第138話 守りたいもの
朝方まで続いた緊急会議も一旦解散となり、部屋へと戻る。
現実感などなく、足取りもフラフラだ。白昼夢のような出来事からの現実的な対策の会議というギャップが一時的に疲れを忘れさせていたがそれが一気に押し寄せていた。
「ふう、無理だ、ムリ。起きてからにしよう。」
部屋で一人になったことでスキルを使ったメデスとの会話の起こしや、先程までの会議と今後のためのプランをまとめようかと思ったが諦める。
まずは仮眠だ。何故ならそう、俺は徹夜に耐えられるほど若くはないからだ。
―――
『時計』のスキルのアラームで昼前には無理に起きる。うなされていたのだろう、寝間着は肌寒い冬前だというのに汗でクタクタになっていた。
それでも浴場で汗を流し、着替えればようやっと気合が入り直した。へこたれやすいがここまできたらへこたれ慣れている、グチグチ言っていても仕事をするのが社畜の性って奴だ。
『自動手記』を使い、まずはメデスとの会話の情報整理からだ。本当は皆と協力してほしいところだがどうやらメデスは俺が「転生者」であること、またその転生についても何か知っているようだった。
いつまでも皆に伏せているつもりではないが話が進まなかったり、要らぬ不安が増長しても困るからな。
「…そうか、彼女のいう『被害者』って、、。」
検めて冷静に彼女との会話を見直すとある一つの仮説が見えてきた。しかし、まあ仮説は仮説だ。
今は心に閉まっておこう。それよりも戦いに必要な情報だ―――。
昼過ぎ、一通り確認したところで外へ基本業務の進捗の確認に出た。
昨夜の緊急会議で何かあったと思う住民もいたが、まだドラゴンの侵攻の話は伏せていた。
不安があっても皆、一様に仕事をして汗を流していた。自分たちの手で確かな復興の手応えのある街に、かつて怯えることしかできなかったときとは違う愛着が出てきているように感じる。
それは、俺だって同じことだ。
ここまで俺がどれだけ表に見えない仕事をしてきたと思ってるんだっ!
あいも変わらず報われずらい仕事だがようやっとここまできたんだ、誰がドラゴンなんぞに好きにさせるかっ!!
「ああ、職員さん。実は必要な資材が足りなくてね、―――。」
元アル中の建築士の旦那に声を掛けられる。いつの間にか俺の呼ばれ方は以前のように『職員さん』になっていた。
「はいはい、今行きますよ。」
残された時間は少ない、今日の夜にもまた会議があり、そこで今後の方針を決定しなくては準備は間に合わないだろう。
住民達への説明は明日の朝かな、それまでは俺も変わらず接しようとしていた。
―それはただの現実逃避だったのかもしれない。けれど、その僅かな時間は俺の守りたいものを噛み締め、戦う勇気をくれるものとなっていた。
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