少年期
第4話始まりは赤色
赤い。目の前がただ赤い。
なんで、なんでこんな事になったのか。僕が悪かったのか。
何も分からない。
ただ、目の前はひたすら紅い。
昨日は、僕の10歳の誕生日だった。
お父さんが、笑いながら美味しいお肉を持って来てくれた。
「ちょうど狩りが出来たんだ」
そう言っていたけど、お父さんが奮発して買って来てくれたお肉だってことは僕だって分かる。
だって、お父さんは、そんなに狩りが上手くないもの。
けど、お肉の誘惑には勝てなくて。
お腹いっぱい食べた。
夜遅くまでお母さんのお布団にもぐりこんで一杯お話をした。
早く寝なさい。いつまで起きているのかと、お父さんにちょっぴり怒られた。
慌てて布団にもぐって。
お母さんにくっついて、温かいお母さんに包まれて眠った。
お昼近くまで寝ていて、今度はお母さんに怒られたのは、ちょっと悲しかった。
お昼から、隣に住んでいるエリという女の子と一緒に遊んだ。
おいかけっこをして。
エリを捕まえた時、頬っぺたにちゅってされた。
「大人になったら、結婚してあげようか」
エリは、少し顔を赤くして、笑っていた。
僕は、返す言葉も見つからなくて、「バカにするな」
と返すのが精いっぱいだった。
その後も、夕暮れになるまで、エリと一杯遊んだ。
はずだったのに、、、、
夜だと思う。
今は夜のはずなのに。
なんで、目の前はこんなに明るいの?
なんで、こんなに赤いの?
僕の服が真っ赤なのはなんで?
エリが大事にしていたぬいぐるみが、なんで落ちてるの?
ぬいぐるみを掴んでいる手だけ落ちてるのは何で?
お父さんも、寝てないで、起きてきてほしい。
けど、お父さんの半分は何処にいったんだろう。
なぜ?なぜ?なぜ?
何が起きているのか。
何が襲ってきているのか。
分からない僕は、ただ家の前で立ち尽くす。
オークの群れが来た!
そんな声が聞こえた気がする。
お父さんが、斧を持って出て行ったのも覚えている。
出ていったらダメとお父さんに言われたのに。
心配で、お父さんが心配で家から出ちゃったから、こんな事になったの?
何かが聞こえる。
人の叫び声?
目の前に、二本足で立っている、豚のような魔物がいる。
豚? ブタって何?
斧が、赤く染まった斧が振りあがる。
紅い。 目の前全てが赤い。
誰かの悲鳴のような声と。
叫び声が聞こえた。
突然突き飛ばされる。
僕の目の前で、、いっしょに寝た、、、温かったお母さんが、、、
体が、、、真っ二つにちぎれた。
「い、、、、き、、、、、て、、、、」
お母さんの口が。
それだけを。。。。。
「うわぁぁぁっぁぁぁぁぁぁ!」
僕は叫んでいた。
力いっぱい叫んでいた。
僕の中で止まっていた時が、感情が。
一気に動き出す。
『強制介入開始。力を前倒しで流入します』
何かが聞こえる。
豚の斧が。
赤く滴る斧が、振り下ろされる。
キイィン
綺麗な鈴のような音とともに、光の壁が赤く染まっている斧を受け止める。
それすら気が付かず。
僕は、叫びながら、泣いていた。
喉が潰れるほどの大声を出した時。
僕の上に光りの柱が落ちて来た。
地面に落ちた光は、周りに広がり。
さまざまな色に変わりながら、真っ赤だった景色を。
赤色を吹き飛ばす。
虹色へと、世界を塗り替えていく。
最後に、白へと変わった光の中で。
僕は泣いた。
光りが、うっすらと細くなり。
消えて行く。
その場に、へたり込んで、泣いていた僕に、滴が落ちて来る。
小さな滴は、どんどん増えて行き。
どしゃ振りとなって、周りを叩きつける。
僕の家も。お父さんの赤も。おかあさんの赤も。
村を包んでいた赤も。全てを洗い流して行く。
でも、僕の涙は止まらない。
『力の流入終了。個体名シュンリンデンバークに対し、EPシステム定着。レベルシステム破棄。問題なく終了。サポートシステム、【データベース】定着。個人仕様用音声補助メニュー、定着。補助スキル 補助システム、定着。世界と世界の
知らない。
何も知らない、、、、
僕はただただ、、、泣き続けた。
何もなくなった、窪地になった地面の底で。
力尽きるまで、、、、、
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