第123話 邪神の本体
櫓の見張り以外の住民が寝静まった深夜零時過ぎ、騒ぎで住民が駆けつけて来る前に蛇神を仕留めるつもりで6人全員で祭壇へ急襲をかける。
「いっそ、祭壇を中心に殲滅魔法から仕掛けるのもアリだがな。」
集落共ども消し炭にするとメイスの強気の発言が出るが、
「街への破壊工作の実行犯がここにいなければ後に狂信者として禍根を残す場合もあるでしょう。
確実に幹部から話を聞くためにも住民は残して蛇神を排除すべきです。
それにあの祭壇も不気味だ。
Sクラスの蛇の魔物ならあの祭壇には収まらないような大蛇の可能性が高い筈です。
何か仕掛けがあったとき、MPの無駄消費で追い込まれても事です。初手は大事ですが別の手でいきましょう。」
と宥める。普段の紳士然としたメイスとは違う復讐鬼がそこにはいた。
「わかっている、言ってみただけだ。それでも初手は私が貰うぞ、ハァッ。」
飛行魔法で一気に祭壇の上空をとるとそのまま攻撃魔法の準備へと入る。
「
祭壇を範囲指定した範囲土魔法で上空から大量の土石流が舞う。祭壇が怪しいならばまずは物理で試すとばかりに破壊の雨が降り注ぐ。
そのまま圧死させるのではと思うほどの質量が祭壇を襲うが土石流は祭壇の手前で何かにぶつかったように弾かれあたり一面に散らばった。
「結界魔法か。祭壇にかけられたものか、今のこちらの攻撃に合わせ蛇神が張ったものかわからないが相当厄介な相手だな。確かに殲滅魔法では取り逃がしていたかもしれん。」
メイスが苦渋の表情を浮かべながら愚痴る。見張りの話からも天変地異クラスの魔法が使えそうな話もあった。
どうやらあのキマイラ達より数段格上の相手らしい。
岩石が上げる土埃がやや落ち着いてくると、住民達も流石に騒ぎ始め、集落から飛び出してきていた。
そして今だ荘厳な雰囲気を出す祭壇からは、姿は表さずとも祭壇の直径よりも長い舌が飛び出し、あたりを探っているようだ。
蛇は舌の感知機能で索敵すると聞いたことがあるがどうやらこの魔物も同じみたいだな。
しかしやはりあの祭壇は普通の空間じゃないな、アイテムボックスというより祭壇そのものがダンジョンだと思えばいいか、魔物の住処だし。
だとしたら倒すためには引きずり出すか祭壇の中に入るかだ。
入る方が断然危険だな、と俺が思考を巡らせているとき、それよりも早く行動する者がいた。
「ハアアァッ!!」
金色の槍がまるで裁きの雷かのように上空からその舌を射抜く。
ジョブスキルを使う時間もないと判断して、ただの投槍での一撃で一般的な冒険者のジョブスキルクラスの威力を出し、蛇神を祭壇から引きずり出すための一手を打ってくれた。
これがチートで強くなった気になっている俺とは違う、本物のSランク冒険者の判断力、そして実力か。
キマイラ戦での負傷以降、何かが吹っ切れたかのようにより一層切れ味が増している。
おそらくこれが本来のラディッツオの実力なのだろう。王都での俺との戦いのときはまだまだ本調子ではなかったと度々言い訳していたがどうやら本当のようだな。
しかし、やはり戦闘現場でのリーダーは俺じゃないな。俺では慎重になりすぎて今の好機を逸していただろう。
そのまま地上に降り槍を掴むラディッツオ。
「
ミスリルの義手を伝いオリハルコンの槍から蛇神の舌へ雷撃が浸透していく。本体を見せない蛇神を感電させ、そのまま引きずり出す気だ。
あの舌の長さでは本体のデカさは相当なものだろう、俺達もそのまま援護に向かう。
皆で綱引きの要領で舌を掴むとそのまま引っ張り上げるのだ。
「よくやった、ラディッツオ、手伝おう。」
「へっ、最近は鍛冶だのなんだので工房に籠もって鬱憤溜まってたからな。それに飛行魔法や雷魔法使って戦うのもやってみると楽しいもんだがやっぱり槍を持つのがしっくりくるぜっ。」
この状況で軽口を叩くラディッツオ。しかし時間はあまり残されていない。もうすぐ邪神を崇める信徒が押し寄せてくるだろう。
皆で力を合わせ祭壇から引きずり上げる。
お、重いっ。レベル上げと共に「剛力」は基本だと皆もしっかり上げ、俺なんかMAXまであげてきたのに重いだとっ。
「「ウラァァッ!」」 ズズゥゥン
それでも地響きを上げながら祭壇の中にいる蛇神が動き出す。そして巨大な頭が遂に覗かれるとそのまま舌を持つ俺達を丸呑みにしようと襲ってきた。
「
「ッッッ、
慌てて舌を離し俺とララとで2重に防御魔法を張り何とか防ぐ。そのうち1枚はすぐに割られてしまっていた。あっ、アブねー。
―そうしてようやく姿を現した邪神の本体は全長30mにも及ぶ巨大すぎる大蛇。
あのレッドウィングリザードすら丸呑みにしかねない超ド級の怪物だった。
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いかがだったでしょうか?
邪神討伐戦本番となります。
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