第105話 廃墟の現状

「はいは〜い、面倒くさいのはなしにしてとっとと全部話してね〜。」


 捕らえた盗賊達に尋問など必要ない、今日の朝に用意していたユキの自白剤によって朦朧としながら盗賊のうちの1人が現在の街の状況を話しだした。

 …裏稼業から足を洗ったとはいえ「毒調合」スキルを持つユキの強味は健在だ。年端のいかない娘の言葉に朦朧としながら盗賊が答える姿は見ていてどこか寒気がする光景だ。

 

 ララの救出作戦でもこの「毒調合」スキルに活躍してほしかったんだが目撃者の招待客に毒を盛っても仕方ないし私兵達はメイスの方針で各自用意したもの以外口にしないことになっているので使うことができなかったのだ。

 ラディッツオは素直にいうことを聞かなそうだがこの男は毒に気づきそうで盛れないわ。


 さて盗賊の話ではここにいる14名以外の7名の仲間とその頭領は西区のアジトにいるとのこと。

 他にも30名ほどの流浪の民が東区に流れついて生活しているらしい。

 戦闘職の者は既に盗賊達に殺され残りの者達は奴隷のようにコキ使われているという。


 この話だけでまずやることは決まった。盗賊達には本日を持って立場を逆転させ囚人としてインフラ整備にでも使ってやろう。

 他に重要な話としては森から侵攻を受けた北区の一部には高ランクの魔物がネグラにしているらしく数十年封鎖したまま誰も近づかないんだとか。


 よくそんな廃墟に住んでいられるなと思うがそれだけ街の外に追いやられた人間の末路というのは厳しいのだ。

 王都の南に位置する俺達の街の南方なども砂漠地帯で巨大なワームの魔物がいるのでこちらに追放されるのは処刑よりも重い罪となっている。

 その点北方は気候も土壌もよく作物が育つため魔物の恐怖に目をつぶればまだ生活しやすいのだろう。

 

 盗賊達を縄で拘束したまま西門へ向かい、かつて栄えた街リードライトの中へ入る。

 そこにはもう栄えた面影はなくなっていた、王都の影であるスラム街がまだマシなのだと実感する。

 今でもハッキリと残っているのは35年前の惨劇の痕跡のみだった。


 その変わり様にメイスの足は止まり唇をかみしめていた。メイスだけではない、ララとエレイシアにも不安がよぎる。

 もし俺達が森の討伐に失敗すれば自分達の街がこうなってしまうのだ。

 辛い現実を突きつけられていた。


 王都にいた頃にエレイシアから結界の魔法陣の詳しい状況について聞いてみたところこのリードライトに残された資料と照らし合わせると現状の綻び具合ではまず3年は持つと予想されているらしい。

 楽観せずに最悪を想定すれば残り2年ないしできれば1年以内に解決はしたい。


 そもそも逃避行中の俺達は王都の人間達に介入される前に解決したいのだ、そんなに多くの時間があるわけではない。

 しかし今の俺のスキル構成にするまでで2ヶ月以上かかっている、パーティー全員この水準にするだけでも半年以上はかかってしまうだろう。

 また装備やアイテムも王都で手に入るAクラスだけではこの先不安でもある、パンドラの森の魔物の素材で強化していく時間も欲しい。

 効率の良いスケジュールを組んでいかなければ。


 まずはできることを一つずつ解決しよう、俺達は盗賊の残党がいるアジトへと向かっていった。


 

 

 

 


 

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