第58話探索依頼

宿屋の中。私は、レイアと二人でベッドに座っていた。

「ねぇ。レイア。シュンくん。最近疲れているよね」

「だな。歩いていても、ため息を吐く回数が増えている」

私たちも疲れている。

何故なら、Fランク相当の討伐依頼が、時々私たちだけに来たりするから。

怒られるから、シュン君には言えないけど。

「緊急時なので、使える人は、誰でも使います!」

受付のお姉さんが、必死な顔で訴えてきたら、私たちも断れない。


「でも、、ね」

「ああ。」

シュン君と、ロア先輩、ヒウマ先輩も、連続で依頼を受けている。


私たちは、お留守番。

今回も、シュン君は私たちを連れて行ってくれなかった。


危ない依頼なのは分かっているけど。

ちょっと寂しい。


「学校に行っても、シュン君いないから寂しいし」

私の言葉に、小さくうなづくレイア。

せっかく作ったお弁当も、今私たちのお腹に入った所だ。

「お肉たっぷり入れたのになぁ」

シュン君が好きな、肉のサンドイッチ。

でも、シュン君に合う事すら出来ていない。


「なぁ。この前、シュンが断っていた依頼、俺達で受けないか?」

「え?」

「ほら。バッファローがどうとか言って、断っていたら依頼あったろ?確か、Fランク依頼だから、大した事ないと思うが」

「あ、危なくないかなぁ」

「シュンに持ち込まれる依頼を一個でも減らしてあげたら、俺達と過ごす時間が作れると思うんだが」

それはそうだ。

私たちには、今、シュンくん成分が不足してる。


「というか、シュン達だけ、特別だと言われてもな」

それは私も思っていた。

シュンくんだけ、いや、ロア先輩も、ヒウマ先輩も。

みなし冒険者のライセンスを持っている3人は、今どうみてもトラブル処理だけ任されている。


この前だって、他の冒険者がシュンくんに頭を下げていたし。

ロア先輩が来なかったら、全滅だった。って話も聞いていた。


本気で、お父様に苦情を言おうと思ったくらいなのに。

お父様の騎士団は何をしているのかって。

私たちのシュンくんを返して欲しい。


シュンくん自体は、笑っているけど。

「自由に戦いにいけるなら、ぜんぜん大丈夫」

なんて言っていたし。

でも、あきらかに、疲れてる。


「そうね。休みをもらうためにも、、、」

シュンくんと遊ぶんだ!



次の日。

私たちはギルドの受付に来ていた。


「いらっしゃいませー」

今日は比較的、空いているみたいだった。

見た事の無い子が受付に立っている。


「先輩たちが、今、出払っていて、私だけなんですよー」

凄く可愛い娘だった。新人の娘かな?


「何か、問題があったとかで。討伐依頼関係は、今出せないんですー」

笑いながら、書類の束を移動させている。

「えーと」

私が口を開こうとすると、レイアがその子の前に出る。

「森の捜索って依頼があったと思うんだが?昨日見たんだが。まだあるか?」

レイア、威圧してどうするの。

ほら、新人っぽいあの受付の娘、震えてるじゃない。

「あ、あの依頼ですか?えーっと、ここにあったような。あれ?無いなぁ。こっちかなぁ」

別の束を触った途端、書類が崩れてバラバラになってしまう。

「ひぇぇぇぇ。ああ、、やっちゃった、、、お姉さまにまた怒られるぅ。あっ!あった!ありましたよ!」


依頼書を引っ張りだして来る新人っぽい子。

差し出してくれたのは、確かに、シュンくんに差し出された依頼書。

ちょっとしか見ていなかったけど、間違いない。


『森の捜索。異常がないか、半日程度捜索して結果を報告する事。深部に入る必要なし。できれば少しだけ奥に入って様子を見てもらえる事を期待する。Fランク推奨』


その依頼書を見て、私はレイアとふたりで小さく同意する。

「うん。これを受けるから」


二人してギルドカードを出す。


冒険者付き添いのカードだけど、下に小さくマークが入っている。

「すごいですねっ!もしかして、超優秀な学生さんて、あなたたちの事ですかっ!?このマーク、冒険者として認めても良い人にしかつかない奴ですよっ!」

私たちは苦笑いしか出ない。


ちょっと前の事を思い出す。

「誰でも使うって言ったでしょ。本当に緊急事態なの。だから、これは、特別処置ね」

あの時の、ギルドの受付のお姉さんは目が座っていた。


「ねえ、あなた、新人さんなの?」

「はいっ!入った瞬間、この状態でして。何も分からないけど、でも、がんばりますっ!」

すごく、笑顔が可愛い。

「うん。頑張ってね。私たちも頑張るから」

私の顔を見て、すごく嬉しそうな顔をする受付の子。


そして、私たちは、依頼書にサインをしたのだった。




ライナ達が出て行った後。

受付の子は、その後ろ姿をじっと見ていた。

「はぁーーーー。すごいなぁ。私よりも、年下かもしれないのに。冒険者やって、私よりも全然しっかりしてて。うん。私も頑張って、あの子たちと普通に話が出来るようにならなくちゃ!」

そう言って、床にバラバラになった書類をまとめ直し始める。


「あれ?なんか、依頼のランクが、すごくバラバラなんだけど、、、なんでだろ?」

散らばった書類は、どれも森関係の物。

なのに、ランクがバラバラになっている。

普通ならありえない事。


Fランクなら、Fランクの森関係でまとまっている。

「なんでだろ?」

受付の子には、その意味が、まだ分かっていなかった。

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