第25話結果発表

「はぁ」

試験結果は、今日中に出るらしい。

学校の中庭で、ため息をつきながら、僕はその結果発表を待っていた。


年甲斐もなく、張り切ってしまった。

可愛い女の子に、ちょっといいところを見せたくなってしまった。

「80年も生きて来たのになぁ」

前世と合わせてだけど。

今は、体も心も13歳だけど。


子供だったなぁと反省していた所。

「シュンリンデンバーグさん?」

突然、目の前に、可愛い金色の目の少女が現れる。

「うわぁ」

思わず尻もちをついてしまう。


「ははは。慌てすぎ」

レイアと言った、赤髪の少女がこっちを見て笑っている。

ライナは、両手で自分の口を押えて、申し訳なさそうな顔をしていた。

「あの、びっくりさせてごめんなさい」

ライナが、体を小さくして謝る。

「何してたんだ?」

レイアが、笑い顔のまま聞いて来る

「いや、張り切り過ぎたなぁと、反省してた所」

突っ込まれるのが嫌で、僕は二人から目をそらす。

思いっきり、噴き出す赤髪の女の子。


「それ、自分で言ったりする?本当に面白い人ね。私の名前はレイアって言うの。こっちの子は、ライナ。これからもよろしくね。あなたと一緒だと退屈しそうにないわ」

「よろしくお願いします」

金髪の子が、小さく挨拶をしてくれる。


赤髪の子に比べて、ずいぶんと大人しい子だと思う。

「また、受かったかどうかは分からないけど。受かってたらよろしく」

自分でも、ぶっきらぼうな返事だった事には気が付いていたけど、何故か素直になれなかった。


「あら、あなたが落ちるくらいなら、誰も入学なんて出来ないと思うけど?」

いたずらっぽい顔をしたまま、こちらを覗き込むレイア。

しっかり前かがみになっているので、ちらちらと見えてしまう。

うん。胸はまだこれからみたいだ。

「んっ!あなた、、今、私の胸を見てたでしょ?見たよねっ!罰として、何か驕る事!」

胸を押さえながら、赤くなるレイアを見ながら、僕もつられて赤くなる。

女の子は強いなぁと、年寄りのような事を考えながら。



「満点、、、ですか」

「絶対に分からないと思っていた問題もあるのですが」

「転生者、、もしくは、何かのスキル持ち、、ですか」

「その可能性が高いと思われます」

ありえない、満点のテストを前にして、先生が二人頭を抱えていた。

「名前は、、、シュンリンデンバーグ?」

「はい。ただ、冒険者ギルドに、登録がありました。シンと言う偽名を使っていたようです。冒険者付き添いとして、半年活動していたようで」

「ほう。今年13歳ですよね。幼いながらの冒険者付き添いは珍しいですが。何処のパーティにいたのですか?」

「炎の楔。だそうで」

持ち上げて、じっくりと見ていたテストを思わず落としてしまう。

「炎の楔? Aランクに一番近いと言われたBランク冒険者ではないですか」


「戦闘経験もあるようです」

「それで、あの正確さと、破壊力ですか。さすがは、≪炎の魔女≫に教えをうけた者」

「はい。どうやら、すでにDランクの魔物なら刈り取れる実力があるようです。しかもあの子が在籍している間に、ゴブリンアサシンも討伐していまして」

「流石というしかありませんね。AAランク並みの脅威の討伐実績ですか。扱いに困る子ですね。ここで教えていける範囲をすでに超えている可能性が高い」

「だからと言って、国の規則で、即冒険者ライセンスを渡す事は出来ません」

一つ。大きなため息を吐く。

「とりあえず、特待生として、入学を認めましょう。あのロア君といい、とんでもない子ばかりが入って来ますね」

落としたテスト用紙を拾い上げながらふと思い出した事を呟く。

「あと、彼が無茶をしないように、対策も必要になりますね」


「はい。何か考えないといけないでしょう。冒険者が生き残って、有名になれる可能性は、人が空を飛べる可能性くらい低いですから」

「ええと、、それと校長へ少しお伺いしたいのですが」

「はい、何でしょうか?」

「胃薬は、経費で落ちませんか?」

「無理です」



うなだれる先生だった。





「合格おめでとーーーー!」

レイアの胸を見た罰として。

二人に驕る事になってしまった。

「シュンリンデンバーグさんは、本当に凄いです!満点ですよ!満点!」

ライナが酔っているのではないかと思うくらいテンションが高い。

「あと、、魔法っ!絶対、同時に2発撃ちましたよね!」

ライナは騎士の家の子供らしい。

ただ、5女という事もあって、自分で稼ぐ道を見つけるために入学して来たと言う事だった。


レイアはと言うと、冒険者の親が死んでしまってライナの家に引き取られたとの事だった。

「半分血は繋がっていませんけど、騎士団の中にお姉さまがいます」

そういって笑うライナを見ていると、本当にエリート家系なんだと実感してしまう。

彼女の胸も含めて。


この世界は、重婚OK! らしく、お金持ちの家には、数人の妻と、子供も6人も、7人もいる事が多い。

まあ、その分、死んでしまう子供の数も多いのだが。


「しかし、、特待生って、私たちを差し置いて、、」

レイアが、ぼそぼそと呟きながら、肉を口にほおばっている。

そう。特待生扱い。

ロアという、先輩に続いて2年連続、特待生がいると言うのは、冒険者学校の歴史上はじめてらしい。


「バレた、、ね」

僕は特待生の話を聞いた瞬間。理解してしまった。

多分、炎の楔に所属していたのがバレたのだと。

「本当に凄いです!こんなすごい人とお知り合いになれて、本当に嬉しいです!」

ライナのテンションは相変わらずおかしい。


ただ、特待生の扱いをしてくれると言うので、たった一つだけお願いをしてみた。

安全圏でもいいので、魔物を狩る許可が欲しいと。


粘った。ほんとうに粘った。ダメと言い続ける学校に、何でもするからと言い続けた。

すると、学校側が折れてくれたのだ。

本来なら、卒業間際にしかくれない、疑似冒険者カード。

いわゆる、学徒冒険者カードと言われている最低ランクEより下のFランクの冒険者カードを渡してくれたのだ。


これは、最後の実習試験で魔物を狩りに出るために発行されるカードで、卒業試験のためのカードでもある。

「何でもやる」

僕は、こっそりとカードを握りしめる。

これがあれば、低ランクの魔物を狩りに行く事が出来る。

素材の買取も、ギルドで行える。もちろん相場で。


ただ、、誰か必ず連絡役を付き添わせる事と言われてしまった。

「試験の時、興味を持ってくれた子がいたじゃないか」

そんな事を言われてしまって、少し殺意も湧いたけど。


とても美味しそうにご飯を食べる二人を見ながら僕は少し笑っていた。



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