第94話 筋肉

「私が、依頼主のリンダだ。ん?えらくひょろひょろが来たな。子供がさらに子供連れとか。やる気があるのか?これは、ギルドに苦情を入れるべきなのだろうな」

待ち合わせ場所にいたのは、ボディビルダーも真っ青になるほどの筋肉だるまの女性だった。

腰には、ロングソードを刺している。

腕はミュアの足の2本分はありそうだ。


「シュンだ。よろしく頼む」

「ああ。こちらこそ」

握手を求めると、素直に手を握ってくれる。

その顔が一瞬悪い笑みを浮かべるのを感じた。


突然、ぐっと引っ張られる。

当然、びくともしない。

僕の力のステータスは1500越えだ。

ステータスカンストのさらに上の上。

リンダさんがどれだけ力があるのか知らないけど、負ける気はしない。

踏ん張った時に、石畳の一枚が派手に割れたけど、まあ、仕方ないと思う。

次に力いっぱい手を握って来る。

別に痛くも無い。

防御というか、体力も2000はある。

レベル99の戦士に握られても全然平気でいられる自信はある。

「な、、なかなかやるようだな、、よろしく頼む」

リンダさんの声が少しだけうわずっていた。

からかおうとして、失敗したからだろうけど。

相手の強さくらい、すぐに見抜いて欲しい物だ。


リンダさんは、レベル30くらい。

体力と、力が400近くある完全な戦士タイプだった。


けど、両断と、スラッシュのスキルを持っているのに、

片手剣持ちとか。

両断って、両手剣のスキルのような気がするのに。


ついでに、僕のステータスは、現在こんな感じだったりする。

名前] シュンリンデンバーグ

[職業] Dランク冒険者(特殊任務請負)

[ステータス]

[Lv] 無し


[Hp] 4000

[Mp] 5800

[力] 1600

[体] 2000

[魔] 4000

[速] 1300


[スキル]

 データベース EPシステム (火炎魔法・炎スキル使用不可)水・氷魔法 風・空間魔法 土・大地魔法 光・視覚魔法 

回復魔法 絶対結界 武器作成 防具作成 魔法付与 

所有物スキル付与 異空間収納魔法

魔力ビット 

ビットシステム

《空間把握、気配察知、周辺把握、高速並列思考、高速演算、連続詠唱、無詠唱、並列詠唱、同時発動、同時詠唱、並列存在、自立演算、自立付与》


あらためて自分がレベル99を遥かに超えている事に笑いすら出て来る。

MPは6000近くあるけど、魔力ビットがMPをドカ食いするから、本気で全力で展開した場合、稼働時間は10分も無かったりする。

まだまだ魔力は足りない。


ミュアにとっては、僕の魔力は無限だと思っているみたいだけど。


ビットが一日中、オートで魔物を狩り続けてくれるから出来るステータスだと思っている。


「で、持って行く荷物は?」

僕は、リンダを少しだけ睨む。

初対面の人を突然試すような人に、敬意を払う気は無い。


「ああ。これだ!」

そんな視線にも気が付かないのか。

ドヤッ!とルビが出そうなくらいの得意顔で荷車を指さす。


僕は、思わず頭を抱えていた。

「必死に駆けずりまわってな!やっと集めた物資だ!」

力いっぱい胸を張って自慢する。


荷車の中にあったのは、布。鉄剣。矢じり。弓。鎧。

荷車2台分はありそうな荷物を、1台にまとめているが、すぐにでも崩れ落ちそうだ。

物資と言ったよね?これ、持っていくべき荷物?

水も、食料も無い。ただただ、武器防具だけ。

しかも、質もあまり良くない。

思わずリンダを問い詰めたくなる。

自分達の拠点には水が使い放題だけど、何かあった時用に、自分の空間収納の中には、水が樽でかなり入っている。

これを最悪出す事になるかも。


「で、この荷車を引いて戦えと?」

「気合があれば、やれない事はないだろう!」

ああ。

筋肉だ。

もともと小さかったやる気が一気に失せるのを感じる。


「行こうか」

僕は、その荷物を全部空間収納の中に突っ込む。

いきなり荷物が消えて、茫然としているリンダを置いて、歩きだす。

「マスター?怒ってます?マスターの顔が怖いです」

ミュアが、おずおずと声をかけてくる。

そりゃ、怒ってるよっ!

絶対いろいろ大変な人だと思うからっ!

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