第61話 出立

 明くる日、俺は出立のため門に―ではなく、商工ギルドの前に来ていた。

 ララの現状把握やその打破に向けてまずはやらなければいけない事があったからだ。


 それは冒険者ランクを上げることだ。

 上のランクにいくほど王都での情報収集にも役立つし、上手く行けば貴族達に近づきやすいこともある。


 現状Dランクダンジョンは攻略しているので休みも利用して簡単なダンジョン以外の依頼もこなしてきた。

 今回は王都に向かうのを利用して護衛の任務だ。

 とはいえ、Eランクのソロ冒険者にちょうど良く護衛の依頼などないものだが、今回は向こうが遊び半分で雇ってきた。


 ムカつくことこの上ないが、都合がいいのでこちらも受けた。商工ギルドの前にはこれから数日の旅だというのに、荷物も大して持ってない行商人―ルフォイが待っていた。


「おやおや、待ちましたぞ職員さん。いや、タナカさんと呼びますかな。こちらは荷積みもないのでね、すぐ立てるのですよ。いいですよ〜、『アイテムボックス』は!」


「時間通りですよ、ルフォイさん。『書記』には正確な時間のわかるスキルがあると何度かご説明していますよね?」


 ルフォイ―俺のいた冒険者ギルドに出入りする行商人で王都でも幅を利かす豪商だ。

 俺が辞めたと聞きつけ、嬉々として日程を合わせて俺を雇い、からかいに来たのだ。


 奴もまた俺がやっかいだったようで、これからはやりたい放題できるとまずはご機嫌に挨拶をしてくる。


 商人のジョブレベル5で取得する「アイテムボックス」はポーターレベル1のそれとは規模が断然違う。

 五名前後のパーティーの装備と数日の食料品程度のポーターに比べ、馬2頭で引く荷馬車3台以上入り、また「生きた人間」を本人の承諾ありで入れることができるため、「奴隷商人」としても活躍できるようになる。


 これを手に入れてからブイブイいわしてるというわけだ。


「いやはやしかし、アナタがギルドを辞めて冒険者になったと聞いたときは耳を疑いましたが、実物を見ると中々似合ってるじゃないですかその姿!w」


 こっ、こいつ人が気にしてる所を嘲笑しやがって、今に見てろよっ。


「安心してください、タナカさんがいなくなってもギルドは大切なお客様です。

 ますますご贔屓にさせていただくので気兼ねなく冒険に出られるがよい。

 まあ、今回はウチが雇っている屈強な傭兵がいますので、旅の話し相手をしてください。Eランク冒険者を旅で雇うくらいウチでははした金ですから」


「時間です。無駄話はこれくらいにして向かいましょう。私は護衛として雇われたので、あたりを警戒しますので少し離れますね」


 奴の御託に付き合う気はなく、素っ気なく返す。     

 奴を野放しにしてセリルさんたちに迷惑を掛ける気はない。


 この半月の間の休みを利用し、レベルを1上げ最大MPが180を超えたことでちょうどジョブレベル5のスキルブックが解放された。

 王都での活動のためにも金がいる。数冊、他の商人に「アイテムボックス」のスキルブックを流せば奴も独占的な商売はできなくなるだろう。


 急なライバルの出現にアタフタしていろ、今後必要ならさらに他の方法でギルドに手出しできなくさせてやろう。


 天気は快晴、良い旅路の日となった。





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3章開幕です。


皆様のおかけで6月4日現在


カクヨム異世界ファンタジー部門ランキングで24位までこれました!!


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それに見合う作品になるようこれからもより頑張ります!!


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