第13話初めての仲間

「行ってきまーす」

僕はいつも通りに、着替えを済ませて元気に孤児院を出る。

女将さんに話をして、配達を終えた後は、冒険者ギルドへと足を運ぶ。

冒険者ギルドの中で、カイルたち、【炎の楔】の人達と落ち合うためだった。

あの野党遭遇事件から、変わったことのひとつだったりする。

あと、女将さんが渡してくれる配達のお金がかなり増えた。

銅貨10枚(千)から、銅貨30枚(3千)まで増えているのは、びっくりだったけど。

肉屋のおじさんには悪いけど、納品は出来なくなった。

何故なら。

「僕たちと一緒に行動する以上、肉とか、狩りで得たものは、ギルドに売って、平等に分配するからね」

そう言われたからだ。

ただ、ウサギ5匹とかじゃなくて、イノシシとか、豚の魔物とかも狩りをするようになったため、もらえるお金は、馬鹿みたいに増えている。

 大金になってきたので、持ち続けているのはちょっと不安だと思ったりするけど。

「僕たちと一緒に行動するようになるからね。子供だけど、冒険者の支援者として、登録お願いしたから」

最初の日。優しいお兄さん。キシュアさんにそんな事を言われた。

言ってしまえば、荷物持ちとして登録すると言うことだ。

冒険者支援者とは、荷物持ちとか、怪我をしたときの連絡係専門など、冒険者さんを助けるために冒険者資格が無い人が冒険者さんと一緒に行動するために必要な資格らしい。

「これが無いと、町の出入りとか、魔物を狩ったりした時に、面倒な手続きやら罰金やら払わないといけなくなるからね。ただ、、僕たちと一緒でないと、どっちも出来ないから、一人で狩りをしようとか、町を抜け出そうとか思ってはいけないよ」

キシュアさんに、笑顔で釘を刺されてしまった。

ただ、皆と一緒なら、魔物を狩ってもいいという事。

子供の僕がなんで荷物持ちで、登録できたのかと言われれば。

「ああー。シン君ね。まぁねぇ。毎朝、3人分くらいの荷物配達してるものねぇ。荷車を引くなら、彼は最適ね」

ギルドのお姉さんは、にこやかに笑っていた。

最近、力のステータスをまた上げたから、奮発して配達量を増やしていたのを見られていたみたいだった。

ちょっと恥ずかしい。


「報酬は、きちんと山分け。それは変わりないからね」

キシュアさんは、性格も、顔も優しい人だけど、お金にだけはシビアというか、厳しかった。

「カイル。割り切れないなら、そのお金は、私がもらいます。シン君に使ったお金の補填として」

そんな事を言うくらいには。

「パーティ内のお金の貸し借りは、基本禁止。どうしても行いたい時は、私を通してください」

凄い怖い顔でキシュアさんに言われてしまった。

僕がパーティに入った事で、僕が払ってもらったお金は、キシュアさんが立て替えている事になっているらしい。

このパーティの回復役らしいのだけど、時々、カイルに、「酒代」と手を出されて、お金を渡したり、手を叩いたりしているのを何回か見ている。

キシュアさんがお金を渡さないと、レイアさんに泣きついているみたいだけど。


いつもきっぱりと断られている。


ただ、効率というか。

懐に入るお金は多くなったけど、司祭として回復を行う時間は少なくなってしまった。

今まで、ウサギを毎日狩りしていられたのは、地図のおかげだし。

僕でも分かる。この地図があきらかに何かがおかしいのが。

特定の魔物がいる場所を教えてくれるこの地図と、データベースは他人に教えてはいけない気がして、僕は3人に黙っていた。


『このスキルを使って、冒険者を案内するだけで、一生食べていけますよ』

なんてデータベースさんに言われた事もあるし。


「んー。あっちかな。ウサギの反応」

キシュアさんが、索敵。

「よっしゃ。あっちだな」

剣士のカイルさんが走り出し。

「大地に根ずくその息吹。その足を手を使いて敵を居止めよ。バインド!」

レイアさんの足止め魔法が飛び。

「風よ。大地よ。その力をわが友へ。我が友を守る盾となり、我が友の道を開きたまえ。身体強化!」

キシュアさんの補助魔法が飛び。

カイルさんが帰って来た時には、両手に4匹のウサギが握られていた。

速い。

というか、僕が無詠唱で風魔法を使って倒すより早い。

カイルさんはとにかく強くて速い。

速さも、100を超えているのに、カイルさんと競争すると負けてしまう。

キシュアさんはいつも冷静に周りを見ていて、補助魔法をかけているし、レイアさんの魔法はいつも的確で、感心してしまう。


はっきり言う。

この3人は無茶苦茶強い。冒険者って、こんなに強いんだと憧れてしまうくらい強い。


途中で見つけたイノシシの魔物のあっさりと倒して。

ウサギと、イノシシで一杯になった荷車を見て、僕はいつも感心してしまう。

荷車が、空で帰る事は絶対に無い。

イノシシの魔物や、時には、馬のような魔物まで倒して帰って行く。

僕一人なら、戦おうとも思わなかった魔物達だ。


「さて、休憩にするかな」

キシュアさんが一言。

その言葉に、僕はキシュアさんから、というか、皆から目をそらす。

休憩。

それは、僕にとっての面倒な時間の始まりの合図だったから。


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