第107話 急襲

 戦闘が終わり無力化した盗賊達を縛る縄をアイテムボックスから取り出したちょうどその時だった。


グルルルゥォオオー!!俺の眠りの邪魔をしたのは誰だっ!!


 地響きのような轟音と共に魔獣の雄叫びが響き渡る。北区の方からか、魔獣のネグラまで10kmは離れてる筈だが今の戦闘だけで刺激してしまったか。

 耳の良さも雄叫びが届く距離も桁違いだ。

 さらに俺の「翻訳」を通して言語化されているということは高い知能も持ち合わせている。


「お、オシマイだー、キマイラが目を覚ましたんだ、全員殺されるぞっ。」


 盗賊達が震えだす。

―キマイラ、獅子と山羊と蛇の混成獣の魔物でAランクの最上位と聞く。くっ、近いうちに安全確保のための討伐は考えていたがこんな形で急襲されるとは。


「私が先行して足止めにかかる、ラディッツオと合流して援護に来てくれ。後のことは任せたっ。」


 珍しく語気を強めたメイスがこの言葉だけを残して飛び立つ、この距離でも時間がないという判断からだろう。


「3人はまずこの盗賊達を縛り上げ西門の奴らと合わせて東区の住民達に引き渡して状況を説明してくれ。

 キマイラの雄叫びで混乱しているかもしれないがこちらにはSランク冒険者がいることを伝えてなんとか鎮めるんだ。」


「大丈夫なんですか?私達も―」


「問題ない、Aランクなら俺達3人で対処できる。それよりこの盗賊達にどさくさに紛れで余計なことをされる方が厄介だ。」


 こちらを心配するララを言い終わる前に言葉を被せ言うことを聞かせる。悪いが今の3人の実力では下手をすれば一撃死もありえる。

 作戦を練っていれば別だが今回は連れていけない。


「援護はそちらの状況が落ち着いてからでいい。住民達とは今後良好な関係を築きたいからな、大変だろうがよろしく頼む。」


 後のことを三人に任せ俺もメイスを追う。中途で門側から走ってきていたラディッツオと合流する。流石に雄叫びを聞けば自身の役割はわかっているようだ。


「ラディッツオはキマイラとの戦闘経験はあるのか?」


「ああ、ある。言っとくがツエーぞ、動きは俺と同じくらいでタフさは向こうのが数倍上だ。まあ前はパーティーで仕留めたから問題はなかったし今回もメイスの旦那とアンタがいりゃあ何とかなるとは思うが―」


 こちらに合わせて走りながら答えていたラディッツオだがその言葉が途切れる。メイスが街中でも気にせず範囲土魔法で足止めにかかっているのが見えたからだ。


「メイスっ!」


 のキマイラが上空のメイスに飛びかかる姿が目に入る、そのキマイラには背中から翼が生えて飛んでいるのだ。。

 それでも飛行スピードならメイスに軍配があるのか攻撃を躱していた。


「チィッ、翼があるやつは亜種進化でツエーらしいぞ。俺はやり合ったことはないがって、、おい…」


 またしてもラディッツオの言葉が途切れた、俺も一瞬言葉に詰まる。そこには絶望の光景が広がっていたからだ。


 ―土魔法により盛りあがった土石の登頂に本来群れる筈のないもうのキマイラが悠然とこちらを見下ろしていた。




 

―――――――――――――――――――――――――――――――――


4章もここから盗賊達噛ませ犬戦ではないハラハラドキドキの本格戦闘が始まります。


是非まだの方は作品フォローと★★★をつけて続きをお待ちください。(_ _;)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る