第41話 宣言

 翌朝、冒険者ギルドを訪れる。

悩んだが、格好はもう冒険者の装備姿でいくことにした。

 そのままDランクダンジョンに向うというのも理由だが、受付嬢達にも冒険者たちにもこの格好で街中歩いてるのは噂になってるみたいだし。

 いっそのこと冒険者未経験の職員への冒険者研修だなんて誤魔化してもらうとしよう。早速中に入っていく。いまだ喧騒が続くのでこちらに視線も集まることもない。

 そのままギルド長室にノックをして入るとする。


「失礼します、っと、また副ギルドマスターは不在ですか?」


 マイヤーの姿が見えない。肩透かしもいいところだ。

 結局この10日で見たのは最初の夕方の迷子姿だけとはと思っていると、


「いや、本人は来たがっていたし、私も彼には一言君に謝らせようと思っていたのだが、つい先程依頼料の受け取りで揉めている冒険者がいてね、対応をさせている」


 なるほど、一階の応接間か。帰りにでも覗いてやろうかと思ってみたが、流石に悪趣味か。


「それでその、前回は君の口上に押され、指定のダンジョンの特別許可証の準備もしたのだが、あれは流石に口からつい出たハッタリということでいいんだよな?

 流石にあそこは無理だ。許可するということは君の自殺を助けるということになる。まあ、そもそもまだEランクダンジョン攻略にも時間はかかるだろうが。

 なあ、意地になる気持ちもわかるが、それだけではどうにもならないこともある。そろそろ和解の時だと思うのだが」


 と、またしても変わらぬブライアンの態度に辟易していると、ズカズカと階段を駆け上る足音がしたかと思えば、そのままマイヤーが勢いよくドアを開け入ってきた。


「きっ、貴様〜!!契約の穴を突いてこちらを陥れるとはこの外道め!!」

 

 掴み合いにでもなっていたのか、髪も服も乱れ、顔は疲れと焦燥そして怒気により土気色から紫がかっていた。


 おいおい、まだ朝の11時だ。社畜の1日は長いぞ、そんなので持つのか?

 そのまま殴りかかってきそうな勢いだが、直前に何かに引っ張られたように止まる。


 ジョブスキル「強制証文作成」の契約の影響で妨害行為はできないので殴りかかれずに動けないのだ。

 まあ「弓使い」だったというマイヤーが武器も持たずにきたとしてもステータスに差があれど「合気道」で何とかなりそうだが。

 惜しいことをしたな。


「落ち着いてください、契約の穴とは何のことです?両者合意のもと確認し合いながら契約した筈ですが」


 本当に何の言い掛かりかわからずに聞くと、


「確かにこちらはお前に妨害行為は働いていない! そちらの不正を発見もされてはいないが、まさかお前が俺の足を引っ張るため妨害行為を働くとは!!契約以前に人としてどうなっているんだ!」


 マイヤーの言い分はこうだった。

 つまり以前から繋がりのある俺が取引先達に一言いい含め、マイヤーにわざと意地悪をしていると。


 呆れて物が言えない俺が遅れて怒気が込み上げ、流石に怒鳴ろうかというところで


「見苦しいぞ、マイヤー!取引先達からの苦情は私の方にもきているし君の仕事の問題はそれだけではない!完全に君の落ち度だ。

 立場としては君の肩を持ちたいが限度がある。

 この件が片付いたら身の振り方を考えたまえ!」


 ブライアンに叱責され、崩れるように無言でその場に膝を落とすマイヤー。

 やれやれ、どの口がいうんだか。


 はあぁ〜、仕方ない。気持ちよくザマァしたい気持ちもあるが、あくまで俺は俺の本心に従うとしよう。マイヤーに近づき、肩を取り


「マイヤー、5日だ。後5日死ぬ気で頭を下げ、死ぬ気で働いて持たせてみろ。その後は残りの試験期間だけは引き継ぎで面倒見てやる。だから立て!」


 マイヤーだけでなく、自らを奮い立たせるように宣言をした。


 

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