第28話恋人候補。

「んっ」

魔法の練習の時間。

僕は、土で作った棒を振っていた。


昨日。レイアと組み手をしてみたら見事に負けてしまった。

「ずっと練習してきた俺より、強いんじゃないか?」

そんなお世辞を言われても。

こちらは、40年実戦をし続けていたのに。


体の動きが鈍すぎる。

咄嗟の動きが、出来なくで自分自身にイライラする。

だから、基本から練習し直す事にしたんだ。


突きから、払い。払いから薙ぎ。

持ち換え、突きに戻る。

槍と棒はちょっと違うけど、基本の動作は近いから。

ずっと棒を振っている僕に対して、他の生徒も先生も、おかしな人を見る目になっていた。

そりゃそうだよね。魔法の授業で、武術をやってるんだから。

けど。


「これが出来ないと、死ぬ」

超接近戦で、魔法なんて使えるわけもない。

相手の方が、5倍も速い。

払い、薙ぎ。魔法で牽制し。止めを撃ち。武器で確実に仕留める。

絶対結界をも盛り込み。

昔を思い出すように武器を振るう。

あの森の中で生き残るために。



そんな僕を、ぼうっと見ている二人がいたりする。

「ねぇ。今魔法使ってるよね」

「ああ。突きと同時に魔法を発動とか、初めてみた」

「レイア、、出来る?」

「出来る訳ないだろ!あんなの!つか、、、綺麗だ」

「うん。綺麗」

シュンリンデンバーグが動くたびに、魔力が動く。

時々光がきらめくようにその周りに生まれる。

緑の風が、流れて行く。


「まるで、ほんと、、人じゃないみたい」

二人は、ずっとシュンの動きを見続けていたのだった。


「お願いがあるんだけど」

二人と仲良くなり始めて、1か月くらい経った時。

僕は二人に頭を下げていた。


「ええ・・・・」

「それは、、ちょっと、、、」

「だから、お願いっ!」

「えーと、、お父様に、連絡しないと、、」

「私は、別に、、いいんだけど、、心の準備というか、、、」

「本当に、お願いっ!」

もう一度頭を下げる。

『超絶、最低のお誘いですが』

うるさい。データベース。

二人が顔を合わせる。


「どうする?」

「私は、別に、、一緒になっても、、、」


「5メートル以内には近づかないからっ!」


ライナはしばらく僕を見ていると。

大きく息を吐く。

そして、何かを決意したかのように顔を上げる。

「分かりましたっ!シュン様の物になりましゅ」

「ライナが決めたら、俺も付き合うよ」

ん?何かおかしい気が。


「だから、いつか、お父様と会ってくださいね」

「俺は、会って欲しい人はもういないけど、そうだな。ライナのお父様には、お世話になっているからな」

二人は、何か吹っ切れた顔をしていた。




「凄いです!」

「本当に魔物狩りに行きたいだけだったとはな」


僕は、地図検索で見つけたイノシシを魔法で仕留めていた。

風魔法でこちらへと誘導。足を斬りつけ速度を落とし、土魔法の岩弾連発で、仕留める。

時々は、カイルに買ってもらった槍を振るって仕留める。


奥まで突き刺して。

奥で爆発させる。

「深く突き刺すな!抜けなくなったら負けるぞ!」

そんなカイルの声が聞こえてきそうだ。


この世界では、女の子と外に出ると言う事は、まぁ、そういう事を意味している。

町の外は、魔物だらけで。

無理やり外へ連れ出したりしたら、それは路地裏に女の子を引っ張り込むよりひどい事と言われるくらいだ。


罰則は無いんだけどね。

外で、酷い事をして、殺しても魔物にやられたで済んでしまう。

それくらいには、この世界は、酷いものだ。

「やっぱり美味しい!!」

宿に持ち込んだイノシシの肉を目いっぱいほおばりながら、二人が幸せそうにしている。


「鮮度が違うからねぇ。仕入れて来る肉より、圧倒的に美味しいよ」

女将さんもニコニコだ。

僕たち3人で食べきれる量以上の獲物を狩っているからね。

今日は3匹引きずって帰って来たけど、明日は台車を借りて6匹とか行こうかな。 ついでに、イノシシは、1匹 銀貨2枚(2万)で売れたりする。 牙とかあったらさらに高い。

現代でいう、牛より大きいからね。イノシシ。

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