第9話ある意味冒険者?

町の外に出た僕は大きく伸びをする。

やっぱり、壁に囲まれた町よりも、外の方がなんか解放された気分になるよね。

「データベース。検索。ウサギ 場所」

それだけ呟くと、2つの結果が頭の中に浮かぶ。

「近隣地図」

この周りの地図を指定すると、視界の端にこの辺りの地図が出る。

その地図に、赤い点がいくつも見える。

その中で、緑の点と、黒い点も交じっている。


緑の点は、冒険者たちだ。

前に、一度冒険者さんの獲物を横取りしてしまって、めちゃくちゃ怒られてしまった。

密猟だとか、犯罪行為だとか言われてしまって、その時狩ったウサギを全部持っていかれてしまった。

結局、言いがかりだとおもうんだけど。

でも、大人の冒険者は怖いから、近づかないように、いつも警戒してるんだ。

で、、黒い点だけど、、あまり言いたくないけど、野党とか、盗賊とか言われてる人達だ。

データベースで調べて、初めて目にしたとき、震えてしまうくらい怖い人達だった。

だから、ぜったい、ぜったい、出会わないようにめちゃくちゃ気を付けている。


とりあえず、赤い点がある場所へと走って行く。

印の場所に行くと、点の数と同じだけのウサギが見えた。

『また来たっ!逃げろにげろっつ』

そんな声が聞こえて来るけど。

ゴメンね。


僕は素早く片手をあげ、突き出す。

瞬間で風魔法が発動して、ウサギを包み込み、切り刻む。

僕の魔法の先生は、データベースだ。

調べていたら、魔法の使い方と、無詠唱の使い方なんてのがあって。

それを見ながらいろいろやってたら無詠唱で魔法が使えるようになっていた。


動かなくなったウサギの首を風魔法でちょっと深く切り、血抜きを始める。

これをしないと、買取の値段をめちゃくちゃ下げられてしまう。


最初は、本当にニガテだったけど、、毎日やってると慣れるもんなんだね。

連続で、5匹ほど狩ると、腰に括り付けて行く。

腰と言ってるけど、ごめんなさい。

正確には、胸の辺りで括り付けてるから、見た目は、ウサギのもふもふが動いてるようにしか見えないと思う。

ウサギ、、大きいんだよ。普通の大人でも持てるのは、2匹が限界くらいに。


「ふう。もう限界かな」

僕は流れてもいない汗を拭くと、壁の隙間から町の中へと戻って行く。

「おじさーん!お願い」

修道院へ帰る前に、肉やのおじさんの所に寄る。

「おう。今日はどうだ?おお。またいいのが取れたなぁ。こっちは、ちょっと傷が多いか?」

しばらく、ウサギを見ていたけど、ドンと、銅貨100枚(一万円)が入った袋をくれる。

ウサギ一匹、銅貨20枚だ。

本当は大銅貨5枚。つまり、銅貨50枚(5千円)がウサギ一匹の値段なんだけど。

これはデータベースで調べたから、確かな値段。

でも、いろいろと問題ありだから、おじさんには何も言えない。

冒険者さんの怒ってる姿を見ると、僕みたいな子供が、狩りしていい感じじゃないしね。

配達の仕事は、一日銅貨10枚(千円)

まぁ、30分くらいで終わるから、すごくいい仕事だと思う。

ほくほくしながら、僕は修道院へと帰る。

帰ってから、ウサギの代金はぜんぶシスターさんへ上げるんだ。


「お願いします!助けてください!」

「痛いよぉ、、痛いよぉ、、、、」

腕が変な方向に向いてしまっている僕と同じくらいの子供が、泣いている。

「目を隠していてください」

お母さんに言うと、僕は子供の手をむりやり引っ張り正常な位置へ戻す

「ぎやぁぁぁぁぁ!痛く、、、ない?」

正常な位置に戻すのと同時に無詠唱で回復魔法を重ねがけして、折れた骨をくっつける。

「ありがとうございます!ありがとうございます!」

何度もお礼を言いながら、帰っていくお母さんを見ながら、ちょっとうらやましく思ってしまう。

「神父さま。ちょっと、激しくこけてしまってよぉ」

次に来たのは、おじさんだった。

両足とか、両手とか、すり傷だらけになっている。

「光の聖霊と、神の名において、傷つき、痛みを負った者に祝福を。ヒール」

詠唱っぽい詠唱をおこなって、傷を治す。

無詠唱になれてるから、覚えてる詠唱がけっこう曖昧なんだよね。


さっきの子供の時はって?そりゃ、回復魔法を連続使用するなら、無詠唱でないと、出来ないもの。

そう。午後から、僕は神父として、傷の回復を行っている。

基本,無料だけど、ときどき、夜ご飯が立派になる事もあるから、手は抜けない。


いっぱい働いて。

ご飯を食べて。

妹たちと遊んで。

弟たちと喧嘩をして。

夜になったら、今日ウサギ狩りで手に入ったポイントを何に振るかを考えながら寝る。

そんな日々を毎日過ごしていた。


ウサギ、いつか食べたいなぁ。ああ。今日のポイントは速さに振ろうかな。

とりあえず、今日も疲れたから。おやすみなさい。







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