2章 少年と少女

第67話一歩

「シュンリンデンバーグさん。こちらが今回の報酬になります」


僕は、受付で討伐依頼を達成した事を伝えると、報酬を受け取る。

「おい。あれだろ?暴緑の」

「やめとけ。魔物を倒す時のあいつの顔、、、見た事あるか?」

「ああ、、あの日は、、寝れなかった、、、」


そんな囁きが聞こえて来る。


そう僕は冒険者に戻れていた。

少し前の事を思い出す。

ずっと引き籠っていた。

引き籠っていたのに。

お腹は空く。

「ほら、いつまでうだうだしてんだよ」

そう言われながら、ヒウマにパンを突っ込まれた日には、あいつを殺そうかと思った。


男からのあーん とか、誰得だよ。

「嫌なら、出てこいや。それとも、蹴りだしてやろうか?」

本当に殺そうかと思った。


「ヒウマは、本当に面倒見がいいのにゃ、、」

呆れた顔でそんなヒウマを見ていたにゃんも、少し笑っていた気がする。


結局、ヒウマに部屋から引きずり出されるように食堂へ連れていかれて。

そのまま、酒を飲んでたダルワンさんから、水筒を押し付けられ。

一気飲みして、意識を飛ばし。

「お前は、飲むな」

と次の日にダルワンさんに真剣な顔で言われ。


「とんでもなかったなぁ」

ヒウマにも呆れられ。

そのまま、3人で依頼に行き。


気が付いたら、僕は普通に部屋から出れるようになっていた。

落ち着いてから気が付いたのは、あの事件からすでに1か月も経っていた。


今更、ライナたちを追いかけるのも、、

そんな言い訳じみた考えを自分に押し付けて。

気を紛らわすように、魔物の討伐を処理していた。



「ああ。二人から、特にレイアさんから頭を下げられたんだよ。お前は、弱い所があるから。よろしくお願いしますってな」

ある日、お礼を言った僕に照れながらヒウマが言った言葉だ。

「シュンは何かあったら引き籠りがちだから、出てくるように何でもしてくださいって、言われてたにゃ」


レイア、、君はいいお嫁さんになると思うよ。



「を。シュンじゃねえか。今日もしっかり稼いでるか?どうだ?今度、一緒にやらねぇか?」

ランクの高い先輩冒険者からは、時々誘いがくるけど、僕は手を振ってそれを断る。


「無駄でしょ。シュンさんは、ダルワンさんか、ヒウマさん以外と組んでいる所を見た事ないですから」


そんな会話を聞き流しながら、ギルドの建物から出て行こうと扉に手をかける。


「森の大攻勢かぁ。コボルトシャーマンがいたとか、100匹以上の魔物が襲って来ていたとか、眉唾物だけどなぁ。この辺はいたって平和だったし」


僕はギルドを後にする。


冒険者ランクはDにまで上がっていた。



それと、データベースではこの世界のステータスMAXは、999のはずなのに。

僕は、ステータスが1000を超えれる事が判明してしまった。


レベルも99がMAXで。

ステータスが999になる人はほとんどいない。

というか、レベルMAXまで上がる人がほとんどいない。


それに、【鑑定】スキルは、そこらに転がっているスキルじゃなくて、とんでもなくレアみたいで。

とりあえず僕がスキルを見られる心配はないみたいだった。


「さて、、頑張らないと」

僕はもうひと稼ぎと、城壁の外へと出る。


魔法球。


そこに希望を見出したのは間違いじゃなかった。

魔法球を通すと、無詠唱でも魔法が撃てる。

もともと、無詠唱の僕には関係ないと思っていたけど。

もっととんでもない事実があった。

魔法球からの魔法発動はクールタイムが無いのだ。


つまり、魔法球から、個別魔法を連続に無数に打てる。

絨毯爆撃が可能なのだ。


魔法球を風魔法で動かし。

敵の真ん中へ移動させ、魔法を四方八方へ次々と飛ばして、倒していく。


魔物は、魔法球を敵と勘違いして、魔法球へと突進していき、

魔法球が崩れても、別の魔法球がその魔物を仕留める。


世界一安全と思われるような狩り。

簡易ファン〇ルと化した魔法球。




「これだけ使えるのか分かってたら、もっと戦いようもあったのに」

ライナたちの事を考えると、そんな思いも湧いてくるけど、今更考えても仕方ない。


けど、これで後悔するのは2度目。

もう、こんな思いはしたくない。


僕はせっせと魔物を狩り。

その得たポイントを魔力に。力に変えていく。


時々、メイスで魔物を殴り。仕留める。


「あれ、シュンじゃねぇか?」

「ああ、暴緑かっ!」

「縁起でもねぇ、、、、」

「無表情で、魔物を仕留めるシュンも、悪鬼の顔で、なぐりつける顔も、怖すぎるよなぁ」


そんな声が聞こえて来る。

けど、再び立ち上がり、ここに立っていられる事に。

少しだけ喜びを感じていた。


いつものスープが売り切れていた時にはへこんでいたけど。

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