第131話 嘘看破
信徒達をリードライトに迎え入れて五日ほど経過していた。
まずは44名いた戦闘職持ちの武力がこちらへ向う危険の排除からだ。
彼らの裏の目的として、こちらの街の状況を把握した後、住民を人質にしての俺達に反乱する思惑だって否定はできないからな。
裏方業務として、常に最悪の想定はゼッタイだ。信用云々とはその後に語られるものだからな。
ある程度のグループごとに、街への受け入れのための説明と称して面談を繰り返し、「強制証文」へのサインを手に入れる。
このスキルはスキルであることの説明が要らないのが強いメリットだ。相手はいつでも反故できる口約束の延長程度のつもりでも、約束が絶対となって帰っくる。
デメリットとしては両者合意のサインが必要なので、内容の擦り合せでこちらが反故にできない条件をつけられると厄介なところだ。
特に街内での武力所持については一筋縄ではいかず、慎重に相手を尊重しながらこちらが後々に不利にならないように協議を重ねてようやっと五日で状況が整ったのだ。
ふ〜、これで一段落つける。正面からの戦闘ならパーティーメンバーが揃って立ち向かえば問題はなさそうな戦力差だ。
だが、住民を狙われたり俺達がバラバラなら獅子身中の虫として大変危険な存在になりうるからな。
この間だけは皆の内職を放棄して独立区の準備の名目で四六時中見張りを強化していたが、これで本人達も気づかぬうちに反旗の目を摘めた。
これでようやっと待たせに待たせた本題の核心の調査だ。この間を使い、どう調べていくか考えていたが、俺の出した結論は『占い師』のジョブスキルの1つである「嘘看破」を使った地味なやり方にした。
「人物鑑定」と同じく相手の手のひらを見ていることが条件だがその間相手にした質問の虚実を判別できる嘘発見器。
尋問官に是非欲しいジョブスキルだが残念なことに大抵の『占い師』のジョブを得る人間というのは胡散臭くて信用ならない人物が多く、尋問官には適さない。
『占い師』は他にも高レベルになると「未来予知」などかなり強力なジョブスキルも有する。
しかし、非戦闘職の割にMPを消費するスキルばかりでその割に『書記』のように最大MPが少ないステータスなので、高レベルになりづらく、庶民出身の『占い師』のジョブ持ちはその職業を諦めて他の仕事につくのだとか。
王都にいた『占い師』の爺さんも元は貴族の出身でも跡目につけず、若いうちに投資して鍛えたジョブスキルで食いつないでいるのかもしれない。
ただし、王宮には特別相談役の『占い師』が代々存在しており、時の権力と密接な関係であるとかないとか。
話を戻そう。こうして一人一人、地味に調査するのにも理由はある。
「強制証文」で両者間での隠し事はなく、すべて質問されたことは答えるようにと盛り込めば簡単なんだがそれをするとこちらが邪神教の集落を襲ったその理由も嘘偽りなく、話さなければならなくなる。
お前たちだけ話せ、では街への受け入れという立場を利用した合意ではないサインと判定されてスキルが無効になるリスクがある。
ユキの自白剤も当然今後の信用関係に影を落とすので論外となると労力こそあれ、これが確実と踏んだのだ。
では、作成したスキルブックは誰が使ったのかというとこれも当然俺となる。
あれ?、またいつもの
―街の結界への破壊工作。
そんな大罪に信徒達がどの程度関係しているか。
両者の関係性を考慮し、無関係な可能性が高い末端の信徒から順に個人面談をしていくと、その答えは想像していたものとは随分と形の違うものであることを、このときの俺は知る由もなかった。
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