塩での味付けが望郷の念を呼び起こしたかどうかはわからないが俺が気軽に触れていいことではないだろう。
「美味しいけど大して娯楽のない場所なんだからタナカさんの料理スキルlv10まで優先で上げちゃってよ。」
ユキが図々しくも福利厚生に文句をいってきた。
あのなぁ、優先で作らなきゃいけないスキルブックなんてそれこそ書き出したら無限にあるわ。
それに俺だけカンストさせたらみんなの舌肥えちゃって料理全部俺が作るハメになるだろうが、、。
こういう要望にすべて答えるところから社畜のブラック労働は始まるのだ。
「そういうな、女性陣の要望に沿って大きい浴場も作ったじゃないか。王都の銭湯と比べても遜色ない出来だぞ。」
復興のための重労働も多く衛生面にも気を使って男女それぞれ大浴場も作ってもらった。
水と火は俺とメイスの他にもパーティーメンバーに魔法使いのジョブレベル2のスキルブックを読んでもらって人手を増やした。
魔法使いのジョブレベル2で覚える範囲炎魔法は強い個体の魔物に効果的かはともかく最終的に森を焼き払うことも視野に入れて取得しておくのも悪くないからな、まだそうすると決まっているわけではないが。
さてせっかくの収穫の夜の食事だ、アイテムボックスに秘蔵していた俺のお酒を出したいところだがどうするか。
皆に振る舞うほどの量はないし建築士のおっさんや酒癖悪いララに飲ませてもな、、みんなには悪いが部屋に戻ってからチビリとやるか。
それくらいの贅沢は許されるほどこの3ヶ月は働いてきたぞ。
住民達に炊き出しを配ると次は元盗賊達にも分け与える。労役を課してるので食事も当然出すが順番は大事。
「姉御ー!俺にももっとくれよーっ。」
「私のことを姉御と呼ぶなっ、馬鹿どもがっ。」
エレイシアが配給作業をしていたが何故だが最近はエレイシアも姉御と呼ばれ慕われている。あいつら俺が仕事指示してもメンチ切ってくるのに何故だ、、。
「あっ、ラディッツオ。明日の朝も稽古頼めるか?」
「ああ、いいぜ。朝から美人に付き合えるのは悪くないからな。」
通りかかったラディッツオに話しかけるエレイシア。盗賊達は二人に任せていたが最近は従順になってきたこともあり時間があるときは二人で戦闘の稽古をしているようだ。
「フフッ、あの2人お似合いだと思いません?」
俺の分の食事を持ってきながらララが話しかけてきた。この3ヶ月でこの2人がいい雰囲気になったのは鈍感な俺でもわかる。
あのときは一撃加えたとはいえエレイシアはラディッツオのことを戦士として尊敬しているのはわかるしラディッツオもエレイシアのことは気に入っていたみたいだしな。
しかし俺のときはあんなに怒ったのにラディッツオだといいのかよ、確かに同い年とはいえ向こうのほうがワイルドで老いを感じさせないいい男だと思うけど何だか不貞腐れた気分になるなー。
さて配給が終わりパーティーメンバー全員が揃ったところで気を取り直して話を切り出す。
「今日の収穫でもって最低限の生活のための準備から次の段階へ移行します。」
ここから冬を越す準備もあるがそれは住民達に任せ俺達は本来の目的に向けて行動していかねばならない。
必要な建物やスキルもここまでコツコツと準備してきたのだ。ということでまずは宣言する。
「じゃあラディッツオ、お前明日から『鍛冶師』ね。」
「ハアアッッ!!??」
若い娘とイチャコラしてんじゃねーぞっという嫉妬はさておき俺達は冬を前にしてさらなる力を求めて動き出す。
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