第23話約束の時。
「なんだよぉ、、それはないよぉ、、、」
僕は盛大に落ち込んでいた。
1年。
馬車を乗り継いで。貯めていたお金を全部叩いて。
やっと王都に着いた。
学校に行って、入学の申し込みをしたのに。
「保護者の方は、、おられないのですね。分かりました。大丈夫ですよ。冒険者学校は、全ての人が入学できますから。ただ、、年齢が、足りないようでして」
年齢を調べられる宝玉。
そんな物があるなんて、知らなかったけど誕生日を祝ったりしない所は結構あるみたいで、みんな自分の年齢を知らない人が多いみたい。
それで、調べれたのだけど。
「シン様は、今、12歳ですね。入学は、13歳からとなっていますので、もう一年お待ちください」
冷めた顔で、書類と、年齢証明書を突き返されてしまった。
しかも。
「測定代と、証明書の発行費、銅貨30枚です(3000)」
お金まで取られちゃった。
「お金、、足りるかな、、カイルたちのお金は手を付けたくないし」
遺産と言われて、3人のギルドに預けてあるお金も相続したんだけど。
3人で、白金貨4枚(4千万)とか、あの3人、どれだけ稼いでいたんだよ。
でも、僕自身も、数か月で、金貨数枚分(数百万)は持っているんだから、大概だとは思うけど。
とりあえず、宿屋のベッドに再びダイブして、ふて寝に入る。
1年も、何をしていればいいんだろう。
頭が痛い。
何か、頭が重たい。
ウサギ狩りでも行こうかなと思っていると。
ふと、皆の言葉を思い出した。
「王都周辺で、冒険者以外が魔物を狩ると犯罪だよ」
皆の言葉を唐突に思い出して、僕は狩りを諦めてまた布団にもぐったのだった。
初日に使い過ぎたなぁ。
まさか、銀貨一枚(1万)があんなに簡単になくなるとは思わなかった。
ゴロゴロして、ゴロゴロして、数か月が経った。
その日は、なかなか眠れなかった。
何度も寝がえりを打って。
やっと眠れたと思った。
なんか、若い人に怒られていた。
ただひたすら頭を下げていた。
「くそっ。年下の癖に、お前側のミスだろうが」
心の中で悪態をついていた。
紙に書かれた数字を指して、何か騒いでいる。
変な乗り物に乗っていた。
光りが走る。
真っ白な世界が。
赤いトラが。
槍が。
工房が。
バチッ。
何かが弾ける。
「助けてください。あなたが、、希望です」
女神。いや、不思議なそう思えるナニカ。
夢から、記憶が。
巨大なオオカミを、二本の槍で串刺しにする。
シュワシュワする飲み物を一気飲みする。
ドロドロの緑色を飲み干す。
車を運転し、槍を突き刺す。
「お願いします。あなたに、希望を」
真っ赤な光に包まれ。救い出されるように、大きな女性に包み込まれて。
僕は、飛び起きていた。
息が荒い。
全身に汗が噴き出ている。
「俺、、は、、、」
自分がサラリーマンとして生きた30年。
森で、魔物を一人でもくもくと狩り続け、喰らい続けた40年。
そして、今の13年。
全ての記憶が、一つにまとまる。
なのに。
「シュン、、リンデンバーグ、、か。ははは。ネーミングセンスないよなぁ。両親て」
自分の名前を思い出して、思わず笑ってしまう。
シュンリンデンバーグ、日本名で言うなら佐藤左枝座江門ぐらい変な名前だ。
でも、嫌いにはなれない。
けれども、お母さんのぬくもりは思い出せるのに。顔が出て来ない。声は思い出せるのに、お父さんの顔が出て来ない。
「いたっ」
思わず頭を押さえる。
思い出せるのは、赤。
どこまでも真っ赤な景色。
つつ。と涙がこぼれる。
「まだ、枯れてなかったんだ」
その涙をぬぐう。
そして。
「ごめん。ごめん。カイル。レイア。キシュア」
湧き出て来た知識に。昔の記憶に。
僕は再び涙があふれ出て来る。
解毒薬の知識がある。しかも、致死毒に効く。
回復薬の知識がある。出血を一瞬で止めるほどの。
絶対結界を使った、生き残り術。
囲まれた時の逃げ出し方。
この知識があれば。この力があれば。
40年。たった一人で生き残った。
化け物しかいなかったあの森で。
3人はきっと生き残れた。
「ごめん、、みんな」
僕は、知れず号泣していたのだった。
[名前] シュンリンデンバーグ
[職業] 冒険者付き添い
[ステータス]
[Lv] (表示不可能)
[Hp] 400
[Mp] 700
[力] 300
[体] 250
[魔] 200
[速] 200
[スキル]
(データベース) (EPシステム) (火炎魔法・拒絶)
水魔法 風魔法 回復魔法 絶対結界
(残EP 0)
よくやったRPGなら、物語中盤にさしかかるくらいのステータス。
超平均的な、バランスステータス。
13歳という年齢を考えたら、化け物だと思う。
でも。
「これじゃ、何も出来ないじゃないか」
圧倒的攻撃力があるわけじゃない。
圧倒的魔力があるわけじゃない。
昔の自分を殴りたくなる。
「10億、、だぞ」
女神が言っていた大進撃がいつくるのか。
誰も知らないのに。
明日来るかもしれないのに。
とりあえず狩りだ。
「データベース、安全な、密猟の仕方」
『ありません。誰かに見つかるか、大攻勢が起きます』
圧倒的情報量が流れて来て、最後には、無理だとはっきり言われてしまう。
けど、、それよりも、、、
データベース!
お前、かの有名な検索ソフトかよっ!
なんで、wikiが出て来るんだよっ!
今まで、気にしてなかったけど、今あらためて見たら、You〇beとかもリンクしてるじゃないかよっ!
思わず突っ込みを入れてしまう。
「狩りが出来ないと、本当に困った事になるんだけど」
もう一度、裏技が無いか調べて行く。
「冒険者を、雇って、、パワーレベリング、、」
ムリ無理。
どんな大富豪だよ。
冒険者になる前に、有名になり過ぎてしまう。
お金はあるけどねっ。
他には、、、
「へぇーーー。こんな所がデートスポットなんだ。ここ、安いし、女の子と一緒だと楽しそうだな。ファミレスみたい」
「を。こっちは、湖かぁ。 夕日がきれい、、、へぇーー。王都の中に、こんな公園があるんだなぁ」
「をーー!肉焼きっ!異世界らしいっ!安いっ!て、ウサギの肉かよっ!あれ、ちょっと筋あるけど、美味しいんだよなぁ。ウサギって、肉より、皮が高かったのかぁ。もったいない事したかなぁ。なめして渡したら、もうちょっと高く買い取ってくれたかも」
「武器高っ!てか、通販が欲しいなぁ。こんなの子供が買えるような値段じゃないだろ」
ご飯も忘れて。
何かを忘れて。
僕は、データベースの波に乗り切っていた。
生存確認のために、一日数回、扉をノックされたり、『引きこもりの青年』と呼ばれる事になっていた事に気が付いたのは、冒険者学校の入学準備を始める時だった。
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