第39話 ボス戦
門をくぐると自動で門は閉まっていた。
100m四方ほどの広さの部屋の中心にダガー、棍棒、弓、投石を構えるゴブリンが一体ずつと、その後ろに斧を持った一際ガタイのいい筋肉隆々のゴブリンがいる。
―ホブゴブリン―
ゲームなどで言わずと知られたD級モンスターだ。さらにいえばダンジョンボスにはボス補正があるらしく、フィールドで出会うホブゴブリンより強いらしい。
体毛のないゴリラが斧を持って構えているといえば伝わるだろうか、直に見ると心が竦む。
しかし、一発で仕留めるのは不可能でも拳銃が全く効かない相手でもないだろう。距離もあるし、臆せず先制攻撃を行う。
とはいえ最初に狙うのは弓、次いで投石のゴブリンである。
遠距離武装を潰しておけば何とかソロでの攻略が見えてくる。
距離は50m、ちょうどリボルバーの射程距離だ。
昨日の夜に取得した「命中率上昇」スキルもあり、ほぼ胸のあたりにヒットし、2匹ともまず戦闘不能に陥れた。
「拳銃射撃術」を上げるではなく、「命中率上昇」にしたのは対人のガンマンの早撃ちではないので、魔物相手ならばlv1以上の取り回しやリロードの早さより、命中に特化して上げたいという狙いと、もう一つ。Dランクダンジョンのボス戦に向けての思惑もある。
しかし撃ち終わりには残り三匹が肉薄してくる。
通常のゴブリンはともかくホブゴブリンまでは一発では仕留められないだろう。
そこで俺がとった行動は「走って距離を取り直す」という単純な行動だった。
この4日の間に作成したスキルブックは先程いった「命中率上昇」の他には「剛体」と 「移動速度上昇」✕2とした。
ソロで複数やこれからもっと強力な魔物との戦闘になれば、被弾も避けらないとして、やはり保険の「剛体」は欲しかった。
ジョブレベルの影響でHPこそ高めだが、防御は紙だし、装備もいいものとはいえ、ソロ用に軽装仕立てだしな。
回避ではなく、移動速度なのは指定のDランクダンジョンのボスはそこそこの範囲攻撃を持つので、回避より移動速度でしっかりと距離を取れるほうがいいと考えたからだ。
今回はその敏捷を活かして戦うことにした。
コボルトならこれでも逃げるのは難しいくらいだが、武器を持っている二足歩行のゴブリンたちなら十分だった。
距離を取った後、再び狙うのは的の大きいホブゴブリンに絞って残りの3発をお見舞いする。
「グオオオォォーー」
流石に3発も食らえば、いくらガタイの良いホブゴブリンでも悲痛な声を上げ、走れなくなったようだ。
俄然勝勢になるが、そこで敵も三方から追い立てるように分かれて迫っていたので、どちらかは躱せなくなると判断し、挟撃の前に自ら棍棒のゴブリンに向かい、敢えて一撃を喰らう。ダガーでは致命傷になる可能性があるので。
自分から向かっていったおかげで敵の棍棒がしっかりと振り切れなかったのと、「剛体」lv1のおかげで吹っ飛んだものの受け身をとってすぐに動ける程度のダメージだった。
やってて良かった「合気道」での受け身の練習。
すぐさま立て直し、棍棒で吹っ飛ばされたおかげで距離もとれたので、ここからはリロードはせずに剣を構え「移動速度上昇」も使い、仕留めにいく。
定石通り、ワイバーンソードを受けられないダガーのゴブリンから「剣術」lv2で一撃で倒し、そのまま棍棒のゴブリンも振り向きざま斬りつける。
後は体力切れで動かないが、まだ気力が残っているホブゴブリンを斧を持っている右手を斬り落としてから止めを刺す、手負いの獣は怖いからな。
残りを見てみると投石のゴブリンは虫の息で、弓ゴブリンはというと、既に体が消え、魔石を残すのみとなっていた。
「ふ〜っ」
安堵を交え、大きく息を吐く。
まだまだ、必殺技のような戦闘系のジョブスキルがないため、地味なスキル達ではあった。
それでも、一つ一つ、積み重ねた力を駆使して着実に成果を上げることができたようだ。
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