第133話 招く者

「ふ〜ん、の人は礼儀正しいというかバカ真面目というか、、いや単に小心者だからこんな見た目が小娘相手でも壁を作るためにそんな口調なのね。

 あんまりやすい魅力のあるタイプには見えないけど、、って職業ジョブは『書記』。

 そう、、つまりってことね。

 招く者アンタも私と同じで嫌ってるとばかり思ってたけどアタシを殺すためには魔王や勇者じゃ駄目って諦めたってことかしら。

 ……、それがどういう結末になるかは招く者アンタもわかってる筈なのにね、、。」


 

 ―開口一番、俺に向けられたと思われた彼女メデスの言葉は意味不明なことばかりで、辛うじてわかるのはこの言葉が俺に向けられたものではないということともう一つ、彼女が只者ではなく危険な相手だということだけ。


 ガタッ


 咄嗟に立ち上がり、また「装備脱着」のスキルを使って武器と防具を装備する。

 俺の動きに見てエレイシアと次いでララも戦闘態勢へと入る。


「どっ、どういうことですかっ、タナカさん。

 どうして急に戦闘態勢にっ?彼女は何て言ったんですか?」


 わけのわからないララが俺へと問いかける。

 彼女―メデスの言葉は俺達が普段、使い慣れている言語とは少し違うものだった。

 「翻訳」スキルのある俺には通じたがそれでもすべてを理解できたわけではない。

 スキルのおかげでメデスが言葉を向けた相手のことを『招く者』と呼んでいることまでわかってしまったがそんなことくらいでは情報が追いつかないし考えている場合でもない。


「よくわからないが明らかに不審な言動だっ!

 それに敵対の意思が籠もっていた。見た目に騙されるなっ、もしかしたら魔物かもしれないっ。」


 俺の魔物かもしれないという言葉にララもエレイシアも一層警戒心を強くする。


 俺はまだ邪神教信徒達には俺のジョブが『書記』であることを教えていない。

 蛇神と戦闘していた人間のジョブが内務職の『書記』と伝えても余計な混乱になるし説明も煩わしかったので。

 しかし彼女は俺を一瞥しただけでジョブを看破してきた、「人物鑑定」のスキルだとして手のひらも見ていないで鑑定できるのはおかしな話だ。

 Sランクの上位の魔物には人型になれてかつ、特殊なスキルを使えるものもいるという伝説を聞く、、。

 そんな魔物を相手に3人では太刀打ちできるかどうか、っと謎の膠着状態で対処を思案していると、


「失礼しちゃうわ、誰が魔物よ。まぁ、人間はとっくにやめちゃってるけどね。」


 背すじが凍りそうになる不気味な笑顔のまま、メデスが口を開く。どうやら今のは皮肉の意味がこもっているようだった。


「そう警戒しないで。ではやり合うつもりはないわ。蛇神ジャレフとの約束でね、信徒達には危害できないのよ。

 あなた達も少しはスキルで強くなってるようだしちょっと加減を間違えれば約束を違えることになりそうだもの。

 私の庭先パンドラの森のペットだったんだから死んでしまったとはいえ約束は守ってあげたいのよね。」


 ……、さっきから何をいっているのか理解が追いつかない。

 あの魔境の森が庭先で蛇神がペットだって??

 つかジャレフって名前だったのかよ、あの蛇神は。ってそんなことはどうでもいい。

 やり合うつもりはないらしいがどうする?

 危険すぎる相手を挑発したくはないがいくらなんでも謎が多すぎる。質問くらいは許されるだろうか。


「……、魔物ではないのなら君はいったい何者なんだ。」


 気の利いたセリフなど思いつかず率直な質問をしてしまう。


「ハァ〜、ナニその気の利かない質問は?

 嫌になっちゃうわね、、。

 でもいいわ、答えてあげる。なにせこれから私の憂さ晴らしの玩具になる相手だし。

 名前は教えた通り、メデス。

 一言でいうなら招く者イカれた神招かれた者アナタの同類に人生メチャクチャにされた被害者よ。」

 

 ―ことここに至り、ようやっと俺は転生したこの世界の「謎」と直面していることを悟ったのだった。



――――――――――――――――――――――


 いかがだったでしょうか?

 急展開を迎えていますが初期構想と現状との擦り合せの段階であり、ここから面白くしていけたらと思っていますのでどうか変わらずの応援よろしくお願いします(_ _;)


 


 

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