第21話朱に染まる空

必死に走る。

体力とか、速さとか。

もっとステータスを振っておけばよかった

足がもつれる。

後悔が追いかけて来るけど、僕は足を必死に動かす。


あの人達が死ぬなんて。そんな事はないだろうけど。

門番さんに。とにかく会わないと。


町の囲いが見えて来る。

あれ?町の空、、、赤くない?

気持ちがざわざわして落ち着かなくなる。


必死に出す足がもつれてくる。

地図が、赤く染まっている事にも気が付かなった。


町に入る。

周りを見るのに。いつもの所に立っている兵士のおじさんがいない。

 周りを見ても。

ほとんど人がいない。マップを見ると、僕の家でもある孤児院がある北側にみんなが集まっている。


とにかく、カイルたちの事を報告しないと。

地図が、赤く見えたけど気のせいだったみたいだし。


とにかく人がいる場所へ走る。

けど、なんだろう。なんだがいつもと違う。

いつもいたはずの門番の人達がなんで誰もいなかったの?

すれ違う人が一人もいないのは、なんでだろう。


遠くから、声が聞こえ始める。

ううん。違う。話し声じゃない。

怒鳴り声。 泣き声。 叫び声。 悲鳴ににた慟哭どうこく

何か違う。

僕はへとへとの足をさらに速く動かす。


そして、僕が見たのは、、、、


黒く、崩れ落ちた風景だった。

いつも配達に行っていた家が。

女将さんの宿が、、無い。

いつもの道が、、黒く染まっている。

いつもなら、いろんな家で見えないはずの教会の。

ローダローダ様が。崩れてる。

皆が泣いている。叫んでいる。


「ちょっと待てっ!」

鎧を着た兵士に呼び止められる。

煙が立っているけど。

あそこには、、あの協会には、孤児院には。


シスターが、、妹が、弟が。

吐きそう。足が、限界と悲鳴を上げている。

転ぶ。

そう思った時。誰かに捕まれた。

そのまま抱きかかえられる。

「離してっ!」

僕の力は、大人よりも強いんだ。振り切るなんてどうって事無い。

僕は振りほどこうとしてもがいていたのに。

頬に。頭に冷たい物が落ちて来る。

僕は思わず上を見て。

力が抜けてしまった。

「すまない。ほんとうに、、、ほん、、と、、う、、」

おじさんが。門の所に立っているおじさんが。

「俺達の失態だ。おれたちが、悪いんだ、、、」

ぐしゃぐしゃだった。


その顔を見て。

分かってしまった。


居なくなったんだ。。。皆。みんな。。。




「最初は、突然現れたゴブリン数体だった。壁の外に突然現れたそいつらと戦っていたら、数が増えていってな」

「頑張って、そいつらと戦ってたら、壊れていた壁から、ゴブリンが入り込んだんだ」


「冒険者も、外のゴブリンに気を取られててな。中に入り込んだ事に気が付かなかった」

「だから、、俺達の、俺達のせいなんだ」

涙も流れない。


茫然と聞いていた。


誰も、、だれも助けられない。


そして、僕は、カイル達の遺品を受け取った。。。。。。。




「カイルさん、レイアさん、キシュアさんからの、ご依頼です。お三方とも、自分に何かあれば、シンさんが全てを受け取るようにと」

ギルドから、そんな事を言われても、何も返事が出来ない。


「冒険者にならないかい?」

「すじがいいじゃねぇか」

「大丈夫。だいじょうぶよ」

3人の声が聞こえる。


「お三方とも、シンさんを本当の家族のように思っておられました。それだけは、お伝えしたいと思いまして」

ギルドの受付のお姉さんも少しだけ涙ぐんでいる。


僕は。

カイル達が止まっていた部屋へと案内される。

残っている彼らの荷物の一部が目に飛び込んで来た時。


僕は、ベッドにうずくまって。

「ううぁぁぁっぁぁ!がいうるぅ!おかあさぁn!」

優しいシスターも妹も。弟も。



日も傾き。町が朱く染まって行く。


その事にも気がつかず。僕はただただ、、泣いたのだった。








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