第51話オオカミと商人
これなら使える!
そう思ってた頃もありました。
ダルワンさんから、風魔法の基礎ともいうべき、弾き飛ばしの魔法を見せてもらってから。
魔法2つの同時発動を行い、これで、フ〇ン〇ルというロマン武器が使えるとおもっていたのに。
今、僕は激しい頭痛と吐き気に襲われていた。
制御が、制御が、、、無理。
まず真っすぐ飛ばない。
地面に刺さる。速度を上げると、どこまでも空中へと飛んで行く。
行き過ぎたと思って、逆噴射をかけると、どっかへ行ってしまう。
宇宙空間で飛ばすよりも、はるかに難しいと思う。
2個同時に動かそうものなら、吐き気すらして、目がぼやけだす。
右手でチェスをしながら、左手で編み物を。足でビーズアクセでも作っているような感覚。
絶対無理と叫びたくなるほど、手が、足が足りない感覚。
それでも、諦めきれない。
だって、ロマン武器だよ?
狩りの後。暇な時。。
僕は地道に魔法球を弾き飛ばす。
そして、、吐き気にうずくまっていた。
「シュンリンデンバーグ様。お願いがあります」
学校帰りに、依頼を見に来たら。
突然受付のお姉さんに、頭を下げられる。
今日は、ライナも、レイアも、用事があるとかで付いて来ていない。
なんか、ライナのお姉さんと用事があるらしい。
ふと見ると、ダルワンさんが、エールを呑んでいる。
ギルドの受付スペースでの飲酒は厳禁だったと思うけど。
酒飲みおやじめ。
「本来なら、こんな事、、お願いは出来ないのですが。本当に、個人的な依頼なので、、聞いていただけますか?」
必死な顔をしている受付のお姉さん。
とりあえず、聞くだけ聞いてみようかな。
了承すると。
「あ、、、ありがとうございますっ!実は、私の兄が、行商をしているのですが、昨日到着の予定が、まだ着いて来ていなくてっ!この前、薬草を取りに行っていただいた森の横の街道を走って来るはずなのですが、心配で。心配で。もし良かったら、、お願いできませんか」
本当に必死だ。
「いいですけど、、依頼として、本来の冒険者さんに出すのはダメなんですか?」
「変なパーティに依頼が渡ってしまうと、調べてもないのに、何もなかったと言われて、お金だけ取られる事もありまして、、こんな事、受付としては言えないのですが、信頼できる方しかお話が出来ないというか」
悩んでいる受付のお姉さん。
そんな事をする冒険者もいるのか。
この仕事は信頼が一番だと思うんだけどなぁ。
そう思っていると。
「ああ。これがあるから、心配になるよね」
壁に貼られている依頼書の中で、目にとまった物を手に取る。
【街道沿いのオオカミ退治】
「オオカミ退治かぁ。真面目に戦闘するのは嫌いなんだがなぁ」
ダルワンさんは、ポリポリと頭をかきながら、あくびをしている。
「まあ、とりあえず、やるかぁ」
首をすくめると。
「地に生まれし小さな光。 空に生まれし小さな光。その光を乱す障害を我に指し示せ」
気配察知の魔法。
けど、聞いててちょっとだけ恥ずかしくなるんだよね。
詠唱は、僕には出来そうにも無い。
「あ~。意外といるなぁ。てか、おかしくないか?20体近くいる気がするんだが?!これじゃ、商人が、動けるわけもねぇ」
焦っているダルワン。
だろうね。
僕のマップ上だと、30体近くの赤い印が動いている。
というか、青い印が、追われてる?
このままだと囲まれる。
僕は、走り出す。
「どしたい?」
突然走り出したのに、しっかりと着いてくるダルワンさん。
流石、ベテラン冒険者だと思う。
「この先」
「ああ。ちとやばいな」
走っている先の状況を一瞬で把握したらしい。
目の前で、荷馬車がこちらに走って来る。
車輪も、壊れているのか動きがおかしい。
そして、その後ろからは。
「20?もうちょいか」
冷静にダルワンさんが数を数える。
オオカミの群れが追って来ている。
「魔法球!」
僕は魔法球に、風魔法をかけて。
荷馬車が通り過ぎると同時に、魔法球を弾き飛ばす。
風の盾を背負ったまま。
魔法球は、オオカミの群れへと突っ込み、数匹を弾き飛ばす。
「ほぉ。なかなか」
「火よ。我が声に答え、その威厳と価値を示せ!我が前の敵を焼き尽くし、その力を鼓舞せよ!ファイアーボール!」
ダルワンさんの火魔法が飛ぶ。
やばっ。
僕は思わず目を瞑る。
目の前で、火が巻き起こるのが分かる。
まともに見てしまうと、動けなくなる。
火が落ち着いたのを見計らって目を開けると。
オオカミの動きが遅くなっていた。
火を怖がっているらしい。
「エアスラッシュ」
逃げ腰のオオカミ達の足を切り裂いて行く。
いろいろがんばりすぎた結果。3つまでなら魔法を同時に打てる。
「規格外って言葉、知ってるかい?」
ダルワンさんが何か言っているけど。
地面を触る。
「凍土!」
道そのものを広範囲で凍らせる。
足を切られて、怒ったオオカミ達が、、凍った道に滑って転がって行く。
僕は、メイスを取りだして、殲滅に向かうのだった。
「まあ、そっちのが、坊主にとっちゃ早いって事か」
26体。
全て頭を叩き潰した。
いや、数体は、首を折ったから頭から毛皮を取れるのもいるかも。
オオカミと言っても、僕を背中に乗せて余裕なくらいに大きい。
「駆け出しなら、逃げ帰るんだがなぁ」
笑うしかないのか。呆れた声を上げながら、水筒の中身を呑むダルワン。
「あ、、ありがとう」
馬車の主が、降りて来て手を差し出している。
僕は、その手を握り返す。
馬車の中に、青い髪の子が乗っているような気がしたけど、気のせいだろうか?
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