第111話 戦いの収穫

 目の前の敵で精一杯なので何が起こったのか正確には判断できないがどうやらユキ、ララ、エレイシアの三人が援護にきてくれラディッツオを助けたようだ。

 危険という判断もあったがこうなってはきてくれて助かったという感想しかないな。しかしこれだけ早くこちらに来れるとは、、

 そうかスピードのあるユキを中心に商人のアイテムボックスで盗賊達や住民、そしてここまでの移動を組み立てたのか、また後でユキから重労働すぎますとクレームが入りそうだ。


 咄嗟で細かい指示が出せなかったがちゃんと自分達でそこまで考えて行動してくれたおかけで今こうして窮地を脱しようとしている。

 これがパーティーメンバーか、かつての職場にはなかった信頼がここにはあった。


 まあついでに俺の功績を自慢するならここに来るまでの道中にステータスとジョブスキル両方の向上を目的としてララとエレイシアの本職のジョブレベルを上げるスキルブックを用意したのが功を奏している。

 特にララのプロテクトと状態異常回復はこの状況を完全に打破できるスキルだ。

 ラディッツオさえ復活すれば勝勢はこちらのものだ。それまで粘ることに徹しよう。


炎弾ファイヤーボール

「グラッァァアーッ」


 余裕ができたメイスによる援護の魔法攻撃が俺が相対しているキマイラの土手っ腹を撃ち抜く。

 俺の援護のときとは違い直撃だ、本職故かINT知力の違いか炎弾のスピードが違うな。


「回転切りっ!」


 この好機に俺はターゲットを尾の蛇に絞り剣士のジョブスキル1の回転切りでナマス切りにする。

 仕留めに入る前の準備だ、ラディッツオの二の轍は踏まないようにな。

 回転切りは王都の最後でエレイシアが使っているのを見て使えるなと再確認して最近俺も取得していた。

 何も高レベル高火力高デメリットの3Kだけがいいってもんじゃないからな。


 構え直しついでに戦況を確認する。

 もう一体の翼のあるキマイラはエレイシアの一撃で瓦礫に飛び込んだが復活して今はまたメイスが単体魔法で抑え込みにかかっている。

 エレイシアの一撃でダメージがあるのかメイスの魔法に抵抗ができなくなっているようだ。

 ラディッツオもララの解毒魔法キアリーをかけてもらって復活目前だ。

 よしよし、後は目の前のキマイラにもう一度集中だ、尾の蛇を失い怒り心頭のようだが動きが悪くなったな。



 そこからは劇的なことなどなく一度傾いた勝勢は覆ることはなかった。皆ジョブスキルを使ってMPが少なかったので復活したラディッツオの援護中心に数を活かして確実に二体とも片付けた。


 止めの前の最後に「翻訳」で情報収集を試みるが結局最初以外は知性のあるセリフはなかった。戦いが始まると理性と知性が抜け落ちる魔物だったのかもしれない。


「ふ〜、激戦でしたね。3人に救われましたよ。」


「ああ、我々も色々と反省せねばな。君のスキルに頼りすぎていてはいけないと痛感したよ。そしてここの敵のレベルの高さも再確認させられた。」


 降りてきたメイスと一言交わす。

 その通りだな、残り物資も考え早く拠点が欲しいとメイスとラディッツオ以外のレベリングが不足した状態でここまできたことが今回の苦戦の一番の原因だった、俺が反省すべきことだ。


 街へ入れない俺達は魔石しか手に入らないダンジョン暮らしではジリ貧になるのが見えていたのでその焦りがあったのだろう、しかし収穫もあった。


「えっ、私大して何もしてないのにレベルが11も上がってる!!」


向こうで3人娘がキャッキャッとはしゃいでいるのが見て取れた。Aの最上位の魔物を三体だ、パーティーで分散されるとはいえ経験値は莫大だった。

 俺も通常レベルが5も上がったがメイスとラディッツオはこれでも変化はないらしい、上は本当に厳しい世界だ。


 それにダンジョンと違いここでは素材が丸ごと手に入った。今回の戦いでワイバーンソードや他にも限界を感じ始めたところだ、有り難く利用させてもらおう。


「よし、みんなお疲れ様。一旦中央区まで下がって休むための準備をしよう。ここの住民とも話し合わないとな。」


 素材を回収し戦場を後にする。ここからの北方が例の森といっても歩いて一ヶ月半はかかる距離だ。

 森から離脱したキマイラが住み着き縄張りにしていたのだからそうそうに森の魔物の襲撃もないだろうが今後は備えていかないとな。


 考え出すとやることは山程ある、どうやら俺はまだまだ過酷な労働からは抜け出せないようだ。

 

 

 




 

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