第57話異変

「オオカミの討伐、お願いできませんか?!」

「イノシシが大量発生!普段の2割増しの報酬です!」

「ジャイアントバッファロー発見報告が上がってます!討伐に行ける方は?」

「ジャイアントバッファローは無理だろっ!Bランク呼べよっ!」


依頼のほとんどが討伐依頼になって来ていた。

ギルドの受付を受けるまでもなく、商人や、依頼主がギルドに直接押しかけて依頼を出しているほどに。


しかも、討伐する敵の数、魔物の強さが跳ね上がっている。


「あ、シュン君、おかえりなさい!オオカミ討伐、ありがとうございました。解体はさせていただきますね。大銀貨3枚になります」

3万の収入なら、悪くない。

10匹程度だから、一匹3千くらいか。

「そして、こちらが、次の依頼になります」

インターバルもくれない。


最近は、こんな感じで、危険度の高い依頼が、僕に回って来る。

ロア先輩も、ヒウマ先輩も、フルで依頼を受けているようで。

ただ、僕に回ってくる依頼は、どれも危険度が高すぎで、二人を連れていけなくなっていた。


オオカミの群れの討伐なんて、いつ餌になってもおかしくない依頼だ。

それくらい、魔物は強い。

連携して。

死角から襲ってくる、集団は本当に強い。


「シュン君?」

ギルド内で、留守番になっていたライナが寂しそうな目をする。

「分かってるんだけど、、な、、、」

レイアも、何か言いたげだった。


二人を見ていて、僕は受付のお姉さんに声をかける。

最近、3人で、狩りに出れてないから。

「あの、、、この依頼、急ぎですか?」

「いえ。急ぎではありません。できれば、今週中とは言われていますけど」

 急ぎだけど、急ぎじゃないって奴かっ!

「とりあえず、最近連続で、討伐依頼を受けているので、すこし別の依頼も受けてみたいのですが。二人も連れて」

「それでしたら、この辺りでしょうか?」


受付のお姉さんが出してくれた依頼書を見る。

ホーンバッファローと言われる、水牛の群れの討伐?

ジャイアントアントの巣の駆除?

シルバーウルフを追い返して欲しい?

ちょっ!ビックバイパーの巣の駆除!?

どれも、C級てか、普通なら死ぬ依頼だからっ!

「いや、もっと普通に、、、」

「でしたら、これなんか、、」

Fランク依頼。森の捜索?

なんか、変なマークがついているけど。

いや、受付のお姉さんの目が怪しい。


「これ、、、もしかして、ジャイアントバッファローの騒動で、出せなくなった依頼じゃないでしょうね?」

僕も、ここ最近の無茶振りから、受付のお姉さんの思惑が分かるようになってきたからね。


「いえ、、そんな事は、、、」

お姉さんの目がすごく泳いでいる。

絶対そうだ。

「これで」

森の前の、薬草採取。


その依頼を出す。

後ろで、二人が顔を見合わせて笑っているのが分かった。


「うう、、、まだまだ、引き受けて欲しい依頼が、、、」

受付のお姉さんが何か言ってるけど、無視。


今日は、3人でゆっくりと依頼を受けてゆったりとやるのっ。


「わりぃな。今回、、、俺は着いて行かれないんだわ」

ダルワンさんが、苦い顔をする。

「さっき見た、ジャイアントアントの巣、、な。あれ、ちと面倒な所に巣を張ったみたいでな。今緊急依頼に格上げされた」

そんな依頼をさらっと出したのかよ。

「だから、俺が行ってくる事になったんだが。まあ、二人とも、シュンから、絶対離れるなよ。最近は森の手前でも、変な魔物がうろうろしてるからな」

まったく、引退したジジイをこきつかいやがって。

そんな事を言いながら、ギルドを出て行くダルワンさん。


僕たちは、そんなおじさんの後ろ姿を見て、思わず3人で笑っていた。





「本当に、変なのが出て来るとかっ!」

炎を纏った拳で、ジャイアントアントを燃やすレイア。


「火は気を付けて!いろいろとっ!」

ライナが叫ぶ。

少しライナの額に汗が出ているから、火をまともに見てしまったのかも知れない。

僕はと言うと。


燃え上がる火に、足がすくんでいた。

本当に。この体質だけは、自分でもイライラする。

「風の刃!」

魔法で、アリを切り刻む。

時々、ライナが手を握ってくれるから、なんとか動けている。

一人だったら、完全に置物になっていた。

本当に。レイアの火力が上がったせいで、レイアが魔法を使うと、一気に燃え上がるから冷汗が止まらない。


「レイアっ!使いどころっ!気を付けてねっ!」

「分かってるよっ!」

二人が優しい。

「後で、堪能させてあげるから、シュンも頑張れ」

レイアが、自分の胸を持ち上げる。

最近、一気に大きくなったレイアの胸は、破壊力抜群だ。

「私も、負けませんよ」

ライナも、負けじと胸を張る。

この二人は、、、本当に、、、


けど、本当に嬉しそうにしてるから、、まあ、いいか。


僕は、別の意味で止まらなくなった汗を拭きながら、魔法を発動させるのだった。

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