第9話 スキルブック作成


  ―開いた口が塞がらなくなっていた。


 あんなに探し求めていたスキルブックへの入口が半ば恨めしく思っていた社畜ジョブ「書記」の中に隠れていたなど終ぞ思わなかったのだ。


 思わず詳細を確認しようとした所で


「スミマセン、朝のミーティングの時間ですが。」


 と、受付嬢の1人アイルに声を掛けられ我に還る。


 ギルマスが例の王都の本部定例会議に出張中で副ギルマスが領主の身内の婚儀への代理出席にワタワタしてる中いつものように通常業務は俺が仕切らねばいけない。


 社畜モードに切り替え業務に取り掛かる。


 今日は2人の上役がいないおかげかどうかは知らないが珍しくトラブルもなく定時に仕事が終わり一息つく、やはり『高速手記』は使える。

 併設酒場も落ち着いているため今日は月1程度の定時退社ができそうだ。そんなとき


 「タナカさん、今日は帰れそうですしこれから少し飲みにでもいきません?」

 

 受付嬢の1人入社2年目のララが声を掛けてきた。彼女は他の高ランク冒険者への玉の輿狙い達とは違い業務を真面目にこなす数少ない俺の味方だ。


 愛嬌のいい美人でスタイルもいいのだが俺のような将来性のない中年の社畜にも声を掛けてくるとは本当に変わった娘である。


「ありがとうララさん、誘ってくれて。でも今日は用事があってね。今度は僕から誘うから」


 と社交辞令を返し退社するとすぐに職員寮の部屋に帰る。


 「今日はとにかくこれを試さなくては」


 まずは新たなジョブスキル『スキルブック作成』の詳細を確認する。


 『スキルブック作成』


①自身が持つスキル

②スキルを持つ者からスキルの説明と実際に使用しているのを見ているスキル


 このどちらかの条件を満たしたスキルのスキルブックを作成できる。


消費MP:スキルごとに異なる

作成時間:1時間

クールタイム:24時間


 と、頭の中で反芻する。


 なるほど、とんでもないスキルだが、それなりに制約がある。今の俺でも作れるか、まずは試してみよう。

俺の最大MPは12で全快しているが、通常レベルが低いおかげで作れるスキル候補は数少なかった。

 出てきたのは


 料理(12)裁縫(10) 測量(10)舞踊(10)


 の4つだけ。 ()内は消費MPだ。


 こちらにきてもう二十年年なので、いつどのタイミングで料理以外のスキルの説明と使用を見たのかは曖昧だが、どれも戦闘には使えないだろう。


 「取り敢えず料理でいいか」


 ものは試しでまずは作ってみる。

 スキルを使用するとペンと本が出てくる。自動手記の要領で書き続けると、一時間後青い一冊の本が手元にはあった。タイトルに「料理」とある。


 どうするか少し考えるが、一度使って見なければ今後がわからないと本をめくる。

 すると、脳に強い負荷がかかると同時に本から炎が出て灰になっていく。


 慌てて手を離すと、そのまま跡形もなく本は消えていた。


 ステータスを確認すると


名前 :タナカ シンジ

年齢 :38

レベル:1

ジョブ:書記レベル10

HP :250/320

MP :0/12

STR :1

DEF :2

AGI :8

INT :128

DEX :70

LUK :30 


ジョブスキル 

誤字添削 カルク 時計 翻訳 自動手記

図面作成 英雄譚作成 高速手記 強制証文作成

   スキルブック作成


スキル

料理lv5 合気道lv3


 確かに、料理のスキルLvが上がっていた。






あとがき―――――――――――――――――――――――――――――――――


はじめまして皆様

私nineyuと申します(_ _;)


 今まではずっと読み専でしたが

一念発起し今回筆を取らせていただきましました。


少しばかり長いプロローグでしたがここから物語は動き出します。

 どうか長い目で見ていただき作品をフォローしていただけると幸いです。


 では引き続き作品をお楽しみください!(_ _;)


※追記、今後のコメントでたびたび勘違いされてる方が見受けられるので補足しますとこの時点では「合気道」のスキルブックは作れません。


 理由は最大MP不足です。わかりにくくてすみません(_ _;)

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