第31話贈り物
「いいものを見せてあげる」
データベースの中に、水魔法の上級で、氷魔法ってあったんだだよね。
魔力を集中する。
僕の周りに浮かんでいた水が全て氷に変わる。
「え?」
二人の顔が呆気にとられている。
「行くよ」
「ちょっと、ちょっと待って!」
「お願いします!それは、ダメです!」
僕は手を彼女らに向けて。
「
一気に解き放つ。
「ダメっ!」
「悪かったからぁ!謝るからぁ!」
二人が目を瞑り、座り込んで。
ゆっくりと目を開けた二人が見たのは、自分の周りに突き刺さる無数の氷。
「さむっ!」
レイアが、思わず震えている。
怪我をさせるわけには行かないから。
わざと外してみた。
この魔法、広範囲で撃ったら殲滅魔法に出来るんじゃないかと思ったのに、ターゲットに出来るのは3体までだった。
それ以上にするとこんな感じで、目標に当たらなくなる。
とことんこの世界の魔法は広範囲、大量殺戮が出来ない仕様になっていると実感してしまう。
敵の設定で、この練習場にいた全員を目標にしたら、誰にも当たらない。
こんなふうに。
外でも実証済みだしね。
「やっぱり、、シュンくんは凄いですっ!」
「だよなぁ。強さが桁違いだ」
「きっと、対戦に出てもいいというか、優勝しそうです」
「おう。勝つ方に全部賭けれるな」
二人が、キラキラした目でこちらを見ている。
ん?対戦?
「魔法対戦が近いですからっ!絶対シュンくんは選ばれると思います!」
え?僕だけ知らない?
焦った僕は、データベースを起動させる。
『年一回。選ばれた生徒で、対戦を行う大会です。剣術部門と、魔術部門があり、その上に、総合部門があります。総合部門に出て来るのは、冒険者として戦える人達です』
へぇ。
データベースのwiki読み上げは便利だと思う。
優勝賞品は、、、武器、ローブ。
店で売られている最上級品。ねぇ。
防具作成スキルも手に入れられるくらいにはEPを集めてるから、ローブはもう少ししたら自分で作れる。
武器は、、メイスがあるしね。
正直、お店で買うよりも、自分で作った物の方が強い。
魔の森で戦うために作って来た武器の数々。そして、最後に使っていた最上級防具の作り方は分かるから。
後は素材の強度だけだよね。
「シュン君は、選ばれると思いますよ」
突然顔を覗き込まれて、ドキドキしてしまった。
「今、聞いてなかっただろ」
レイアが意地悪な顔をしている。
「私たちにも、推薦が来ているんだけど」
「武器がなぁ、、、」
二人の顔が暗い。
学生が、武器を買うなんて、無茶も良いところなのに、この大会、武器は自分持ちで、持ち込みなのだ。
「まあ、二人に何か武器をそのうち作ってあげるから」
「え?」
「本当に?」
「けど、そのとげとげは止めてくれよ」
僕のメイスをそっと見て笑うレイア。
「こんなのは作らない、、と思う」
「ひどいですっ!」
「ライナが持ったら、似合うかもなぁ」
「似合いませんっ!」
言い合う二人を見ながら、ちょっといい物を作ってあげたいと思ってしまうのだった。
「こないでぇ!」
ライナの叫びと一緒に氷魔法が発動して、地面の一部と走って来ていた犬の魔物の足を同時に凍らせる。
設置型の氷の足止め魔法。
森の中で、木にかけられてて手を着いた場所から凍ってしまって、死にかけたんだよな。
足の止まった一匹に対してレイアがナイフを振るう。
ナイフから、炎が飛んで行き、炎に包まれる。
「便利だけど、螺旋炎矢の方が威力が高いんだよな」
レイアが小さく呟いているけど。
牽制に、とどめに、距離を取るのに、すごく便利なんだぞ。
そのナイフ。
僕が最後に使ってたのは、火炎弾が出るくらいの威力だったけど、まぁ、そこは、、素材不足という事で。
棒立ちになっているレイアに向かって、犬の魔物が突っ込んでくるが、光の壁にぶつかり、情けない声を上げる。
容赦なく、メイスで撃ち上げてやり、空中で風魔法で、切り刻む。
【
「ギャウッ!」
犬のすぐ横を氷の魔法が通り過ぎて行く。
「もう!なんで当たらないのっ!」
ライナが頬を膨らませて、怒っている。
ちょっと可愛い。
そんなライナは、自分の身長くらいある大き目の杖を抱きしめるように抱えていた。
その横から、螺旋炎矢が飛んで行き、犬の鼻づらにあたり、燃え上がる。
「よしっ!ヒット!」
