第80話やっぱり不幸?
≪マスター。ご飯が出来ました。食事にしませんか?≫
ミュアが声をかけてくる。
森の奥。
湖の近くに、土魔法で作った家。
そこで、魔物を狩りながら引き籠る事にした。
「今日は、美味しいキノコが見つかりましたので、焼いてみました」
聖霊語しか使えないミュアだけど、今は、普通に会話が出来る。
いろいろ不便だと思って、ミュアに共通言語のスキルを付与してみたんだけど、きちんと定着していてよかったと思う。
と同時に、改めてスキルの凄さを実感していた。
魔物はクラスアップすると同時に、スキルを得るんだから卑怯だと思う。
なんとかしようと、ミュアに呪い解除のスキルを付与して見た事もあったけど。
しかし、またミュアは苦しんで、スキルは剥がれ落ちてしまった。
「ごめん」
ミュアをまた抱きしめながら謝ると。
「何故マスターが謝るのですか?私はマスターの物です。何をされても、何も言いません」
そう返されて、思わずミュアを抱きしめていた。
ミュアの病的に細い体をぎゅっと抱きしめる。
「少し痛いです」
ミュアは、僕が付与したスキル拒否反応の痛みもまったく気にしていない風に、微笑んでいた。
「ご飯にしましょう」
ミュアの笑顔に。
「ああ。そうだな」
僕も笑っていた。
いろいろな香草を入れた肉スープが美味しそうな匂いをさせている。
森に住むしかなかった時には、食べれなかった怪しい香草も入っているけど。
実際に食べてみると、ピリッとした辛みが美味しい。
【森の使い】
森で食べれる物を見つけられる。 森の道が分かる。
森で住む事が出来る。
森で、永遠に生きる事が出来るスキル。
ミュアのスキル。
このスキルのおかげで、森の中ならミュアにとっては食べ物に困らない。
ただ、キノコやら、香草を取る時に、とんでもない量の魔物に出会ったり、地面が突然崩れ落ちるくらいだ。
ただ、ミュアのおかげで一つ新しく分かった事もある。
光りの壁。絶対結界の上に乗れたのだ。
ただ、底が見えないくらいの穴が突然開いて。
落ちそうになって咄嗟に張った絶対結界のおかげで落ちなかっただけなんだけど。
それはそうと。
エルフの主食は、この香草鍋らしいのだが。
取り分けたスープを持って、胡坐をかいて座っていた僕の足の上にポスっと座るミュア。
ミュアの故郷の味と言ってもいいのだと思う。
「食べてよろしいですか?」
上目遣いに見て来るミュアの破壊力が酷い。
近くで見ると、青というより、紫に近いその瞳が本当に綺麗だった。
「ああ。食べようか」
僕は笑いながら、食事にするのだった。
やっぱり拠点は落ち着く。
昔とは違って、一人じゃないからか。
夜はミュアがくっついてくるために二人で寝る。
少し暖かい体温が、僕の心を癒してくれていた。
絶対結界は、その内側から攻撃できるし、外からはどんな攻撃も受け付けないという、反則的な性能だ。
その絶対結界で、囲まれたこの拠点は、はっきりいってどんな要塞よりも安全だと言える。
ミュアの高確率エンカウントをも利用した、魔物ホイホイとなったこの拠点。
周りに浮いている魔力球が全部襲ってくる魔物を排除する。
つまり。
寝ているだけで、レベルアップする、とんでもない拠点と化していた。
この森には、岩塩も大量にあった。
全く何も心配する事も無く。
美味しい料理を食べながら。
穏やかに、ゆっくりと魔物を倒し続けるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます