第108話 3局面
キマイラが三体、そのうち一体は背中から翼が生え、上空でメイスと対峙していた。
「チィッ、距離をとれメイス!キマイラには
いつもとは逆にラディッツオからメイスへと指示が飛ぶ。普段は任せきりでも流石はSランク冒険者、この程度の苦境何度も跳ね返してきた男の力強さが言葉には宿っていた。
しかし三体とは、事前の調査報告や盗賊の話でも一体と聞いていたが、、
あの森に住む最上位の魔物達は大抵その強さの自尊心からか、生態としてほとんど群れることはないのだが翼の生えたキマイラが他二体を従える格好となったのかもしれない。
3対3、実質的には1対1の3局面にならざるを得ないか。
ラディッツオを言うとおり俺とメイスが粘りながらタイミングを見て援護をして決定力のあるラディッツオがまず一体の通常のキマイラを倒して均衡を崩すのが最善の策か。
「
上空のキマイラから鳴き声に乗せて翻訳された物騒な声が届く。
―生贄。北区を縄張りとしたキマイラに定期的に贄を提供することで住民達は見逃されていたわけか。
代わりに住み着いたおかけで他の魔物が近づかず「守り神」のような一面もあったのかもしれないが所詮は魔物、人間に制御できるわけでもなく今回のようにいつ暴れだしてもおかしくない災害だ。
ここで倒しこの街を完全に人間の手に取り戻させてもらおう。
「装備脱着」で小盾と剣を出す、本当はこれほどの魔物なら以前の大盾を使いたいがラディッツオに物の見事に破壊されてしまったからな。
それでも獅子の爪と牙、山羊の角に後方からの蛇の噛みつきと攻撃パターンの多いキマイラを抑えるには「盾術」に頼るのが一番だ。
「グルルルゥォオオ!!」
正面の一体のキマイラが高さを利用して勢いをつけそのまま襲ってくる。確かに感じるプレッシャーはラディッツオと対峙したときと酷似している、間近で見ると前世のライオンの1.5倍ほどの大きさはあるな。
こうなればもう2人の戦いを見ている余裕など全くなくなってしまった。
無事を祈りつつ何処かでラディッツオのジョブスキルを使わせる援護をしたいがまずは目の前の相手に集中する。
「
出し惜しんでなどいられない、正面から突っ込んできたキマイラにプロテクトを張り、キマイラがぶつかった隙に横からワイバーンソードを突き刺す。
ガキィィン
しかし側面の山羊が角で剣を防ぐ。
直接の体ならイケるとは思うがキマイラの角はワイバーンの牙を上回っているようだ、ホッカさんが鍛えている分互角の感触が伝わってくる。
「シャァァッー!!」
そのまま今度は尾の蛇が噛みついてくるが何とか盾で防ぐ。
―次の瞬間には獅子が大口を開け吸引されそうなほど息を吸い込む。マズイッ、
クソッ、どこが1対1の3局面だよ、これじゃあ1対3じゃねーか。
そんな悪態をつく暇もない。
対峙してまだ一合にして俺は絶体絶命の窮地に立たされていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます