第112話 人物鑑定

 街の中央区まで戻ってきたがその日は流石に皆疲弊しており、また残っていた廃屋も住める様子ではなかったのでいつものテントを出し早めに休むこととなった。


「こんな街のど真ん中にきてまでテントって何だか変なカンジねー。」

 ユキの不平不満はいったん聞かなかったことにしよう。


 東区に住んでいた住民の代表とも少し話したが詳しくは明日ということで取り敢えずは落ち着いてもらい事なきを得た。

 盗賊達はもう面倒なので分けてアイテムボックスの中に突っ込んでおいた。いつまでもこうだと困るが雑に扱われるのは自業自得だ。

 軽い食事を摂った後は疲れてすぐにでも休みたいがその前に恒例の「スキルブック作成」なんだがここで事件が起こった。


 今回のレベルアップで遂にジョブレベル7のスキルが開放されたのだ。

 つまり俺はこの世界にきて20年目にしてファンタジーの醍醐味であるを手に入れられるということだっ!


 くー、自分で思ってた以上の感動が込み上げる。 

 そう何を隠そう俺はいわゆるドラゴ○ボール世代という奴で○戦士のように空を飛ぶことに小学生の頃から憧れがあったのだ。

 男っていくつになってもこういうとこあるよな。


「タナカさん何一人でニヤニヤしちゃってるの、キモチワルッ。」


 またしてもユキの言葉を無視する、今は気分がいいので見逃すがそのうち本気で教育が必要だな。


 ということで俺は迷わずジョブ「占い師」のジョブレベル1のスキル「人物鑑定」を作成するのだった。うん、いや優先順位ってあるからさっ。


 翌朝、東区に住む街を追われた者達「流浪の民」と本格的に接触する。

 厳しい生活だったのだろう、老若男女様々だが皆一様に痩せ細り覇気がなかった。


「皆さん、お騒がせして申し訳ない。私達は北にある『森』と『ダンジョン』に挑もうという冒険者パーティーです。勝手ながらその本格攻略にあたりここを本拠地にしたいと考えています。

 後からは来た新参者ですがこの街の実質の支配者であなた達を脅かしていた盗賊達と魔獣キマイラは私達が討伐させて貰いました。

 食料も持ってきましたのでまずは分け合って元気をつけてください。その見返りとしてはなんですが我々の拠点作りに協力していただけませんか。」

 

 この街リードライトの領主の血筋であるメイスの名前を持ち出すより現実的なメリットを掲示したほうが話が進むと考え俺が交渉に当たる。

 この提案に住民は涙を流し喜び食料を口にした。

 ただキマイラがいなくなり他の魔物の脅威を口にする者も当然いた。


「その点はご安心ください、こちらにいる偉丈夫はSランク冒険者のラディッツオです。捕らえた盗賊達もしばらくは彼の監視下に置きあなた達にしでかした報いの労役を課します。

 魔物がきても彼を中心にキマイラ同様討伐いたしますので心配ありません。」


 そこはラディッツオのブランドを最大限に発揮して鎮めていこう。


「おいおい、そのキマイラ戦でヘマしたのはお―」


 ゴチャゴチャ言うラディッツオはメイスが後ろから抑えつける。

 全くわかっちゃいねーなラディッツオは、そういう話じゃないんだよっ。内務は任せられないので盗賊達の刑務官として働いてもらうとする。


 さて分け与えた食事の場の説明会は終わり仕事の割り振りに入る。30名ほどの空腹達に食わせたのでアイテムボックスに入れてきた食料も7割を切ってしまった。これからはキビキビ働いて貰おう。


 ここで昨夜取得した「人物鑑定」が生きてくる。

 もちろん住民の代表と全員のサインでもっていつもの「契約書」は用意するが中にはジョブが理由で追放された人間もいるだろうにズカズカと聞きまわっても信頼関係は築けない。

 ユキの自白剤ももっての他ということで王都にいる間に条件だけはクリアしておいた「人物鑑定」を作成したのだ。


 敵を探るのに一見有効そうだが鑑定をするには相手の手相を見なければならず王都では他のスキルの余裕もなかったのでスルーしていたがここで復興を目指すならレベルやステータスも含めて知っておきたいからな。

 

「よし、じゃあ一人ずつ面談するからララはその手伝い頼めるかって、、まだ怒ってるのか?そろそろ機嫌を直してもらえると助かるのですが。」


「怒られることしたタナカさんが悪いんですっ!」


 受付嬢だったララにアシスタントを頼みたいのだが昨夜からこの調子だ。昨夜テントで作った「人物鑑定」のスキルブックを見てララが


「『スキルブック作成』って軽い説明と使用しているのを見なければいけないんですよね?

 タナカさん占いとか興味あったんですか?」


 と興味本位で聞いてくるので、


「いや、興味とかじゃなく今後必要になることを考えて王都の広場近くの占い師の店に行ってね。

 俺のスキルを見せたら大変なことになるからエレイシアに協力してもらって『変装』してカップルっぽくお店に入ってエレイシアだけ占ってもらったんだよって、、ララ、どうした?」


 話を聞いているうちにみるみる不機嫌になりしまいには


「エレイシアっ、話があります!」


 と外へ連れ出し二人で何やら話し出していた。

 その後戻るとすっかり萎縮したエレイシアを放置し俺に向かって


「タナカさんもエレイシアは初心なんですからあまり勘違いするようなことしないでくださいねっ。」


 と怒られてしまったのだ。まあ2人は姉妹のような関係だし俺が誑かすんじゃないかと心配するのはわかるが何だか傷つくなー。

 仕方ないじゃないか、まさか壊れスキルの俺や「暗殺者」のユキが鑑定されるわけにもいかないだろうに。


 おまけにユキにも


「タナカさん、モテない時期長かったからっていくらなんでも女心わかってなさすぎでしょ。」


 となじられる始末だ。

はぁ、こんなに頑張っているのに報われないなー、社畜とはどうしていつもこうなんだろう。


 つべこべ言っていても仕方ない。社畜らしく仕事をするとしますか。



――――――――――――――――――――――――――――――


気がつけば鈍感系主人公なんて若者にしか許されないキャラになってしまったタナカさん。

 

おじさんでそれは痛いよ、、とは思いつつもこのまま続行したいと思います()。


 

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