第95話 騎士?
「鎧を集めるために、必死に話をしてな!最後にやっとゆずってくれると言ってくれたんだ!」
リンダが、街での武勇伝のように武具を集めるのにどれだけ大変だったかを言い続けている。
「で、いくらで買ったんだ?」
「それは、なんと、最後に金貨2枚で譲ってくれだぞ!」
超得意げだけど、、、
それ、絶対に騙されているよね。
「マスター?あの程度の武具なら、大銀貨で買えるのでは、、?」
ミュアがこそっと訪ねて来る。
うん。正解だね。
僕は、ミュアの頭をそっと撫でる。
あの程度の武具、半分は廃棄してもいいくらいの質。
多分、大銀貨3枚(30万)もあれば、全然大丈夫だと思う。
「お!いい場所があるじゃないか!少し日も傾いて来た!そろそろ野営にしないか!」
騙されている事に気が付いていない様子のリンダが少しだけ開けている丘を指さしていた。
「私も、少しお腹が空きました」
ミュアが小さく呟く。
うん。休憩にしようか。
「うん。やはり屋台の肉刺しはうまいなっ!」
嬉しそうに食べるのはいいけど、それもう10本目なんだが、、
「足りますか?」
ミュアが心配そうにこちらを見て来る。
あまりにもリンダが食べるから、食料が間に合うか気になっているみたいだけど。
「大丈夫。最悪、まだ一山ほど食べれる魔物が入っているから、それを出せば、肉には困らないよ」
僕が笑うと、ミュアが安心した顔をする。
「よかったです。もし足りなくなるようなら、私はご飯はいりませんので、マスターが食べてくださいね」
ミュアが肉刺しを食べながら笑う。
あまりにも可愛くて、思わず抱きしめてしまいたくなっていた。
「それはそうと、リンダ、自分の食事は買ってないの?」
僕の肉刺しばかり食べているリンダ。
「はっはっはっ!物資を買うのに必死で、全部使い切ってしまってな。食料を買うお金が無くなった!」
おい。
どうやって帰る気だったんだよ!
僕みたいな空間収納魔法が使える人は少ないし、さらに僕ほど収納量がある奴もまずいないぞ。
ヒウマの、家一軒分の収納量だけでも驚かれるほどなのに。
「だから、依頼の中に飯の世話も出来る人と入れていたのだがなっ!まあ、そう言わずに、もう一本くれないか?」
僕は、思わず頭を抱えるしかなかった。
「出来ました」
「ああ。上出来だ」
ミュアが土魔法で作った簡易的な家を見てミュアを撫でてあげる。
「上達したね」
「はい。マスターのおかげです」
少しだけ頬をあからめてこちらを見上げるミュア。
「それはそうと、やはり、、その、、、二人は相方なのか?」
「ああ。相方だが?」
「いや、その、、そうじゃなくてな、、、」
「私は、マスターの物ですから」
「なっ!やっぱりそうなのかっ!」
まだミュアの頭の上にある僕の手を見ながら、リンダの顔が赤くなる。
「な、、ならば、その、今夜その家で、私も寝てもいいだろうか?いろいろと、、、その、、な、、」
もごもごと口の中で何かを言うリンダ。
僕たちが何を言っているのか分からずに二人で目を合わせる。
「見学を、、だ、、な、、、」
その声が聞こえた途端に、ミュアの顔が真っ赤に染まる。
湯気が出ているようにすら見えるのは気のせいじゃないと思う。
「てかっ!そこは、気を利かせて少し離れるとか、別の場所で寝るとかだろっ!なんで覗くの確定で、話しを進めようとしているのっ!」
「いや、やはり、気になるというか、、、どうすればいいのか知りたいと言うか、、、」
もごもごと言うリンダに。
僕は再び頭を抱えていた。
「マスター?してくれるのですか?私はいつでも大丈夫です」
ミュアが、そっと僕の服を掴む。
いや、、見られながらするものじゃないし。
というか、しないから。
もぞもぞと照れた顔をするのは止めて。ミュア。
「はぁ」
日も落ちて暗くなった中で僕は小さくため息を吐いていた。
簡易的な家の中で、すさまじいいびきをかきながら床で寝ているリンダ。
「マスターぁ」
可愛い顔でそっと寄り添って来るミュアを軽く抱きしめる。
ミュアが作った簡易的な家に絶対結界を張り巡らしたら、あら不思議。
世界一安全な野営地の完成だったりする。
そんな野営とは言えない野営地でミュアの頬をそっと撫でてやる。
むにゃと声を出すミュアが本当に可愛い。
いろいろなイライラも、ミュアの寝顔を見ていれば吹き飛ぶなぁ。
そんな事を思いながら、ゆっくりと瞼を閉じるのだった。
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