次へ 学園編
第22話一歩。
「お客さま。置いておきますね。門番のデル様からの差し入れです」
宿の女将さんが、僕の部屋の前で何か言っている。
僕はシーツを引き寄せる。
もう、、どうでもいい。
ガイルも、レイアも、キシュアも。
シスターも、妹、弟達も。
みんな、、みんな、、、
枯れたと思った涙が、、またあふれ出る。
「このまま、死ぬのかな、、」
ぼーっと部屋の中を見ていると。
「なんだよ。情けねぇなぁ」
カイル!?
顔を上げる。
そこにあったのは、カイルの折れた剣。
そして、その横にあるのは、カイルが買ってくれた槍斧。
「槍ってのは、ガッと突くんだよ」
「感覚で分かるのは、カイルだけですよ」
キシュア。
「お腹空いたら、しっかり食べる!空いてなくてもしっかり食べる!冒険者の基本よ」
レイア。。。
僕は、ゆっくりと冷めたスープと、パンにかじりつく。
涙が、、出なかった。
「涙、、、枯れちゃった」
僕はそれでもスープに浸したパンにかじりつく。
何も食べていなかったからか。
置いてあった料理を全て食べきる。
「そういえば、、分かるのかな?」
カイル達は、死なないと言っていた。
なのに、、何で?
助けを呼ばなかったから?
僕がふと疑問に思った時。
データベースが、勝手に情報を流し込んで来る。
「ちっ。終わらねぇな」
「毒は大丈夫ですか?」
「もう、感覚が鈍い。周りが早くなってやがる」
「逃げ切るのは、、無理ですね。僕ももらっちゃいました」
「魔力も、尽きたわ。あと一発だけ」
「なぁ。お前ら」
「あの子が生き残ってくれるなら」
「私たちの意味もあったよね」
そんな音声が。
その後で、出て来たのは、討伐数。
カイル。
ゴブリンローグ 10体。
ゴブリンアーチャー 7体
ゴブリン15体。
毒を受けた状態で?
レイアさんは、、、ゴブリンアーチャー12体。
自分の魔力を暴走させての自爆で、ゴブリン10体。
キシュアさんは、、ゴブリン5体を倒した後。
ゴブリンの上位種である、ゴブリンアーチェリーと一騎打ち。
相打ちに。
一つのパーティだけで。
60体討伐。
ゴブリンの本当の大群を抑えきった英雄たち。
「なぁ。冒険者になってみないか?」
カイル。
僕は、自分の頬を叩く。
「決めたよ。僕、冒険者になる。冒険者になって、みんなより、強く。かっこよくなる」
僕は、窓を開ける。
少しだけ温かい風が入って来る。
目標。
追いついてやる。
折れた杖が、優しく光を反射していた。
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