嬉しそうなレイア。
その横から、オオカミが飛び掛かる。
その横腹を、僕はメイスで殴り飛ばした。
「キャウッ!」
可愛い声を上げるが、容赦はしない。
そのオオカミが、一気に凍り付く。
見ると、ライナが、杖を振り下ろして肩で息をしていた。
「はぁ、はぁ。あたりました」
嬉しそうなライナ。
群れのリーダーでもあったオオカミを倒したからか。
残りの犬たちは、じりじりとさがり、逃げ出して行く。
「終わったぁ」
「らくしょう、、ですね」
二人とも、地面に座り込む。
「ちょっとびっくりしたなぁ」
「ちょっとじゃないです!あんな群れ、普通なら逃げ出します!」
「餌になるかと思った」
僕の笑いに、二人とも突っ込んで来る。
いや、ウサギ狩りをしてたら、あの群れがね。
ウサギを根絶やしにする勢いで狩りをしてたからつい。。
「先に手を出したのは、シュン君ですよね?」
ジト目のライナに、何も言い返せない。
「でも、二人とも、本当に強くなったよね」
オオカミなんて、Dランク対応の魔物だ。
Eランクの僕たちが勝てる相手じゃない。
「まだまです。シュン君に比べたら、弱すぎます」
「まあ、戦えてるのは、これのおかげっていうのが大きいよな」
レイアが自分の持っているナイフを見つめる。
魔法付与の進化系で、魔法永続付与というのがある。
それをオオカミの骨から削り出したナイフに何十にもかけてある。
まあ、ナイフと言うには刃渡りが長い、昔でいう、懐刀といわれるくらいの長さはある。
さらには、魔法石と言われる石を組み込んでいるので、杖としても使えるようになっている。
魔力を込めて振れば炎の矢が出る仕様だし。
さっきも言ったとおり、昔、最終的に使っていた武器の一つだ。
素材が悪いから、昔ほどの性能は出ないけどね。
データベースで調べてみたら、フレイムナイフロッドと出ていた。
売った時のお値段は、、、金貨5枚(500万)
ちょっとした財産だよね。これ。
ついでに、ライナが握り締めているのは、水牛のような魔物から削り出した杖だ。
この水牛、モツが旨いんだよね。
いやいや、違った。
この杖は、ちょっと、間違えたというか、クリティカルが出たというか。
水属性の補助が出来るようにしていたら、氷の魔法が打てるようになってしまった。
魔力を込めるだけで、氷魔法が無限に打ち出せる伝説の武器になってしまったのだ。
ライナの魔力が少ないから、まだ数発だけだけど、僕が持つと、ガトリングガンよろしく、永遠に氷魔法を撃ち続けられる。
もちろん、氷、水魔法の補助として、威力を高める効果付き。
お値段、、、白金貨1枚(1千万)
僕は、二人の武器の値段の事はそっと見ていない事にしたのだった。
レイアは、さらに、殴りかかる事が多いから、グローブも作ってある。
ヒートグローブ。
火魔法発動時間短縮10% と言うものだ。
これは、火炎蛇と言うとんでも魔物が出て来たから、討伐した時にとった皮から作った物だ。
少し燃えている蛇で、まあこの辺りのヤバイ魔物の一体だった。
久々に、絶対結界をフルに使って、全力で相手をしたよ。
壁で相手を囲んで、壁の向こうから、メイスで殴り続けるという、傍目から見たら、イジメているような戦い方で。
敵から僕へは攻撃が通らないけど、僕から敵へは殴れるといった反則仕様だから。絶対結界は。
おかげで、光の壁は、3枚まで同時に出せる事が分かったし収穫は大きかった。
昔は2枚までだったので、昔よりも性能は上がってると思っている。
空中に出せないのが、一番の弱点だけど。
まあ、そんなグローブのおかげか。
時々、火魔法を纏わせて殴りかかるという、とんでもない攻撃をレイアがするようになっている。
最近、レイアが脳筋化している気がする。
ついでに、僕のメイスはまったく何も付与は着けていない。
下手に強化すると、自分のどこが足りないのか、何処が悪いのか分からなくなるからだ。
僕の目標は、10億の敵。
数の暴力は、魔の森でさんざん味わった。
10億の敵というのは、アリですら像も、人間も倒せてしまう。
それほどの脅威なんだ。
けど、僕のメイスの名前が、ブラッドメイス(血塗られたこん棒)に変わっているのはなんでなんだろう?
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