第74話表と、裏

「だあっ!くそっ!大丈夫か?ガッシュっ!」

「大丈夫だっ!それよりも来るぞっ!」

冒険者の二人が、オークに斬りつける。


暴れるように振られた剣の下を潜り抜けるように走り込むガッシュ。

無茶するなぁ。

そんな事を思いながら、魔法を発動。

ガッシュを狙って振られた剣に魔法を当てて起動を変える。


「おらっ!」

地面すれすれで体を回転させながら、腕を斬りつける。

飛び散る血を見ながら、ガッシュは勝ち誇った顔をしていた。

「この剣なら、奴を斬れる!」

「だなっ!」

二人は、オークをほんろうしながら、斬りつけて行く。


時々危ない一撃をもらっているけど、その時は僕の絶対結界が受け止めていた。

魔法球。本当に便利だと思う。

手に握っていれば、自在に動かせるし、任意の場所に魔法球を生み出せるようになってから、一気に扱いやすさが変わった。


なんといっても、魔法球に絶対結界が張れるのが便利すぎる。

昔なら自分の目の前にしか張れなかった結界を、遠く離れた場所に張る事が出来るのだから。

けど、とんでもない力で押されたら動いてしまうけど。

多分、ステータス2000くらいの力で。

まあ、この世界のステータスのMAXは999なので、まず無いと思うけど。


二人は、すでに10分近くオークと戦っている。

本当にこの二人は体力お化けだ。


まあ、それだけ斬りつけても、すぐ回復してしまうオークも化け物なんだけど。


けど、そろそろかな。

僕はそっとオークの後ろに近づくと。


青い穂先でオークの背中を切り裂く。

ふらつくオーク。

「今だっ!」

「おうっ!」

二人が剣を同時に構え。


「「ダブルスラッシュ!」」

二人が同時に斬りつける。

×印の傷をつけたまま。

オークはあおむけに倒れる。


「やったぜっ!」

「ふぅ~」

喜んでいる二人を見ながら、ちょっと嫉妬してしまう。


ゲームで使うような、合体技とはかっこよすぎる。

ぼっちには合体技なんて夢のまた夢だ。

ちょっと寂しいとか、思ってないからっ。



「これで一安心ですね」

笑顔で僕たちをみているカラさんにどきっとしてしまう。

冒険者の二人も、顔を赤くしてカラさんを見ていたのだった。



「本当にいいのか?これ、絶対高い奴だろ?」

「試作品だから、構わないで使って欲しい」

二人に渡した武器、防具はそのまま二人に上げる事にした。


空間収納に入れっぱなしにしていても使う事もなさそうだし。


「それでは、帰りましょうか」

「シュン様、本当にありがとうございました。オークなんて、ほんとうに、いつぶりか、、、」

シスターさん?よだれが出そうな顔してますよ、、?


二人が倒したオークは村に持って帰って来て。

今から、ごちそうに変わるらしい。


残念ながら、カラさんはすぐに戻らなければならないとの事で、僕たちはその御馳走にはありつけそうになかった。


「では、また来ますね」

「はい。またお願いいたします。カラさん。もしよかったら、シュン様もまた来ていただけると嬉しいです。天使様」


だから、その呼び方は止めて欲しい。


そんな事を思いながら、僕たちはナンの村から王都へと戻るのだった。



【ガッシュ ???】

「なあ。ガッシュ」

小さくなっていく馬車を見ながら、俺は相棒に声をかける。


「なんだ?」

「俺達も、あれくらい強くなれるかな」

「無理だろ。回復魔法をかけながら、支援魔法をかけながら、魔法で援護して、とどめに近いくらいの傷を負わせる。。化け物だ」

「だよな、、、絶対、俺達足手まといだったよな」

無言でうなずくガッシュ。

「強く、、、、なりたいな」

「受けた借りは、、返す」

俺達二人は、どちらからともなく拳を合わせる。


少年の、とてつもなく大きな背中に追いつくために。



【????】

とある一室。

「帰りました」

「うむ。ごくろう。どうだったか。彼は」

髭をたくえた男性は、虚空に返事をする。


「まずは、報告通り。ナンの村にて、オークの群れを確認しました」

「やはりか。さすが暗部。で」

「ナンの村近くまで来ておりましたが、シュンが一人で殲滅。一体のみ、現地の冒険者と共闘にて討伐しました」

「殲滅、、、か」

「殲滅です。他にオークの存在は確認できませんでしたので、帰還いたしました」

「それほどか、彼は」

「いささか、いえ、私の感想を言わせていただけるなら」

「許そう」

「危険すぎます。虐殺を好むような戦闘においては、、」

ぶるっと震えるのが感じ取れる。

「それほど、、、か」

「失礼しました。相当の闇を抱えているのではないかと思われます」


「排除は必要か?」

「完全に放置して良いレベルではありまんが、今すぐに脅威となるようには思えません。まだ排除までは必要ないかと」

「目付は必要か?」

「他人を拒んでいるようにも感じ取れます。常に一人で行動しているようですし。今回も一人で討伐に向かいました。仲間としての接触はいささか難しいかと。また、私に気が付いていたそぶりもありました」

「ほう。それは、、すごいな、、」

「もし、彼が今後、パーティや、仲間を作る事があれば、4Sにお願いする事で、監視も出来るかと思われます」

「【空間の目】か」

「4Sなら、それ以外でもたやすいかと」

「本人に張り付ける事は?」

「無理なようです。おそらく、彼も【神に愛された者】のようです」

「そうか、、、厄介だな。もし、育つ事があれば、、」

「4Sもすぐには動けません。ただ、ロアが、過去に圧勝しているようです」

「あやつか」

「ロアを鍛えれば、シュンの排除もたやすくなるかと」

「ふふ。頼もしい婿どのだ。報告ごくろう。すまぬな。私の私用で動かせてしまった」

「久々の調査で楽しませていただきましたので。では」

少し明るい声で返事をして気配が消える。


「脅威か、、、有用か、、、、きわどいな」

男性は、隣に置いてあった剣を取ると部屋を出る。

「シュリフ将軍!オーク発見の報告がありましてっ!」

部屋を出てすぐに兵士に呼び止められる。

「知っておる。調査隊を出させろ」

指示を出すとそのまま歩いて行く。


「仕留めた後だがな」

そんな呟きを残して。



【シュン】

馬車に揺られながら、周りの景色をゆっくりと眺める。

ああ。そういえば。冒険者さんの二人。

ガッシュともう一人の名前を聞くのを忘れていたような。


カクッと馬車が揺れ。

カラさんが倒れそうになるのをそっと支える。

馬車に乗った瞬間。

カラさんは寝てしまった。

相当疲れたんだろうね。

そんな事を思いながら、ゆっくりと流れる景色に目を配る。


カラさんのほくろが少しずれている気がしたのは気のせいだろうか?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る