第42話特殊トーナメント(ヒウマ)

4日目。

「第4回戦、ヒウマ対、ブモ 開始っ!」


今日はヒウマ先輩の戦いを見てみたくて、試合会場に来ていた。

準優勝者の戦い方って、どんななのか、気になっていたのだけど。

ヒウマ先輩は、開始の合図とともに、ナイフを投げる。

ブモ先輩は、槍で、そのナイフを全て叩き落とす。

それでも、さらにナイフを投げるヒウマ先輩。

ブモ先輩の頬に、体に小さな傷がつき始める。


「ナイフの間に、土針ロックニードルが紛れ込んでる。

あれは避けれないな」

レイアが小さく呟く。

本当に、レイアは目が良い。


再びナイフが投げられる。

だんだん投げる速さと、間隔が早くなっている気がする。

というか、すでに50本近く投げて無い?


さらにナイフが投げられる。

ヒウマ先輩の手が光ると同時に、両手にナイフが生まれて行く。

「ナイフを生み出すスキルでも持っているんだろうか?」

僕はヒウマ先輩の手を見続ける。


ナイフの雨の中。苛立ったブモ先輩は、槍を回しながらヒウマ先輩へと近づいて行く。

 けど、まだまだだ。

僕の方が槍は扱いが上手い。なんて言っても、40年槍を使い続けたんだから。

けど、今、鉄の槍なんか使ったら曲がってしまうから使えないけど。

目の前まで近づいてきたブモ先輩を見て、ヒウマ先輩が笑うのが見えた。

唐突に、片手を空中に生まれた光の中に突っ込む。

そこから取り出したのは、腕より少し長い刀だった。


「待ってたぜ」

横振りに刀を振り抜く。

咄嗟に槍で受けるブモ先輩。

至近距離から、空いている手から投げられたナイフが突き刺さる。

咄嗟に後ろに跳びのいて距離を取るブモ先輩。

「ほら、逃げてるんじゃねぇよ」

笑うヒウマ先輩の目は獲物を狩る目だ。


それにしても。

空中から、武器を取り出した。今のは、空間収納魔法だと思う。

収納魔法があった事に、ドキドキしてしまう。

空間収納魔法は、別系統だったのか。引き籠っていろいろ調べていた時にも、出て来なかったんだよね。

データベースに、すぐ尋ねてみると、あっさりと返事が返って来た。


空間収納魔法

魔法系統の中で特殊。

本人の魔力に応じ、別空間に収納スペースを作り、自由にアクセスできる。

スペースの広さは、本人の魔力により変動する。

魔法を封じられると、接続不能になる。

収納中は、時間の流れが緩やかになるため、生ものでも、1年以上保管可能


異次元収納と言う、上位スキルがあり、そちらは、収納している対象の時間が止まる。どんな状況化でも、使用できる。

スキル保持しているのは竜族のみであり、竜王のみがこのスキルを使用できる。

それゆえに、竜王以外がこのスキルを持っている事が判明すると、竜王以外が持ってはいけないスキルと言われ、竜族に命を狙われる事もある。


そんな検索結果が出て来る。

僕は小さくため息を吐く。

異次元収納は、めちゃくちゃ凄いけど、ペナルティがきつすぎる。

特に竜族に追われるとか、今のステータスでは絶対無理だと思う。


けど、昔やったゲームを思い出してみても、持ち物に個数制限がないゲームは難易度が高い物が多い。

そして、今の現状。

この世界は、現実世界と一緒。

クソゲーと言われても仕方ない世界。

たった、10数体の魔物に囲まれても死ぬ世界。


蘇生魔法なんて無いし。手足が生えて来るような便利な魔法も無い。

千切れた腕とか、足とかはくっつける事が出来るみたいだけど。

今はまだ使えないけど、もう少しで覚えられる。


空間収納魔法は、絶対必要だ。

腐るほどの回復薬と、解毒薬は欲しい。

作れるし。


「空間収納魔法、、、覚えるには、EPが足りない」

かなりのコストがいるみたいだ。

まぁ、便利だし。仕方ないよね。


魔物を狩りに行きたいな。

僕がそわそわしていると、ライナが僕の袖を引っ張る。

「なんか、思う事でもありましたか?けど、トーナメント出場者は、終るまで外に出るのは禁止ですからね」


なんで分かったの?

「シュンは、思っている事が分かりやすい」

レイアまで笑っている。

ちょっと凹んでしまった僕の目の前で。


「ニードルラッシュ!」

土針を無数に生み出して、針の雨を降らしたヒウマ先輩が勝利していた。


「あれが、本物のニードルラッシュにゃっ!」

どこからか、ドヤ声の猫娘の声が聞こえて来る。


結局、その後は、3人で出店めぐりをして。

良く分からないバッジを買ったりしてしまった。

お祭りの時って、勢いで、良く分からない物を買ったりしてしまうよね。


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