第44話戦いの後で
「シュン君?シュン君!!」
ゆっくりと目を開けると、真っ赤な目をした金髪の子がこちらを見ていた。
横では、赤い髪の子が、今にも泣きそうな顔をしている。
「ライナ?レイア?」
「よかったぁ!!」
突然、抱き着いて来るライナ。
ちょ、ちょっと!
どうしていいか分からず、僕は固まってしまう。
ふわふわで、柔らかい。いい臭いもする。
「もしかして、、付き添ってくれていたの?」
「当たり前だろ」
「2日だよ。2日も、寝てたんだよ。死んだかと思って、おもっ、、、」
ライナが本気で泣いている。
「心配かけたみたいで、、ごめん」
抱き着いているライナを撫でてあげようとした時。
突然、扉が開く。
「試合で、やりすぎたから、お詫びをと思ったんだが。タイミングが悪かったかな」
笑いながら入って来たロア先輩。
「最悪のタイミングだ。チート」
ロア先輩にびっくりして、ライナまで離れてしまった。
柔らかかったのに。
いろいろと。
「ははは。僕もあそこまで綺麗にはまるとは思わなかったんだ。本当にごめんね」
まあ、見事なやられっぷりの絵になったと思うよ。
多方向から見事に打ち抜かれたからね。
そして、目を腫らしている二人に気が付いたのか。
ロア先輩は頭を下げる。
「下級生に、本気になってしまった事。大人気なかったと思う。
君が強すぎて、つい力が入ってしまった。本当に、久しぶりに楽しく戦えたよ。そして、ありがとう。お詫びと言ってはなんだけど、何かあったら、すぐに声をかけて欲しい。出来る事なら、手伝うよ」
笑っている先輩。そんな顔を見ていると、恨みなんか抱けそうにない。
本当にこの先輩はいろいろとチートだ。
「まったく何も出来ませんでした。本当の意味で完敗です」
握手を求めると、手を握ってくれる。
そんな僕たちをじっと見ているライナと、レイア。
二人にも本当に心配をかけたみたいだから、何かお礼をしなきゃいけないなぁ。
そんな事を考えていると、突然思い出したように、先輩が手を叩く。
「ああ。後、校長からの伝言。ライナ君、レイア君両名とも、冒険者見習いとして、登録を認める。だって。シュンリンデンバーグ君を支えるようにだってさ」
それは、僕がもらっている資格と同じ物。
つまり、僕たちは、正規冒険者の最低ランクEの一つ下、Fランクとして登録されたと言う事。
「1年生なのに、もう実質卒業だね。おめでとう。ああ。僕と、ヒウマ君も冒険者見習いの資格を持っているんだ。だから、学校は行かなくてもいいんだけど、異世界の学校も、楽しくてね」
にっこりと笑う先輩。
「だから、君たちも学校にこだわる事は無いんだよ。それが、冒険者見習いの資格だから」
学校を楽しみたいのは、僕も一緒だ。
「そういえば、トーナメントは?」
「ああ。僕が勝ったよ。決勝戦は今日だったからね」
あっさりと答えるロア先輩。
決勝終わらして、どれだけ余裕があるんだ。この人は。
誰も勝てる訳ないよね。【予知】持ちなんて。
やっぱり、この人はチートだ。
部屋を出て、一つため息をつく。
金髪の髪を撫でながら、笑うしかない。
「魔法を同時使用。しかも多属性。魔法も、剣も受け止める魔法結界。君はどれだけスペック盛り盛りなんだい」
フラグ折りを楽しみにしている僕が、ハーレムフラグを折角折ってあげようと思ったのに。
「つい、面倒な事になりそうなフラグを建ててしまったじゃないか」
彼の人柄か。
そんな事を考えながら、僕は彼が休んでいる部屋を後にするのだった。
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