第120話 双眼鏡
ユキの調査帰還から二週間。
準備期間をとり、今作戦に必要と思われる装備、アイテム、そして「スキルブック作成」によるスキルを用意して俺達6人は邪神教の潜伏する櫓跡地へと向かった。
血統主義による排他集団ならばいつものように「変装」による潜入は非常に難しい。
さらに「守り神」をやっている魔物は俺が初めて相対するSランクの魔物の可能性は高いだろう。
これらを鑑み、慎重に外部から侵入するための準備が必要だったのだ。
相手に気取られるわけにもいかないので「飛行魔法」は勿論使わず徒歩での行軍となった。
索敵として既に超一流の域となったユキを先行させ俺達も続く。いつもは軽口を叩くユキだがメイスの重苦しい雰囲気が伝わっているのか今回は淡々と自身の仕事をするようだ。
三日分も街から離れたところにある櫓なのでそれだけ当時から森の魔物への畏怖が見て取れる。
が、それも後半日の距離となったところでユキが目標を補足した。
広い街の外の荒野といえども30キロは離れている集団の生活拠点を捉えたのは大きい。この距離ならば相手の物見とてこちらには気づいていないだろう。
この2週間でユキの索敵スキルを充実させたのもあるが一番大きい理由はララの錬金術師のジョブスキルと俺の前世知識と「図面作成」スキルを駆使して用意した『双眼鏡』のおかげだろう。
「これスゴイわね、人影までバッチリ見えたわよ。よくわかんない武器使ったりコレといい、スキルがおかしい以外でもタナカさんってやっぱり変人よね。」
報告にきたユキに一言声を掛けられるが苦笑いだけして次の準備へと移る。流石にこの世界で異世界転生の話はパーティーメンバーにもしていない。
頭がおかしい人間と思われそうで、、。
いつか話すときがくるかもしれないがそれは今じゃないだろう。
敵の戦力は未知数なのだ、このパーティーでのブレーキ役は俺なのだからしっかりしなくては。
まだ日は明るいが自然の丘の窪みを利用し見つからないよう慎重に野営の準備へと取り掛かる。
これ以上近づくのは完全に日が落ちてからだ。
交代で見張りを立てつつもしっかりと体を休め、夜へと備える。
「オイっ、交代だ。」
仮眠を取っていた所でラディッツオから声がかかる。手前で寝ていた俺だけを起こし交代する際、
「タナカ、アンタは大丈夫だろうがそれでも覚悟はしておきな。俺達はこれから場合によっては冒険者としての戦闘ではないことで手を汚すことになる。
男共はいいが嬢ちゃん達にさせたくないなんて綺麗事でどうにかなる相手じゃないかもしれん、そのときの覚悟をな。」
すれ違いざまのセリフを胸に外に出る。もうじき日は落ちるだろう、天気は小雨で星の光のない絶好の潜入コンディションとなりそうだ。
だが、秋の夕方の小雨とラディッツオのセリフは体の芯に響いていた。
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