第119話 怨敵

 ―邪神教。

 元はこの国とは別の東国の人間がもたらした、一般的な宗教だったらしい。

 50年以上も前の出来事だったらしいが国同士が緊張状態になったことで状況は一変した。

 国内にいた東国の人間達は追放処分となり、スパイの容疑などの懸念から国同士の取り決めで元の国にも帰ることを許されず、そのまま流浪の民となってしまった集団。


 その厳しい環境で多くの人間が命を落としたが一部どうやら例のパンドラの森の魔物からのはぐれが「守り神」となり、過酷な環境でも生き延びていたらしい。

 この魔物が癖者だったのか、はたまた過酷な環境におかれたこととその怨みで狂気が宿ったのか。

 その魔物を新たな「神」とした教義の流浪の民の集団がいることは冒険者による調査や商人達の伝聞で王都にも一部伝えられていた。


 所詮は流浪の民でしかなく、捨て置かれていた集団だがこの国の街の結界の破壊工作や森の魔物の一斉蜂起スタンビードと魔物側と人間側の協力体制の可能性が浮上したことで容疑者として濃厚になったのだ。

 俺自身としては元の街では噂にも聞いておらず、メイスの件もあって王都にいる間に文献に多少目を通していた程度だったが当事者のメイスやこの街に住む流浪の民達もこの邪神教団なる集団を知っており、話を聞き情報を整理させていた。


 住民によるとここからさらに北にある森を警戒するためにあったやぐら跡地周辺にそういった集団はいるという貴重な情報がもたらされた。

 こんな情報はララ達の街でも掴んでいない情報だった。現地人侮りがたしである。


 何でも彼らは東国の血を引く血統主義の側面もあり、同じく追放された人間達には敵対こそしてこないものの、友好的ともいかなかったらしい。

 関わりはないようだがここに住む盗賊達でさえ、かつて探りに出た仲間が帰ってこないことですっかり恐れ、手出ししてこなかったとか。


「まさかここで奴らの居場所を知れるとはな。

 破壊工作の痕跡があった以上、人の介入があるのならばこの危険集団を放置などできない。

 叩くべきだ。」


 ユキからの報告書を読んだメイスが強い口調で提言してくる。確かにこの集団がかつてのこのリードライトを壊滅させた実行犯だとしたのならメイスにとって許されざる怨敵ということになる。


「仰ることはわかりますが冷静に判断しましょう。本命ではあるものの、確証がないのもありますが敵の戦力、とりわけ彼らが『神』と崇める魔物の強さもわかっていないのです。

 おそらくはあのキマイラ以上の知能と力も持っているでしょうからせめてどんな魔物なのか傾向と対策はしてから正対すべきでしょう。」


 メイスを宥めつつ、今後の策を話し合う。パーティーとしての本格的な攻略が否が応でも目前にまで差し迫っていた。



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しばらく投稿できず申し訳ありませんでした(_ _;)

これからまた頑張っていきたいと思っていますのでどうかよろしくお願いします。

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