第7話女将さん
「助かるねぇ。シンは小さい割に力持ちだから。ドワーフの血でも入ってるのかね」
ひょいっと、ワイン30本が入った木箱を抱えて台車に乗せると、宿屋の女将さんが、僕の背中を叩いてほめてくれる。
「何かあれば、他の物も運びますよ」
ついつい嬉しくて、他のちょっと重い荷物も動かしてあげる。
この前、頭の中で「何かお手伝いいたしましょうか?」と声をかけられた時はびっくりした。
その声と少しお話していたら、僕には、【データベース】と言うスキルがある事が分かって、その中で、自分の今のレベルが分かる事に気が付いたり、いろいろな事を調べられる事が分かった。
その中で、この世界には、レベルがあるみたいなのに、普通は自分のレベルなんて知る事が出来ない事、人のレベルも調べる事は出来ない事が分かった。
ただ、データベースだけは別で。
例えば女将さんを調べると。
名前] ハス
[職業] 商人
年齢 29歳
体重 56㌔ 身長 160cm
初恋 5歳 ※※※
[ステータス]
[Lv] 5
[Hp] 100
[Mp] 30
[力] 25
[体] 23
[魔] 24
[速] 18
[スキル]
演算
なんて出てしまう。
あ、※の部分は初恋の人の名前だけど、僕だけの秘密。だって、お世話になってるし、秘密にしておいた方がいいと思うしっ。
体重を少し気にしてるのも、、、秘密にした方が良かったかな、、、
まあ、そんな感じで、ちょっと秘密にしておきたい事まで、全部調べる事が出来てしまう。
後、音声で、別言語の通訳もしてくれる。
だから、実は魔物のウサギとも話せたりするんだけど、誰も信じてくれない。
あと、僕のステータスだけど、ちょっと異常だったりする。
[名前] シン(**********)
[職業] 孤児
年齢 11歳
身長 155㎝ 49㌔
[ステータス]
[Lv] 0000
[Hp] 200
[Mp] 200
[力] 250
[体] 80
[魔] 100
[速] 30
[スキル]
データベース EPシステム 火炎魔法・使用不可
水魔法 風魔法 回復魔法 絶対結界
残EP 500
だったりする。
そう。僕にはレベルが無いみたいで、EPを貯めて、それをステータスに振る感じだった。
だから、敵と戦えば戦うほどEPが溜まって、強くなれる。
もう、女将さんの10倍の力があるしね。
僕が【データベース】の最初の声を聞いた時、EPが500もあった。
きっと村で何かあったんだろうけど。
全く思い出せないし、思い出そうとすると頭が痛くなるから、気にしない事にした。
後、ステータスにあるように火魔法は使えない。
というか、この世界には、魔法がある。
僕は、風と水、回復魔法が使えるから、喉が渇いたらこっそりと水魔法で作った水を飲んでるし、水浴びをした後、風魔法で乾かして、知らないふりをしてたりしてる。
なんか、シスターさんの二人には気が付かれてるみたいだけど。
そうそう。僕は火を見る事が出来ない。
火を見たら、息が出来なくなる。
だから、いつも料理場には近づかないようにしていたりする。
目が覚めた頃は、火を見たら暴れ出したりして、シスターにすごく迷惑をかけたのをうっすらと覚えてる。
まあ、そんな感じで、力だけは一杯あるから、僕はいつも通り、普通の大人の人が配る2倍近い量の荷物を引いて、ワインを配って回る。
ワインといっても、ブドウジュースだけどね。
「終わったよ~」
「いつも、ありがとうねぇ。食べていくだろ?」
僕が配達から帰ってくると、女将さんが朝ごはんを準備して待っててくれる。
パンと、スープ。スープに少しだけお肉が入っているのが、とっても嬉しい。
「ありがとっ。いただきますっ!」
僕は元気いっぱいに挨拶をして、スープを吸い込む。
「いつも思うけど、変わった挨拶よね。食事前なのに」
女将さんはにこやかに、僕がスープをがぶ飲みするのを見て笑う。
「なんかね、言わないと落ち着かないの」
僕は返事をしながら、女将さんが出してくれたパンを懐へと入れる。
持って帰って、妹たちに上げるんだ。
弟達には絶対にやらない。早く大きくなって、自分で稼いで来いと、大喧嘩をするたんびに思うから。
結局は、シスターさんに怒られて、「平等!」て言われて、弟たちにも配る事になるんだけど。
「じゃあ、ありがとうね」
「こちらこそだよ。また、明日もお願いするね」
にこやかな笑顔で送ってくれる女将さんと別れて、僕はそのまま修道院へは戻らずに、街の端っこに行く。
町の周りには、魔物避けで、高い壁が張っていあるだけど、ここだけちょっと壊れてて、子供なら抜け出せる。
僕は、そこから、こっそりと町の外へと抜け出していくのだった。
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