第43話特殊トーナメント (シュンVS)

「さあ!ついに来ました!トーナメント2回戦目っ!今日は、魔法球のロアだっ!」

女の子の歓声が凄い。

「そして、その対戦相手は、、、新緑の爆竜!シュンリンデンバーグだぁ!緑色の悪魔は、果たして、去年の勝者を倒す事が出来るのか!」

僕はそのアナウンスを聞いて、膝をついてしまった。

痛い。

この前の試合で、一気に、二つ?!

「新緑の爆竜。なかなかだね」

ロア先輩まで笑っている。

大体、緑色の悪魔ってなんなんだ。


「ぜったい、風魔法なんて使わないでやる」

「そんな事を言っていられるのかな?手加減されるほど、僕は弱くないよ」

僕の独り言を聞きとったのか、ロア先輩が笑う。

「さぁ!神に愛されたとしか思えない二人の戦いだっ!刮目せよっ!試合開始っ!」


まあ、神様には関わっているよね。二人とも。

メイスをゆっくりと構える。

「二つ名って、地味にクルよね。カッコいいとは思うけどさ」

ロア先輩は、笑いながら、レイピアを抜く。

ふわっと金髪が揺れて、さわやかな風が流れるようだった。

「けど、皆が楽しんでくれるなら、それもまたいいよね」

こいつ、、80年近く生きている僕より、大人だ。


「じゃあ、、行くよ」

ロアが動く。

無数にも思える突き。

速い。確かに早いけど。

見える。

突きに交じって、薙ぎ払いやら、風魔法まで紛れ込んで来る。

でも。

全然余裕だ。

「スピードを上げてやる」

僕は、レイピアを捌きながら、突き上げを混ぜて反撃をして行く。

メイスに突き上げられたら、なかなか痛いし、距離も取れる。

「へぇ。なかなかいいラッシュだね」

涼し気にロア先輩が呟く。


笑っているロア先輩の前で、突き上げたメイスが弾かれる。

いや。突きあげた先に先輩のレイピアがある。

違和感。

攻撃する先に、ロア先輩の剣がある。

防御している所に、レイピアが飛んでくる。

 何かもやもやする。


剣に向かって、振らされている感覚。


僕の大振りの一撃をさらりとかわしたロア先輩を見て、少し笑う。

足元に張った、氷の足止め罠が発動する。

なのに。

先輩は、後ろに下がって笑っていた。

今のは絶対に突っ込んでくるタイミング。

僕は隙だらけだったのに。


その顔を見て、一つの考えが浮かぶ。

「もしかして、先読みとか言いませんよね?」

「慌てて下がったのがバレちゃったかな?先読みとか、そんな不安定な物じゃないよ。そうだね。『予知』みたいな物かな」


穏やかに笑う先輩を見ながら呆れてしまう。

まさかの上位スキル。

先読みは、数秒先をなんとなく感じる事が出来るけど、予知は、数秒先がスキル。


「このチートが」

思わず悪態をついた僕を先輩はにこやかに見ている。

「君にチートなんて言われたくないなぁ。君だって十分チートじゃないか。あんな凄い風魔法に、風系統の回復魔法。さらには、氷魔法まで。君、本当に1年生なのかい?」

圧倒的な余裕を見せる先輩。


大きく息を吐く。

「本気で行かさせてもらいます」

「今まで本気じゃ無かったのかい?」

楽し気なロア先輩を無視して、地面を蹴る。

一歩。

強化魔法を自分にかける。キシュアさん直伝だ。

ステータスが跳ねあがる。


自分の速さについていけずにこけたりもしたけど。

今なら大丈夫。

自分の周りに無詠唱で氷のつぶてを大量生産。

発射と同時に、メイスを下から振るい上げる。

笑みを浮かべたまま、後ろに下がる先輩。

かかった。


空中に土弾を生成。

一気に落下。

「同時魔法とか。君も十分、おかしいよ」

笑いながら、いきなり僕との距離を一気に詰めて来る。

自分に当たる氷だけ弾き飛ばしている先輩。

僕に一気に近ずくことで、先輩の背中を通り過ぎて行く土弾。

こんな至近距離から、腕だけで突きを放つ先輩。


今だ!

絶対結界発動。

ロア先輩のレイピアを受け止める。

びっくりしている先輩の顔を見ながら、結界の内側から、先輩を殴る。

メイスは、がら空きになっていた先輩の脇腹に吸い込まれて行く。

メリっと嫌な感触と共に。

先輩は一気に吹き飛ばされる。

結界の内側から、こちらだけ攻撃できる特性を生かした攻撃だ。


地面に叩きつけられた先輩に、とどめと言わんばかりに土弾を雨のように降らす。

なのに。


ロア先輩は普通に立ち上がっていた。

口元をぬぐっているのだが。

ロア先輩が笑っている。


避けきれないと思った瞬間、自分から飛んでダメージ軽減、着地と同時に、転がってあえて吹き飛ばされる事でさらに衝撃をそらしたのが見えた。

ほんとに、この先輩、チートだよ。


「これはびっくりだっ!何が起こったのか、全く分からない!しかし、ただ一つ。確かなのは、この二人、最高に、強いっ!」



「まさか、防御チートだったとはね。読み違えたよ。魔法チートとばっかり思っていたんだけどね。君は僕が考えるフラグを軽く折ってくれるね」

楽しそうに笑う先輩。

こっちはそれどころじゃない。


今の一撃で仕留めたかったのに。

予知で、攻撃が分かる奴に、攻撃を当てるのがどれほど大変か。


「君も楽しそうだね」

先輩の言葉で、僕自信の口元が緩んでいる事に気が付く。

「本気を見せてくれたお礼だ。僕も本気を見せよう」

先輩の目の前に、ぽんぽん。と、二個の球が生まれる。


「出たっ!ロアの魔法球っ!ロアが本気になったっ!」

実況がうるさい。


「とりあえず。行くよ」

笑う先輩に向かい、氷魔法を撃ちだす。

レイピアを振るい、自分に当たりそうな氷だけ弾き飛ばす。


これが出来るのは、僕たちだけだと思っていたんだけど。

「魔法を武器に纏わせて、魔法を撃ち落とす。レイアさんの見様見真似だけど、結構使えるね。これは、シュンリンデンバーグ君の技かな」

涼し気に笑う先輩に、すこしイラついてしまう。

僕たちの技を盗んだな。


僕は一気に距離を詰めるため、地面を蹴り。

吹き飛ばされた。


僕が踏み出した足元に、魔法球があった。

そこから、突風の魔法を受けた僕は空中にいた。

「風のゆりかご」

魔法を使って、態勢を整えた時。

目の前に、ゆらゆらと浮かんでいる球が見える。

「ま、、まさか、、これ、、、」

再び吹き飛ばされる。

途端、今度は逆に吹き飛ばされる。


飛ばされる方向に球が。魔法球がある。

空中でもみくちゃにされる。

「さて。お遊びは終わりだね」

ロア先輩の声が、遠くに感じる。


体が痛い。バラバラになりそうだ。

ゆっくりと目の前に移動して来た魔法球から、火の球が生まれる。

これ、、、動きが鈍いけど。ファ〇〇ルだっ!


僕が確信した時。

4方向から、火の矢に貫かれる。

絶対結界!

とっさに結界を張ろうとするけど、発動しない。


そうか。空中じゃ、、張れないんだ。結界。

諦めが心に浮かぶ。

次の瞬間。

全方位ともいえる、先輩も含んだ5方向からの魔法攻撃を空中で受けた僕は。


そのまま気を失っていた。

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