第103話 待ち伏せ

 王都にいる間からその後についても考えておきメイスの故郷であるリードライトの現状についても調べていた。

 

 ―35年前、街は一夜にして無人となった。


 その後王都からの調査派遣により魔物の大半は既に森に帰っていることが報告され残りについても数度に分け討伐隊が派兵されて街の大部分は一時人間の手に戻ったという。

 しかし街の惨状は凄まじくアダマンタイトの城壁の一部は崩れミスリルの魔法陣も既に起動しておらず結論としてその街は放棄されることとなった。


 結局あの森の魔物の侵攻は何だったのか、魔法陣が弱まるタイミングと何か関係があったのかなどはわかっていない。

 街の事後調査により城壁を破壊された当時の絶望の手記が発見され続きは当然なく、そのページは血で滲んでいたという。

 

 またメイスに聞くと放棄されたその後も定期調査団が数年おきに入りその報告によれば現在は街を追放された流浪の民や盗賊集団、さらには森から現れる魔物などが混在に住処としたカオス地帯であるという。


 逆に考えれば森からあぶれた魔物ならば本格的な森への侵攻の前のパーティーのいい仮想敵といえるだろう、経験値的にもね。

 それにここの盗賊達というのはララやエレイシアのいる街と王都を行き交う人間を襲う輩だ、全員ひっ捕らえて街の復興にコキ使ってやろう。


 王都ではジョブレベル3までの盗賊にしか会えなかったが高レベルの盗賊がいれば「スキルブック作成」の条件も満たしておきたい。

 ラディッツオに聞いてもやはりあのダンジョンで手に入るレアアイテムは盗賊のジョブを持つ人間の活躍があったらしい。

 あそこにはアダマンタイトの加工やミスリルの魔法陣に関するスキルブックも眠っている可能性がある、攻略目的としてもアイテムゲットに関わるスキルは入手しておきたい。


 王都から7日ほどの道程を経て目的地のリードライトが見えてきた。

 手っ取り早いのはまた皆がメイスのアイテムボックスに入って飛行してもらうことだが北方はBランクのワイバーンが集団で飛行していることがあるそうなので魔力を消費しながら単身では危険と判断して歩いて向うこととした。


 道中では盗賊にこそ出くわさなかったが俺が王都に来たときとは比べ物にならないほど魔物には襲われまたそのランクも高かった。

 街が廃墟となってから交易の道の確保のための憲兵がいなくなった影響だろうが自然とこの街に入る緊張感も増してくる。

 ましてメイスの心中は俺がわかった気になるのも失礼だろう、表情が険しくなるにつれ街のそばまできているのが伝わってきていた。


 ―そんな遠目で皆が街の確認ができたちょうどそのときだった。


 俺の持つ斥候のジョブスキル「罠感知」が自動で反応する、その反応からこの先に待ち伏せをされているのを感じる。そして俺が反応した一秒後には今度はラディッツオも反応した。


 いや、あなたは「罠感知」スキル持ってないでしょ、前の戦闘でも「攻撃感知」スキルなしで攻撃魔法気づいたりさ。

 これあれだ、ユーリーの「鑑定」もどきと一緒だ。この世界絶対ステータスには見せてない隠しスキルあるでしょこれっ。


 ともあれ気づいてしまえばこちらには「虎」と「龍」と「社畜」がいる、恐れずに足らずだ。

 …うん、最後は違う、、俺はもう自由な筈だ。

 そんなに自由になった気はしてないけど。


 まあそんな自虐の憂さ晴らしはこの先の奴らに当てるとするか、


 盗賊達との戦闘が始まる。


 

 


 


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る