第62話 限界

 初日の旅路は順調だった。

 重荷がないので皆、馬に乗り王都を目指す。


 このスピードが商売では圧倒的アドバンテージで、王都で各地の情報を集め、相場の先をいって儲けを出しているのだろう。

 メンバーはルフォイと俺の他は護衛として子飼いのBランク冒険者パーティーの6六で計八名。

 こいつらは腕の評判もある実力者達だが、それ以上に「黒い噂」の評判もある。

 ギルドを通さず直接ルフォイに狩りの素材を卸す、いわゆる「横流し」である。


 これをやられてはギルドは成り立たない。

 見つかれば除名など重い処分だが、取り締まることが難しいのが実情で、往々にしてあるものだが、こいつらはやりすぎだ。

 

 数年前、俺が上役にかけあい、帳簿片手に取引の現場に押し入って、国税局さながらのガサ入れをしたことがある。

 ほぼ黒として除名と、ルフォイは憲兵に突きだす一歩手前まで追い詰めながら、王都にコネがあるルフォイがギルド本部から圧力をかけさせ、失敗に終わったことがある。


 それ以来、お互い犬猿の仲だが、日が傾き野営の準備となると、流石に一緒にいなければいけない。

 俺のアイテムボックスにも野営の準備品はあるが、こいつらに手の内を見せるわけにもいかない。


 仕方ないので一緒にテントを張り、共に夜を過ごす。この辺りは物見もあり魔物もほぼいない所だ。


「ほらよ、ムカつく顔だが、うるさいアンタがギルドからいなくなるのなら、この旅くらいは仲良くしてやるさ」


 リーダーのセルゲイが温めたスープを渡してくる。ありがたく受け取ると、


「そりゃどうも、まあ取り逃がしたのはこちらだからな、寝首は掻かないでくれ」


 とおどける。


 実際俺は強くなったし、サシならコイツラにも負けないとは思うが、パーティーとして対立すると不利なのは間違いない。

 ステータスはまだ負けているし、いかに色んなスキルが使えるといっても、HPもMPも一つ分の一人の人間だ。



 ―仲間。


 俺の一つの課題だ。ソロは何処かで限界はある。

 だが、俺の「スキルブック作成」には限界はない。俺だけでなく仲間も強くできるチートスキル。


 だが、それには俺のスキルを誰かに明かす必要が出てくる。よほどの信頼がなければ不可能だろう。

 ララの現状に対してどのような策を取るかはこれからだが、王都に詳しい協力者が欲しいのもその通りだ。王都で見つかればいいのだが。

 当然だが、こいつらはモチのロンで候補外です。


 交代の見張りの間に「スキルブック作成」を行う。するとテントから


「おい、何の音だ?カリカリと」


 と声をかけられる。


「すまないな、今日の日誌だ。習慣なんだよ、すぐ終わるから」

「ケッ、これだから『書記』さんは。向いてねぇよ、冒険者なんざ!」


 こいつらの近くで「スキルブック作成」などやりたくはないが、ユーリーじゃあるまいし、こいつらごときが気づく筈もなし。

 この期間に作らないのは損失が大きすぎる。


 興味を失い横になるパーティーを尻目に、王都での計画を練る。




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