第40話一回戦(特殊トーナメント)

「さあ!皆さんお待ちかね!ついに始まる、最強、最高のトーナメント戦!特殊トーナメント!言うまでもなく、武器あり、魔法あり!なんでもありの最強決定戦だ!今、学園最強を決める戦いが始まるっ!何も言う事は無い!皆で最強を堪能しよう!」


ついに特殊トーナメントが始まってしまった。

出場者は、10名だけで、一日1試合。

ルールは簡単。

相手を殺すな。

だけである。


「ロアと、ヒウマは、決勝で当たるのか」

「こりゃ、去年と同じじゃないのか?」

「いや、シュンリンデンバーグとか言うやつが出てるぞ」

「言っても、一年だろ?ダメ。ダメ」

「1年でこのトーナメントに出るのがすごくね?」


そんな会話をよそに、僕は会場へと入って行く。

「頑張ってね」

「勝ってくれよ」

ライナが抱き着いて来るし、レイアは腕を絡ませてくる。


何か、周りの視線がすごく痛い。

「初戦は、フォイ先輩だと」

「魔法騎士のフォイ。剣の扱いが上手な先輩です。お姉さまと斬り合えるくらいには、強いそうです」

ライナのお姉さんて、確か騎士団に入っていたはずじゃあ。

しかも、4騎士団の一つに入れるほどエリートだって噂だった気がする。

「じゃあ。行ってくる」


僕は、闘技場へと向かうのだった。




「一回戦!シュンリンデンバーグ対、フォイ!始めっ!」


「シュンくーん!」

「シュン!負けるなよ!」

二人の声が良く聞こえる。


「さあ、新緑のシュンリンデンバーグと、魔力剣のフォイ。二人がどう戦うのか!気になる所です!」

突然耳に入って来た実況に、思わず冷や汗が出る。

二つ名、、、僕にも付いてる、、、


痛い二つ名じゃないから、良かったけど。

「行くぞ」

フォイ先輩が、剣を抜く。

ロングソードだ。

僕も愛用のメイスを構える。

「物騒な武器だな」

「僕もそう思います」

無言で、両手を広げて構えるフォイ先輩。


不思議な構えだけど、隙は無い。

突然、フォイ先輩が動き。

僕の腰に向かって横なぎの一撃が飛んで来た。

「早っ!」

後ろに跳んだら、斬られる!

僕は咄嗟に相手にぶつかる気持ちで前に跳ぶ。

頭から転がりながら一撃を避け、顔を上げ。

目の前に構えたメイスの前で、魔法が弾け飛んだ。

「風の斬撃を受け止めるか。さすが、1年とは言え、ここにいるだけはある」

フォイ先輩は、ゆっくりとまた両手を広げた構えに入る。

避けたはずなのに。

斬られた腕が痛い。

再び、数回打ち合うも、攻撃の数が合わない。

また、斬られて血が噴き出る。

ゆっくりと目を凝らすと、何も持っていない手に風の魔力を感じる。

風の剣?

「魔力?いや、透明な剣?」

「ん。気が付いたか。これは、風魔法だ」

一瞬だけ風魔法を棒状に発動、風の剣を作っているらしい。

凄いセンスだ。


「1年生が、この技を見破った事を褒めてやる。そして、これで終わりだっ!オーバーラッシュ!」

さらに加速したっ!


片手剣にも風魔法の斬撃が乗り始める。

見えない剣が襲って来る。

無数。

剣なのか、風なのか。魔法なのか、刃なのか。

避ける場所の無い嵐が襲い掛かる。

先輩の両手すら見えなくなる。


けど。僕は笑う。

「弱い」

先輩の全ての攻撃を受ける。

全身から、血が噴き出るけど。

メイスに風を纏わせ。

先輩を殴り飛ばした。


観客が、全員呆気に取られているのが分かる。

ゆっくりと自分に治癒魔法をかけながら、僕はメイスを片手に先輩に近づいて行く。


「こ、、、これは、肉を切らせて、骨を断つ!フォイの全ての攻撃を、無視して強力な一撃を入れたっ!命がいらないとでも言うのかっ!」


攻撃が弱いだけだよ。

口元が緩むのが分かる。

「新入生がぁ!ぐっ。ちょうしに、、調子に乗るなぁ!」

先輩は、剣を両手で構え。

力いっぱい振り下ろす。


メイスを持った片手で、その一撃を受け止める。

風の魔法の衝撃が僕を突き抜け。

床が、激しく割れる。


力も、体力も。

充分ステータスを上げて来たからね。

しかも、僕の武器は、魔物の骨。

魔力を込めれば、とんでも無く硬くなる。

そんななまくらで、どうこう出来る塊じゃない。


そっと先輩に空いている手を添える。

「さよならです」

僕の呟きとともに、後ろへと吹き飛ばされ。

一気に空中へと舞い上がる先輩。

風の球エアボールから、風の監獄エアーズプリズン

僕はそのまま空中へと跳び上がり、先輩を見て。

追撃を止める。


本当は、ここからメイスで思いっきり殴るんだけど。

それをしたら、流石に死ぬよね。

魔法の威力は抑えたつもりだけど。

気を失った先輩へ、緑の柱が立つ。

流石に死んだらまずいから。

緑の風に包まれ。回復しながら先輩は地面にゆっくりと落ちる。

「勝者、シュンリンデンバーグ!」



「同時魔法使用、、、」

「あれだけの回復魔法と、風のゆりかごの2つ、、ありえねぇ」

ライナと、レイアの呟きが、静まり返った会場の中で周りの人にだけ聞こえていた。

「風の主だ、、、」

誰かが呟く。

「いや、風の竜だ、、、」


誰かの声が聞こえる。痛い二つ名になりそうだから止めて欲しい。

本気でそう思った時。

会場はすさまじい歓声に包まれたのだった。

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