第135話 戦争協約
メデスがララやエレイシアにもわかるようにこちらの言語で人類への「処刑宣告」をしたことでこの場の空気がまた一新した。
メデスの言葉をすべて鵜呑みにするつもりはないが、それでも最悪を想定するならば彼女の宣告の信憑性とそれを実行しうる実力があることを考えなくてはいけない。
「う、嘘ですよね、タナカさん。相手は年端もいかない少女ですよ?
そうだわ、あの魔物の世話役って話でしたし信棒していた相手を失って私たちに虚言をしているだけよね、、。
エレイシア、彼女を一度取り押さえて落ち着かせてからもう一度場所を変えて話し合いましょ、、ね?」
この復興途中の街、そして彼女たちの故郷への突然の襲撃宣告に明らかに狼狽え、現実から目を背けようとするララ。しかし、
「……、できません。先ほどからそのつもりで機を窺っていましたが全くといっていいほどその隙がありません。おそらく何らかの戦闘技術系スキルを私より遥かに高いレベルで収めています、ただの虚言癖の少女ではありません。」
俺達の中で最も剛毅で血気盛んなエレイシアの冷静な判断に息をのむララ。残念ながら俺も同意見だ、スキルlv8まで上げている「合気道」がむしろ逆に自然体の矮躯の少女には打ち込む隙が微塵もないことを告げていた。
「タナカ、悪いがこの場にて私はララお嬢様の命を優先する。いつも貴方にばかりに負担をかけるがこの怪物の相手は私では無理だ。……すべて、委ねていいか?」
ララの狼狽にこちらまで動揺が伝播する情けない俺だが今のエレイシアの言葉で我に返り再び意識をメデスに向け直す。
そうだっ、後手に回っていたがここで俺がしっかりしなくてどうするっ。
今、メデスを好き勝手宣告だけさせて帰したとあっては後々に悔やむことになるのは明白だ。
何も直接戦闘だけが戦いではない、俺の
「ふう。……メデスさん。今更ですがあらためて自己紹介をしましょう。
「ハアァッ?アンタいきなり何よ、その対応は?」
一呼吸置いてからゆっくり、そして慇懃無礼なほど丁寧にメデスに話しかける。
その内容もかなり攻めたメチャクチャなセリフだった。
相手は素直にこの場ではやり合わないと言ってくれたんだ、なら多少強引にでも話の主導権は取り返さないと損だろう。
また、敢えてゆっくり話しかけているのもここまでの理解不能なメデスの言動を咀嚼する時間稼ぎでもある。すべてはこの出鱈目な相手に最悪を想定しつつ、少しでもこのふざけた戦争協約なるものを有利に事を運ぶため。
同時に彼女の正体を探るために敢えてこちらのバレているであろう情報を開示してみせる。
―世界の命運すらかかっているこの場面でも俺は相も変わらず社畜としての戦い方を選択したのだった。
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唐突なラスボスとの邂逅イベントですがおっさん主人公にはおっさん主人公らしい立ち回りとなりました。
もう少し戦闘のない地味なシーンが続きますがこの作品らしいと楽しんでもらえれば幸いです。
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