第14話先生たち
「さぁ。そろそろ休憩にしようか」
その言葉に、僕は皆から、目をそらす。
「さて、シン君。こっちに来なさい」
うう。逃げられない。
キシュアさんの前に座らされる。
「まず、君は腕がいい。その年で、十分冒険者として食べていけるだけの力がある。
けどね、まず、やってはいけない事をやった事を自覚しないといけないよ」
うう。説教タイムが始まってしまった。
「ウサギとはいえ、肉を闇で売る事は、【密猟】といって、王都の周辺では、処罰対象になってしまう事もある、犯罪だからね。この辺りでは、普通に行っている人もいるみたいだけど、無資格者が町を勝手に出ると罰金というのも、その事が関係しているから」
やましい事だらけだから、目をそらしてしまう。
「王都周辺で行うと、警備隊に捕まったり、騎士が出て来る事もある。死刑になる人もいるくらいだから、絶対にやらない事。いいね」
それだけきつく言われると、頷くしかない。
泣きそうな顔をしている僕に、笑いながら僕の頭を撫でてくれる。
「あとね、一人で魔物を狩る事もやめる事。ウサギだからって舐めていると、死ぬよ。魔物は基本群れで生活している。一人で狩りをしていたら、大量の魔物に囲まれている事も良くあることなんだ。昔ね、ウサギの大群を追い回していたら、オオカミの大群に追いかけまわされた事もあるからね」
「あー。あれか。。死んだとおもったな」
「アリンが、命がけで道を作ってくれたから、逃げ切れたのよね」
「何人も。そう何人もそれで死んでいった。僕の友達もね。だから、君が死ななかったのは運が良かっただけと思ったらいい。けどこれから先、死ななないという保証は無い。というか、いつか死ぬよ」
キシュアさんが酷く悲しい顔をする。
「大進攻とか知ってるかな。魔物が、数十匹、数百匹単位で襲い掛かって来る事を言うんだけど、大軍で、魔物同士が一斉に襲い掛かって来る事がある。それは、一人で狩りをしている人が巻き込まれる事が多いんだ」
カイルが、ぴくりと眉を動かす。
「カイルは、一度遭遇してるからね。あと、その上。大攻勢となったら、もう食い止める事は出来ない。逃げるか、死ぬかだ。200匹を超える魔物と戦って生き残れる可能性は0に等しいからね」
キシュアさんのお勉強は、同じ話が多くて。
うんざりするけど、必死に教えてくれるから、逃げる事も出来なかった。
このお勉強会。
3人がかわるがわる教えてくれる。
カイルが先生の時は、主に体術。あと、武器の扱い方を教えてくれる。
え、?呼び捨て?だって、本当に容赦ないんだよ。カイル。
「何でこれくらいでバテてるんだよっ」
て投げられて寝転んでいる僕に容赦なく、とどめを刺しにくるくらい。
寝てる状態からいっきに起こされてもう一度投げられた事もある。
本当に
鬼畜だ。
「んー。何か違うんだよなぁ」
けど、僕が剣を振っていた時、カイルは僕を見ながら、真剣に悩んでいたりもする。
「短剣?いや、こん棒?多分、こん棒だと思うんだが、それも何か違う気がするんだよなぁ。斧とかか?とにかく、剣じゃないんだよなぁ」
「カイルはね、ああ見えて、武術指南においては、誰にも負けないのよ。特に、武器の適正を見る能力は、世界一だと思うわ」
レイアさんは、笑って悩んでいるカイルを見ていたりする。
「扱えない武器を必死に扱って、死ぬなんてばからしいからね。自分に合った武器を使わないと」
レイアさんは少し寂しい顔をしていた。
そんなレイアさんが先生の時は、魔法を教えてくれる。
「火の魔法が一番扱いやすくて、威力があるんだけど、シンは、、使えないのよねぇ。とりあえず、風魔法を中心に組んでいきましょうか」
そう言われて、魔力切れで、気分が悪くなるまで風魔法を使わされたりする。
優しいけど、練習になるとレイアさんも鬼になる。
「一発で終わると思わないで。必ず魔法は連発。一回目は、牽制や、足止め。二発目で仕留めるつもりで発動するの。魔法使いは近づかれたら終わり。一発の威力をなんていう話は一切無視して。これは、実戦からの教訓」
連続詠唱なんてすごいと思うけど。
「シン君は、無詠唱なんだから、3発構成にしなさい。牽制、足止め、とどめの3発構成。それで、30匹連続で倒せるようになったら、私からは卒業でいいわよ」
無茶苦茶な言い分だった。
て、それ、一人で大進攻を攻略するって事じゃないの!?
「そりゃ、無理だろ。お前でも、20匹が限界じゃなかったか?」
「3発ならね。2発構成ならもう少しいけるわよ」
「お前も、いい加減無茶苦茶だよな。改めて話を聞くと」
カイルが、呆れた声を上げていた。
キシュアさんは、一番最初に言われた座学が多かったけど。
実戦では、魔法の扱い方を教えてくれる。
「魔法はね、発動後に実は空白時間があるんだよ。それに気が付いている人は少ないとおもうんだけどね。でも、これが重要。これを知っている人が、上に上がれるんだ」
キシュアさんの目は優しいけど、すごく深い寂しさを抱えている気がする。
「ヒールの後、次のヒールまで、1秒。詠唱で行うなら、そこから詠唱しないと発動しない。シンは無詠唱だから、もっとその感覚を体で知っていないと誰かが死ぬからね。回復が追い付かない。回復が足りない。それは前線を見捨てるのと一緒だから」
キシュアさんの顔が怖い。
つまりは、3人とも、休憩中に行う練習中は、鬼だった。
はっきり言う。
しんどいよっ!子供いじめだよっ!
いつも、魔力と体力が尽きた状態で孤児院に戻って。
そのまま1時間くらい寝て。
のそのそと起きてきて、町の人へ回復の奇跡をこなしてそのまま寝てしまう事が多かった。
けど、真剣に。一切の妥協なく。
3人とも僕に自分の全てを教えてくれるのだった。
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