第51話 この先の使命
その場にへたりこみ、呆然とレッドウイングリザードが消えていくのを眺めている。
結果だけをみれば、相手に何もさせない完封劇。
実情は一番の死闘、むしろ完封以外勝率が低いからこその、最初から「ソーマのポーション」を飲んでの一気攻勢だったのだ。
それでも、これほどの怪物を完封した事実は変わらない。思えばこれまでの魔物には何らかのダメージは負わされてきたというのに。
コボルトには噛まれ、ゴブリンには弓と投石に追い立てられリザードには尾で叩かれた。いや、最初にいたな。一撃で完封した魔物。
「クッ、おまえスライム以来の何もできなかった奴らしいぞ」
高級ポーションを間をおかずに2本キメたせいか、はたまた試験の達成感か、いや一番は目の前にいた怪物から感じていた死のプレッシャーからの解放で、そんな事実が可笑しくて仕方なかった。
無理に使用した剣士ジョブレベル4の反動もソーマのポーションの効果でじきに回復する。
今は興奮を抑えるために、ゆっくりと感慨に耽っていたかった。
ダンジョンボスが消失すると、魔石とボスドロップのレッドウイングリザードの爪が残っていた。
加工して武器にも使える大きさだ。金貨3枚ほどになったはず。
しっかりと回収して、そこで実感が湧いてきた。
安堵ばかりしていてはいけない。これから凱旋して、契約の確認と引き継ぎの準備もある。
だがその前に、体が落ち着き自身がさらにレベルアップしたことに気づく。これくらいは確認させてほしいものだ。
名前 :タナカ シンジ
年齢 :38
レベル:32
ジョブ:書記レベル10
HP :460/642
MP :131/179
STR :158
DEF :159
AGI :165
INT :319
DEX :239
LUK :197
書記ジョブスキル
①誤字添削 ②カルク ③時計 ④翻訳
⑤自動手記 ⑥図面作成 ⑦英雄譚作成
⑧高速手記 ➈強制証文作成
⑩スキルブック作成
ジョブスキル
魔法使いレベル2 : エレメンタリー範囲魔術
魔法使いレベル3 :エクストラ単体魔術
剣士 レベル4 :三日月刃
通常スキル
料理lv6 合気道lv3 測量lv2 剛力lv3 剣術lv2
拳銃射撃術lv1 命中率上昇lv1 剛体lv1
移動速度上昇lv2 火傷耐性lv1
ステータスはあくまで脳内のイメージなので「書記」以外のジョブスキルを手にしたことで、わかりやすいように変わっていた。
「通常レベルも32まで一気に上がったな。
ソロであんな怪獣倒したんだから、上がってもらわないと困るけどっと」
そこで言葉に詰まる。
スキルの方はもう増えすぎて解説できません。
「ここから先の成長は、自分でも恐ろしいことになりそうだな。だが、だからこそ『地底古代文明ダンジョン』に挑む資格があるってもんだ」
―地底古代文明ダンジョン―
人類未踏破のssランクダンジョン。
それどころか、出てくる通常の敵でさえ、ただの一体も倒せていない『不可能のダンジョン』だ。
ミスリル以上の伝説鉱物でできている巨大ゴーレム達が、中を守護しており、伝説を作ってきたSランク冒険者達が為すすべもなく、命を落としていった。
それでも斥候職などが、命からがら持ち帰るダンジョン内に眠るアイテムは、他のダンジョンと一線を画しており、『スキルブック』もその中の一つだ。
四代前の王様が
『この地底古代文明ダンジョンを攻略せし者現れたのならばそのものに王位を譲る!』
なんて言い出したときには、混乱と騒然が起こったが、後に冒険者ギルドの協力のもと、Sランク冒険者しか攻略証明を認めないとしたことで、無謀な挑戦も収まったそうだ。
無茶苦茶な話だが、今でも王位の継承と共に引き継がれている言葉らしく、それだけ古代文明の遺産がこの世界にもたらす恩恵が大きいということだろう。
王位には興味がないが、その『スキルブック』の出処には興味がある。
未だ誰も倒せていないモンスターがいるというのも倒すのはジョブレベルがカンストした転生者である俺の使命のような気がしてくる。
後は臆せず己の本心に従うまでだ。っと、強敵を倒したことで自分の世界に入っていたが我に返る。
ソーマのポーションが効きすぎだな、妙に好戦的な思考になっている気がする。
さて、いつもの時間に現れなかったことで死んだと、二人に思われているかもしれないからな。
意気揚々と凱旋して、驚かせてやるとしようか。
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