第41話一回戦(ロア)
2日目。
僕たちは、闘技場で観戦していた。
「絶対に、絶対に、あんな戦い方はダメですからね!」
「俺より無茶してんじゃねぇよ!」
今も、両側から、二人にこんこんと言われている。
攻撃を全部受けてカウンターに全力降りした戦い方が駄目だったみたいだ。
「本気で、何回も叫びそうになったんですからね!」
「殴りに行きそうになったぞ。絶対にやめてくれよ!」
「「聞いてますかっ!」」
いや、手数が多いだけで、威力が無かったからカウンターの方が手っ取り早かったんだけど。
そんな事を言おうものなら、二人からさらに説教を受けそう。
「うん、、分かった。大丈夫」
「本当に?」
「なんか、絶対またやりそうなんだが?」
僕、、信頼されてない?
「2日目!一回戦! ロア対、モブ!開始っ!」
「ほら。始まったよ」
「「絶対、分かってない、、、」」
二人の視線が痛い。
ロア先輩と、モブ先輩が対峙していた。
モブ先輩は、何処から見ても魔法使いだ。ローブに杖を持っている。
「行きますよ」
闘技場の真ん中で、ロア先輩がレイピアを抜く。
それだけで凄い歓声が沸き起こる。
半分以上は、女の子の声みたいだけど。
ちらりと、ロア先輩は何処かを見た気がした。
「ニードルラッシュ!」
鋭い突きを無数に打ち出す。
「効くかよっ!」
モブ先輩は、魔法の盾を駆使しながら、その全ての攻撃を受け流そうとするけど。
「ちっ。マジか、、マジかっ!?」
無数の突きが、魔法の障壁を打ち砕く。
「ありえねぇ!」
新しく魔法を詠唱し始めたモブ先輩の頬をレイピアが切り裂く。
「んなっ!」
詠唱中断。的確だ。
咄嗟に、杖を逆手に持とうとするモブ先輩。
へぇ。あの杖。反対側がニードルになってる。
近接用ロッドか。
その手が、レイピアに貫かれる。
「かかったなっ!」
杖を落とされながらも、蹴りを繰り出すモブ先輩。
完全に死角からの攻撃だったはずなのに。
その足を救い上げるロア先輩。
バランスを崩したモブ先輩が倒れる。
「や、、やめろ、やめろ」
「終わりです。ニードルラッシュ!」
「勝者!ロア!」
凄まじい歓声が、会場を埋め尽くす。
「圧勝だね」
相手は何もさせてもらえなかった。
ロア先輩。流石は、優勝者だ。
「ちっ」
舌打ちが聞こえる。
ふと横を見ると、ヒウマ先輩が、いつの間にか僕たちの傍に来ていた。
「やっぱりあいつ、気に喰わないにゃっ!」
猫語? 先輩が?
突然聞こえてきた可愛い声に、思わず二度見する。
「ヒウマの必殺技を真似るなんて、挑発にゃっ!いけすかない奴にゃっ!」
また、可愛い声が聞こえる。
ふと見ると、ヒウマにくっつくように、小さな女の子がいた。
よく見ると、猫耳が付いている。
獣人?
大きい黒い目はくりくりとしていて、すごく可愛い。
尻尾もとても触り心地が良さそうだった。もふもふしたくなる。
「何を見てるにゃ?私はヒウマの物にゃっ!ぐにゃっ!その目は、よこしまな事を考えてる目にゃっ!危ないにゃっ!」
ヒウマに抱き着く猫耳少女。
呆れた顔をしながら、その頭や、耳回りを撫で始めるヒウマ。
だんだんと顔が緩んで、吊り上がっていた目がほんわかとし始める。
初めてみたけど、獣人って、本当に可愛いな。
そんな事を見ていると、突然足に痛みが走る。
横を見ると、ライナが顔を膨らませて、そっぽを向いている。
踏んだな。
明らかに不機嫌になっているライナの頭をそっとポンポンしてあげる。
なかなか機嫌が直らないライナに、向き合おうとしたとき、反対側から、ドスっと肘打ちが入った。
反対側を見ると、レイアが、すこし目を吊り上げてこちらを見ている。
レイアの頭もぽんぽんとしてあげる。
「お前も大変そうだな」
ヒウマ先輩は笑いながら、猫耳少女を撫でまわす。
すでに、とろんとした目をして、ゴロゴロと喉を鳴らしている少女を笑いながら見つめる。
「しかし、、ロア。流石だな。去年よりも強くなってやがる」
ヒウマ先輩は、僕を見ると。
「お前も、かなり無茶をやるみたいだし。今回は楽しめそうだ」
にやりと笑うヒウマ先輩。
そんな先輩に、僕は両方の機嫌を取る事に必死で何も返事を返せない。
そんな僕を見て、思いっきりヒウマ先輩は笑っていた。
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