第77話不幸な少女

さっさと逃げてしまった奴隷商をおいかけるわけにも行かない。

「お金、どうしようか、、とりあえず、ギルドに戻るか」

ギルドの口座からなら、送金なんかも出来るんじゃないかと思って、僕はギルドへと戻る。


再びギルドに戻ると、残っていた冒険者がざわついていた。

「なあ。暴緑、それはないと思うぞ、、、、」

「ああ。俺も、ちょっと、引くかも、、、」

冒険者の目線が痛い。


受付に行くと。

「シュンくん?フラれたから、とかそんな理由ですか?本当に幻滅なんですけど。こんな小さい子を、、か、、、買うとか、、」

だんだんと顔が真っ赤になっていく受付のお姉さん。


「寂しいからとか、どうせそんな所なんでしょうけど、どうかしてますよっ!」

最後は怒鳴られてしまった。


酷い扱いをされているのを見て、思わず衝動的に買っちゃったから。

ある意味しかないし。振られた後でこんな子を買うなんて、まあ、そう見えるよなーとのんきに考える。

衝動買いだもの。


「その件で、さっきの奴隷商にお金を送りたいんだけど」

「ああ。あの人ね。奴隷商のバングさん。それだったら、商業者ギルドにでも行ったら?そんなギルドなんか無いけどっ!とっても、やりたくない仕事なんですけどっ!」

ここまで不機嫌なお姉さんは珍しい。


「お金は?降ろすの?」

口調が、、お姉さん?

「とりあえず、大銀貨5枚は下ろしたいんだけど」

ギルドカードを出すと。


お姉さんは、カードを乱暴に、認証器に突っ込む。

めちゃくちゃ不機嫌だ。

「あれ?」

何度もカードを差し替える。

「エラーになる。なんでだろ?シュンくんのカードで間違いないわよね。うん。さっきは通ったし。魔力もこもってる」

もう一度、優しくカードを入れるも、認識しない。


「こんなことは始めてだから、とりあえず、このカードは調べてみるわね。こっちが、とりあえずの予備の仮カード。明日もう一度来ていただけますか?」

予備カードを出してくれる。最後だけ接客後だったのは、突っ込んでいいのか迷ってしまう。



【受付のお姉さん】

「おかしいなぁ」

機械を触りながら、特に異常らしい異常はない事を確認する。

シュンくんと、あの女の子がギルドを出たとたん。

ガチャっと音がして、認証器がギルドカードを確認する。

「あ。できた。ねぇ、シュンくんを呼んで来て」

新人の子に声をかけながら、私はもう一度ギルドカードを確認する。

特に異常はない。

「お金は出せないかもしれないから、とりあえず、バングさんの口座に、大銀貨5枚ほど移動させておこうかな」

とりあえず、振り込み業務を済ましておく。


終わったと思ったら、シュンくんとあの女の子が入って来て。

再び、カードがエラー表示されてしまう。

「お金の振り込みは終わったけど、ちょっとこのカードは調べさせてもらっていいかな」

シュンくんが帰って来たので、それだけ伝える。

「あの、頼んでいたお金は?」

「あら、別でいるんだったの?」

もう一度カードを認証させるとスムーズに確認出来た。

「はい、大銀貨5枚」

手続きを終えて、お金をシュンくんに渡した時。

シュンくんの手が、小さな手首をにぎっていた。


獣人の子が、詰まれた大銀貨に手を伸ばしている。

「このタイミングで、スリ?」

シュンくんがびっくりしている。

私もびっくりしていた。

冒険者ギルドの中でのスリは命がけだ。

何故なら。

「なかなか、勇気があるね。君」

あ、シュンくんが怒っている。


どさくさに紛れて入ってきて、お金を見て思わず手が出たんだろうけど。

この子は冒険者じゃない。

「吹き飛びたいか?」

シュンくんが笑っている。

獣人の子は、首を必死に振る。


私の見ている前で、獣人の子は、天井を回り始めた。

いつ彼が天井に飛ばされたのか。

いつ天井に風魔法で渦が作られていたのかも分からないけど。

「建物の中は、よく竜巻が発生するので、気をつけてくださいね」

空中をぐるぐると飛んでいる獣人の子に、私は営業スマイルを見せるのだった。




【シュン】

今日は本当におかしい。

ギルドカードが認識できないとお姉さんに言われて。

奴隷商人の口座に入れたはずのお金が無くなっていたり。

スリに出会ったり。

しかも、3回も。


道を歩けば、馬車が蛇行を始めて、轢かれそうになったり。

突然上から全身鎧フルアーマーが落ちてきたり。

極めつけは俺に幼女趣味と2つ名がついていたり。

福屋が全て休みで、あの子の服が買えずに、ほとんど裸状態の女の子を連れまわしているため、何度も衛兵に職質されたり。


とにかく、、、おかしい。

運が悪いといえばいいのか。

とにかくおかしい。


呪われたのかと思って、僕は自分のステータスを久しぶりに調べてみる事にしたら。


名前】シュンリンデンバーグ

職業】Dランク冒険者(特殊任務請負)

レベル】なし

HP】 2000

MP】 3000

力】  4000

体力】 1000

魔力】 5000

速度】 1500


スキル】

データベース EPシステム 絶対結界

水魔法 氷魔法

風魔法 暴風魔法 回復魔法(風)

土魔法

身体強化魔法 力 速度

空間収納


武器、防具作成

スキル付与

無詠唱 連続詠唱 同時詠唱 高速並列思考

魔法球


称号】

暴緑 幼女趣味 殲滅悪魔バーサクデビル 


※絶対不幸 発動中



名前】ミュア

職業】シュンの奴隷

種族】ハーフエルフ

年齢】13歳


レベル】10

HP】160

MP】300


力】28

体力】19

魔力】50

速度】20


スキル】


絶対不幸

聖霊言語 聖霊魔法 (火 土)

迅速

行動制限 思考制限(所有物)


称号】

森の使い シュンの所有物


一緒に、女の子のステータスまで見れてしまった。

というか、、僕のステータス、、化け物になったなぁ。


毎日毎日、20体くらい狩り続けたから。

一体狩るごとに、5から10ポイントEPって入るからね。


いや、それよりもっ!


絶対不幸】


それって何!


調べてみると。

自分と、自分の周り全てに、不幸をまき散らす。


これか、、、

このスキルが、全ての行動を邪魔している。

まるで呪いそのもののようなスキル。


これは、、何とかしないと生活できないんじゃ、、、

僕はそんな事を考えていた。

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