第26話授業

試験日。その夕方に結果発表であったのだが。

受験者のほとんどが合格となっていた。

まあ。ようはお金が払えれば合格できるらしい。

ただ。

そのせいなのかは知らないけど。

次の日には登校してくれと言われてしまった。


もちろん、全員から大ブーイング。

けど、僕は特待生扱いとなっているため、別に出なくても良くなっていた。

もちろん行くけどね。久しぶりの学校生活だし。


そんな気分も晴れやかに学校へ行ったのに。

初日はまさかの、全員の自己紹介。

冒険者学校には、毎年500人くらいが受験に来て。

そのほとんどが合格となっている。

つまり。

500人の自己紹介である。


最初の方で話をして人なんてまったく覚えてないしっ!


暇だった。



2日目からは、普通に朝から授業開始となる。

50人一クラスなんて多すぎると思いながらも、のんびりと先生の話を聞く。

「冒険者が、何かと言われれば、何でも屋だ。他の町で商品を売る奴もいる。

護衛を専門にしている奴もいる。道を作る事を専門にしているやつもいる。

しかし、冒険者にしか出来ない事がある。

それは、魔物と戦い、勝ち、素材を売りお金をもらう事だ」

うん。知っている。やってたから。

「魔物は強く、早く、賢く、そして卑怯だ。一体しかいないと思った時、大軍に囲まれている事もある」

僕は唇を噛みしめる。

カイル達の顔が浮かんでしまう。

「ゆえに、冒険者資格が無い者が魔物を倒す事を禁止している。もう一つ魔物を倒す資格を持っているのは、騎士と呼ばれる国の兵士達だ」

「これだけ厳しい規制を敷いているのには、理由がある。大攻勢。大進攻。聞いた事はあるか?適当に魔物を倒していると、突然、数十匹の魔物が生まれ、一気に押し寄せて来る。今、この国では、50匹以上倒すことは無理だと言われている。その数が来るくらいに危ない事だ」

やっぱり、凄い。60体だよ。60体。

炎の絆の凄さに改めて感心していると、突然指を指される。

「大攻勢!言ってみろシュンリンデンバーグ!」

え?

「えーっと、50体から、90体の魔物、もしくはそれに準ずるものが押し寄せ、殺戮を起こす現象です」

データベースさん。ありがとう。

魔物に準ずる者ってなんだろうと思っていると、ゴブリン、オーク、コボルトこの3種は、魔人と呼ばれているみたいだった。


まぁ。ゴブリンアサシンとか、確かに魔人だと思う。


「正解だ。さすが、学年トップだな」

「大攻勢による死者は、数える事すら出来ない程だ。その魔物を倒し、村を、町を、好きな人を守り抜く。それが冒険者だ。冒険者は剣である事を忘れるな!」

先生が何かヒートアップしている。


「だが、君たちはまだまだ幼い。今からだ。しっかり学んでくれ」

それだけ言うと、再び冒険者の成り立ちに話が進む。


僕は少しだけむずがゆさを感じながらその話を聞いていたのだった。


次の授業は、実技だった。

魔法実技。

そう呼ばれている魔法の授業。

けど。

「魔法は必中だ!威力こそ全て!魔力を全力で込めて、打ち込め!」

「絶対当たるんだから、全力で打てばいい!」

そんな言葉が飛び交う教室で、僕は茫然としていた。


魔法が必中?

魔力の命中率は、確かに80%から、90%だ。

けど、それは格下相手だけ。


僕が40年過ごした森にいたオオカミなんて、魔法を食ったよ。

泣きながら絶対結界を張って相手が興味を失うまで引き籠った事もあるし。

犬みたいな魔物は、火の矢を軽々と躱して腕に食らいついて来たし。


「強力な魔法を、連続で打てるようになるといい!」

それ、、悪手。

敵を見失ったら盾役が、敵を引きつけれなくなる。

回復役とか、中衛が死ぬよ。


つまり、足止め、牽制なんて言葉が無いのだ。

けど、僕は知っている。

魔法発動と同時に、地面を揺らされたり。


いきなり体当たりをくらったから。

バランスを崩したら、あり得ない方向へ飛ぶんだよ。魔法って。


いろいろ思うところはあるけれど。

とにかく。

授業の内容が、僕にとっては悪だった。

多分、イノシシや、街道沿いに出るオオカミを狩るくらいならこれくらいの知識でいいんだろうけど。



けど、ほぼ毎日学校へと通う。

だって、久しぶりの学校だし。

さらには、そういったおかしな理屈の中に、10億を蹴散らすヒントがあるかも知れないから。


ただ、魔法の実技の時は、僕だけ、先生の目を盗んで、同時魔法の練習をしていたけど。

40年、戦った時に、この両手同時魔法を覚えていたらなぁ。と思いながら。





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