第132話 黒髪の少女
老若男女問わず、全員への個人面談を開始する。
今回はメイスを外し、代わりに護衛と案内役を兼ねてエレイシアを参加させ、助手には前回の住民のときと同様にララがついてくれている。
「人物鑑定」のスキルを使用して皆のステータスを確認して記録し、そのときに「嘘看破」のスキルも使って結界への破壊工作への関与のある者を探っていく。
ここまで時間がかかったこともあり緊張もあったが、幸いだったのは末端の信徒達は完全な「白」だったことだ。
話してみると警戒心は当然あるものの敵対心はなく、中には蛇神への強い『恐怖』や赤子を捧げた『恨み』を抱えた者もおり、大きな声では言えないが感謝しているという信徒もいた。
まあ、考えてみればそうか、、。
外からみれば狂信者の集団というのは恐ろしい一枚岩に見えるが厳しい環境で外に逃げ出すこともできないから一緒に生活しているだけで『思想』や『教義』として人間用に作られたカルト宗教というわけではないのだから洗脳の力はなかったようだ。
あの蛇神とてその巨体や祭壇などそれなりの雰囲気はあったがあの特殊な酒を除けば人の精神に及ぼすようなスキルはなかったようで、その酒とてアルコールと共に興奮も霧散するんだとか。
男共はともかく女性方はその酒の宴も心底嫌っていたようで集落を出る際、残っていた酒の処分をめぐって口論になっているところに話を聞いたララやエレイシアの手によってすべて廃棄させられていた。
二人の剣幕が尋常ではなかったのもあり、俺の出る幕はなかった。こういうときは余計なことをいわないに限る。
手を焼いたのはむしろ、そういったところでその生活に満足していた男共だったが、コイツラも結局は蛇神への恐怖で縛られていた者達だ。
その恐怖が今度は蛇神を打倒した俺達へ移っており、スキルの力も借りて詳しく調べていったがこいつらも結局何も情報を持っていなかった。
ふ〜む、、ユキから渡された報告書を読んだ限りではコイツラがかなり「黒」と踏んで行動に出たが勇み足だったのか?
まあ、それでも初のSランクの魔物の討伐と人足の確保で労力としては割にあったとしよう。
と、いう思いも出てきたところでお次は珍しい黒髪の少女がエレイシアに連れられ、現れる。
なんだか今までの人々とは雰囲気が随分と違う少女だな。
族長のロクスから事前に今日の面談の人間の説明を受け、メモを取っていたものを確認すると少女の名前はメデス、蛇神の世話役とのことだ。
世話役か、厄介だな。今までの仮初の信徒と違い心からあの蛇神を邪神様と崇拝している可能性もあるかもしれない。あれだけの存在感のある魔物では皆恐怖で距離をとるが近くに居続ければいつしか畏怖から畏敬になっているやもしれん。
考えすぎかもしれないが目の前の少女にはそういった何かしら常軌から外れた者のような特別な雰囲気を醸し出していた。
「ああ、ロクスさんから話は聞いているよ。君がメデスさんだね?少しお話が聞きたいのでまずは座ってください。
初対面のおじさん相手は嫌かもしれないがお姉さん二人もいるから安心してくれていい。」
う〜ん、、歳こそユキと同じくらいだが小生意気なユキと違い近寄りがたい雰囲気があるこのメデスという娘とどう距離感作って話すべきか、、
俺には前世で妹がいたが入院が長かったこともありあまり親密な関係とはいえなかった。いや入院は関係ないか、、単に俺が苦手意識持っていただけかもしれない。
もう少しくらいはフランクでいいかもしれないと考えていると少女の方から俺へと話し掛けてくる。
―この時、俺はまだ何も知らなかった。
ここからの出来事こそが俺が転生してからの一番の大きな転換点だということを、、。
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