第79話 少女と共に。
「よしっ。森に籠ろう」
僕は次の日の朝。
気合を入れて、ミュアに告げた。
寝ている間に、天井が落ちてきたり、暗殺者が乱入したきたり、魔法を連続で打ち込まれたりと、それはそれは大変だった。
森に籠るなんて、久しぶりだけど。
これでは絶対に生活不可能だ。
それはそうと。ミュアだけど。
データベースでは、13歳だとなっていたけど。
どうみても、見た目は10歳程度。
背丈も、体つきも。
だから、幼女趣味とか言われてしまうのも、納得かもしれない。
さらには、過去にいろいろとあったみたいで。
詳しく話を聞こうとすると、途中で息が出来なくなったりしていた。
ミュアにしてみれば、昔の事は、相当強いトラウマで、精神的に辛い過去のようで。
まったく詳しく聞く事が出来なかった。
「さあ。行こうか」
僕はミュアに声をかける。
絶対不幸をなんとかしようと、スキルを調べあげた所、スキル固定、スキル能力軽減といったスキルが見つかった。
他にもいろいろなスキルを組み合わせたら、なんとかなりそうな気がする。
ただ、それに必要なEPは、5万以上。
「絶対不幸、、なんとかしないと、何も出来ないからなぁ」
僕は小さく呟く。
彼女を手放すとか、そんな事は一切頭に無かった。
外が安全かと言われれば。
僕に限って、外の方が安全だったりする。
絶対結界を駆使して、40年。
この時間は、無駄じゃないし、伊達じゃない。
ミュアを連れて、王都近くの森の中へと踏み入ったのだった。
「50匹!?」
ミュアのスキルを甘く見ていた。
森に入り、いきなり大進攻。
マップ上でも無数の赤い点がこちらに向かって来る。
槍を取りだして。
僕は構える。
ミュアの周りに絶対結界を発動。
いつも通りだ。
50匹くらい、楽勝。
いつも通り、目の前の敵を切り裂く。
笑みを浮かべながら、犬型の魔物を真っ二つにして。
牛を魔法で切り刻み。
一振りで数匹をまとめて切り裂く。
マップ上の全ての敵が僕に向かって来る。
返り血を浴びる。
にやりと口角が上がるのが分かる。
魔物は倒す。
ゴブリンが、コボルトが。
全てを蹂躙して来た。
魔物は、冒険者を。
商人を食い散らかして来た。
なんどもその現場を見た。
だからこそ。
「魔物は倒す」
僕は魔物の殺戮を繰り返す。
「はぁ、、、はぁ、、、、」
息が上がっていた。
結局、追加で増えた魔物もいて、囲まれないように逃げ回り。
倒せる敵は全て倒し。
2時間かかって全ての魔物を狩り取った。
マップから、赤いマーカーが無くなったのを確認する。
「ふう」
僕が体の力を抜いた時。後ろから小さい手でぎゅっつと抱きしめられた。
≪すごく苦しそう。大丈夫。苦しまないで。苦しむのは、私の宿命。あなたは、マスターは苦しまないで。泣かないで下さい≫
泣いているつもりも無かったけど。それよりも、抱きしめて来たミュアが泣いている。
魔物の返り血で、血だらけになった服も、顔も。
後ろを振り返る事も出来ない。
優しい子だ。
奴隷として、地獄を見てきたはずなのに。
ゆっくりと、僕は抱きしめて来たミュアの手に、自分の手を添える。
ミュアの手が、震えている。
しかし、その手の温もりに、張り付いていた笑みが緩むのが分かった。
≪マスター。楽になりましたか?≫
ミュアが、笑っているのが分かる。
僕は、ミュアの手を上から軽く握りながら優しく微笑んでいた。
森を歩けば、わらわらと魔物が自分の周りで湧き出す。
10歩歩けば、5から6体の魔物に襲われる。
ミュアの絶対不幸のせいか。
エンカウント率が、とんでもない事になっている。
けど、やるしかないよね。
ミュアの優しさを感じながら、敵と戦う時でも、優しい微笑みが生まれている事に僕は気が付いていなかった。
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